高生研 湘南サークル7月例会 レポート 熊野谿 寛

テーマ 「何を課題として生徒会を指導するか」

1.「生徒会」とのつきあいを振り返って

 8年ほど前、高生研の県例会(?)で「生徒会の再生をめざして」という題で、「バンド禁止
問題」に端を発した生徒総会での学園祭原案否決・学園祭中止にいたる経過と指導について報告
して検討していただいた。その中で多くの批判と課題をつきつけられた。それは要約すると、
1)指導する教員が生徒に対してどの様な立場に立つのか、引き回しになっており、生徒と共に
考えながら指導するという暖かみに欠けている。2)全校集団づくりの基本は教職員集団の問題
であり、一人一人の教員が自立した教育実践者として教員会議を構成し、そこで討議・決定をへ
て実践するという教職員集団の民主化が決定的に立ち後れている ということであったと思う。

 その後、中学・高校と6年間の担任を持ち上がり、その間に生徒会の担当になることはあった
が、中心というわけではなく、学園祭の担当などを行ってきた。その間、もっぱら生徒とのかか
わりは担任とワンゲル顧問としてのものが中心、後は職場の「組合」(法外組合にすぎない
が・・・)で書記長をやり、教育条件整備、特に専任教員増員、私学助成運動の職場での定着、
諸権利の確立に努めてきた。しかし、職場の抜本的な民主化を働く者の立場からすすめることは
できないままに来た。ぬるま湯につかった様な職場の中で、バランスだけで物事がなんとかなる
という物の見方を打破する様な闘いが組織できなかったということであるのかも知れない。

 しかし、93年の初めに学内理事から学校の「機構改革」が提示されて事態は少なくとも新し
い局面を迎えた。「ぬるま湯」から「社会的な責任の果たせる学校」への転換として、学園長の
公選と公選された学園長による「組閣」型の任命人事制度の導入が提起された。専任教員会議で
これが可決され、実施。どうしたことだか、私に企画委員・生徒会指導主任という「任命」がな
された。組合として数年前にようやく「主任手当の廃止」要求を決議したが、組織的な拠出は取
り組めていない。ともかく、現在は「主任手当」は生徒会指導委員会でプールしながら、生徒の
活動費や研究用資料として使うことにして、「企画委員」というものを一年半やってきた。
 昨年は「機構改革元年」として、ともかくあらゆることの見直しに必死で、生徒会の方でも生
徒会総務委員と共に格闘してきた。あれこれあって組合の役員は降りているが、まだまだ「組合
活動家」の自負はある。今年は仕事の面では少しゆとりも出てきたが、職場の新しい矛盾に直面
して、にっちもさっちもなかなか動かない・・・というのが現在である。


2.生徒会組織の特徴

 中学・高校6年間の学校で生徒会も一つ、総務委員会も一つである。高2までの20人が総務
委員を構成している。生徒会では4月の新入生歓迎会(中1対象)、5月の縦割りでの野外生活
活動と生徒総会、9月の体育祭と10月の学園祭、1月の合唱コンクールを中心に活動が行われてきた。
かつては実行委員会を組織した時期もあったが、一昨年の段階では生徒会総務委員が総ての行事
を運営する、クラス委員会や生徒総会では伝達だけ、クラス討議なんて行ったことはない・・と
いう状況であった。こうした中で、昨年、生徒会の担当になったのである。

3.「生徒会の課題」として提起してきたこと

1)行事運営の改革

 総務委員会の役割を企画する役割と位置づけて、全校の各クラスから選出された実行委員会が
各行事の運営にあたることを基本とした。昨年の「体育祭委員会」から始まって、「合唱コンクール
実行委員会」「新入生歓迎委員会」、今年は「学園祭実行委員会」も組織的に総務委員会から独
立した。学園祭については、今までは「全校でやりたいものをかき集める実行委員会」であった
が、各クラスから選出して運営する組織としての性格を追求してきた。
 実行委員会には担当教員がつき、指導にあたるが、今までのやり方にとらわれない企画や運営
が行われる様になってきた。実行委員会の組織では高校2年生が委員長及び指導学年となり、高
校1年生がそれに続き、中学生に対するめんどうは中3がする、という事を基本として指導して
きた。やり方としてはほぼ定着してきた様である。
 さらに、今年は、学園祭の「屋台」「娯楽」について、希望クラスの抽選で行うという方法を
導入した。教員の中では「そんなのは自分のクラスでやりたくない」という向きもあり反発も
あったが、ともあれ承認をえることができた。

2)全校討議の提起

 生徒総会の議案を事前にクラス委員会を通じて各クラスにおろし、クラス委員会での議論をへ
て総会にはかることにさせた。昨年は、体育祭での「応援団の人数規制」をめぐって紛糾し、総
会前のクラス委員会ではいったん了承されたものの、総会で紛糾のあげく、原案が否決された。
しかし、8年前を想起しながら総務をはげますと共に、これを積極的な全校討議の機会としてと
らえ、その後、約1カ月の全校討議をクラス委員会を中心に組織した。その結果、原案の内容を
小幅に修正する中で、臨時生徒総会を土曜日の昼過ぎに行い原案を決定することができた。当時
の総務委員長は「あの一カ月が本当の生徒会活動だった」と回想しているが、夜中にラーメンを
食べながら翌日の作戦を彼らとはさんざんに練った。また、この時から討議のためにクラス委員
会を中学・高校にわけて行い、クラス委員会は議論する場であるという認識を持たせる上で土台
をつくった。
 その後は、合唱コンクールに向けた原案討議で積極的に各クラスからの意見と修正案を出させる指
導を行い、クラス委員会で修正・決定する方法をとった。今年度も同様の路線をめざしたが、な
かなか思わしくない。

