第二世代の野外活動部

 

顧問 熊野谿

 

この春、野外活動部の創設世代が卒業した。「釣り仙人」の前部長など、ツワモノばかりの創立部員たちが去った後、中一が7名も入部してきた。中2の部員も増えて、現在、部員15名ほど、ほとんどが中学生なので、去年までとはずいぶん雰囲気もやる事も違う。それでも土曜の午後に江ノ島や腰越での釣り、丹沢での沢歩き入門、そして春合宿と夏合宿など、いろいろな事を手がけてきた。特に合宿ではテントでの生活をベースにいろいろな事をやってみる。雪の上で「冷てー」と言いながら寝たり、豪雨の中でのたき火に興じたり、飯をつくったり…という「素朴」と言えば素朴、「粗野」といえば粗野な事である。とりあえずは何をやってもいいのだが、ただ、全身で自然の中で動くことを大切にしたいと思う。「アウトドア」と称して、山奥まで排気ガスをまき散らして入り、御綺麗な都市型生活を持ち込んだのでは、多分、自然の声は聞こえてこないだろうからである。

しかし、この夏の合宿は結構大変であった。なにせ中1ばかりである。キャンプ場なんてのは使いたくないのだが、いつでも逃げて帰れる所でないと、何日持つかは行ってみないとわからない。本当は一泊程度で予備訓練的なキャンプをやってから合宿をするのが安全上もよいに決まっている。だが、学校の「合宿規定」という奴を実に形式的・官僚的に見ると、「泊まりの行動は年に二回まで」となるのでできない、と言う輩がいるらしい。まったくもって山の天気よりも下界の妖怪渦巻く世界はわけがわからないものである。

ともあれ、どうするかを考え、「勝手知ったる」谷川岳の周辺、二俣に合宿地を選んだ。ところが行ってみたら、今年はヒルの当たり年だったのか、二俣への道を歩いただけで全身にヒルが「好きよ好きよ」と頼みもしないのについてくる始末。さらに途中でへたる奴がいて、牛首の少し先で一日目はテントをはるはめになる。またさらに、翌朝ラジオを聞いたら、「弱い熱帯性低気圧が発生。ゆっくり移動しつつ日本海側に抜ける」というとんでもない情報である。

この日が「8月13日」だ、と言えばおわかりになるだろうか。例の玄倉川での無謀水難事故が起きた時なのである。ちなみに「弱い熱帯性低気圧」と聞いて「ヤバイ!!」と思わなかったら野外活動をする資格はない。それは雨型の台風というのと同じなのだ。しかも「ゆっくり」というのは最悪である。長い時間にわたって雨が続く可能性が高い。ちなみに谷川の源流はマナイタグラという岸壁で、雪崩に磨かれた一枚岩(スラブ)がそれはきれいなのだ。で、そこに大雨がふるとどうなるか。ドバッと一気に沢に入り、増水する事になる。ちなみに沢で増水した時に水位がどこまであがるか、という事は廻りを見るとちゃんとわかる。ずーっと上の変な場所にその時のゴミや跡がついているのだ。当然、すぐに決断して移動とあいなった。行き先はちゃんと計画で考えてあったマチガ沢出合のキャンプ地である。ここは安全かつ快適であったが、それでも水場の水が翌日には濁って飲めなくなったので、最後は土合駅に移動するはめになった。「駅で泊まるんじゃ、快適すぎてつまらんなぁ」と思ったが、どうして彼らにはなかなか新鮮な体験だったらしい。そんなこんなで釣りもろくにしない合宿だった。着替えをたくさん持っていても、自分で着替えることができない奴がいたり、ザックをバックと呼ぶ奴がいたり…と、目が点になる事も多かったが、ともあれ無事に帰ってきた。(_;)

自然なんていい時ばかりじゃないぞ、と言いながらも、「でもやっぱり、ヒルと雨はイヤだねぇ」と誰しも思った合宿であった。さて、この第二世代、今後はどうなっていくだろうか。これからが楽しみである。