3)生徒会組織の見直し

 総務委員が10月改選ですぐに任期についていたのを、11月改選、新年度の活動から任期に
はいる・・・という形式に改めた。これで、総務委員に対する研修を組織したかったのだが、な
かなか進んでいない。また、年間方針についても検討させて、2月に生徒総会を開催させる様に
指導したのだが、なかなか具体的にならず、実現できなかった。どの様に執行部や生徒会役員の
研修を考えたらよいのか、検討課題となっている。他の学校ではどんな執行部合宿や研修を組織
しているのだろうか。

4)自動販売機問題での学校との「協議会」の開催

 昨年の夏、「買い食い」「寄り道」問題で総務委員長が会議で名指しで問題とされた。これに
対して逆に「自動販売機で放課後に食べる物を」という要求が出された。企画委員会で学校とし
ても受け入れる用意があることを確認した上で、総務が業者を捜した。その後、役員の交代をへ
て、学校側(生活指導委員会)との「協議会」を生徒会規約に基づいて初めて行い、中にいれる
商品の希望をとって今年の6月にようやく設置された。
 総務委員会が「行事屋だけではない」ということを示すものとして位置づけたが、全校討議と
いう局面はつくれなかった。また、初めて行った「協議会」ではあったが、現在の総務委員の力
量では教員側に言いたいように言われるという局面が強くあった様である。そんな点では大きな
前進とは言えないかも知れない。しかし、これが「バンド問題」について再び生徒会の話題にな
り始める序曲にはなった様だ。

5)総務としての新しい活動・・・

 行事屋からの脱却ということをまず進めたのだが、同時に総務として学校生活に関係してどん
なことを取り上げたいのか、ということで議論させてきた。いわく「美化」だとか「施設の拡
充」だとか、バンド問題だとか、様々な問題があがることはあがった。しかし、方針としてまと
めて調査してごらん・・・。という段になるとなかなかすすまない。それよりも、総務委員が体
育祭の応援団をやりだしたり、学園祭の企画について言い出したりしている・・・、というのが
状況である。応援団については、人数制限のある中で「制限を越えた場合は、総務には総務の役
割があるのだから、他の者がなっとくできる方法で考えろ」ときつく言った。しかし、総務の大
半はそれでも「やりたい」生徒達なのである。
 総務委員としての「やりがい」というものを具体的に、なかなか指し示してやれないことが現
状である。

5.「教職員集団の課題」として提起してきたこと

1)指導方針案を提起すること

 これまでは生徒会総委員会の「原案」が職員会議に報告され、「審議?」されていた。この結
果、会議をへないと原案が生徒に出せずにいた。これを「原案」については、報告するにとどめ、
教員集団が何を目標としてどの様に指導するかの方針を具体的に教員会議に審議事項として提出
することにした。このため、原案づくりの段階で会議に経過を報告して意見は聞くが、生徒の側
が最終的に原案を考えて決め、討議で修正することができるようになった。 また、指導方針に
基づくクラス討議の指導なども進めようとした。特に昨年の体育祭問題の指導では、クラス委員
会を通じて把握した各クラスの指導状況を即日、教員に集約して示し、指導すべき課題を示すよ
うにした。しかし、今年の状況ではなかなか身動きがとれないところにあるので、積極的に指導
しようという人が意欲的な実践を進められるように「研修会」や「手引き」などを発行すること
に重点を移している。

2)クラス集団の討議、学年クラス委員会の指導

 クラスでの討議はクラス委員と話し合ってから指導して行ってほしい、という事を提起してき
た。また、学年のクラス委員会を学年として開くように提起もしてきた。昨年度は高1、高2を
中心に学年クラス委員会が開かれて、学年の教員が学年の生徒集団指導するという場面をある程
度つくれた。しかし、今年の状況ではなかなか進んでいない。
 また、クラス討議を教員が指導するということを、「それでは自主的ではない」と言う自主性
の美名に隠れて放棄することを当然と考える傾向が強まっている。

3)全教職員で分担し協力した行事と活動の指導

 体育祭については、各学年から体育祭指導委員を選び、応援団と色の指導は色の担任、それ以
外の人は係りの指導・・・と分担して行うことにした。学園祭も同様に考えてきたが、それに対
して「自分は生徒会の指導なんてしたくない」という向きもある。

6.これからの課題に関係して・・・

1)バンド問題の再燃をどうするか

 8年前に禁止になったのには学園祭で自由参加のエレキバンドが騒音問題とあわせて生活指導
上の問題を数多く起こしてきたという背景があった。しかし、その後、学校の状況が変わり、さ
らに生徒の活動の状況もかわった。
 @軽音楽部がかつてはフォークだったが、エレキベースを用いるものが主体となった。しかし、
エレキが使えないので、この数年はシンセの自動演奏を使っていた。練習しない自動演奏はでき
て、練習した演奏はできない・・・誠に妙な話である。
 Aエレアコなどが増えたが、教師のほとんどはそうした変化には関心がなく知らない。 
 昨年、学園祭に教員バンドが出演してビートルズのナンバーを演奏した。その際、当然のこと
ながらベースを使ったが、教員の中から「けしからん」という意見も実施する段階では出された。
 この点について、むしろ問題を考える好機と考え、総括会議ではエレキに関する問題状況を整
理して提示して意見を求めたが、この点での意見はまったく出なかった。
 その後、散発的に生徒からは要望が出される様になり、総務委員会としては「バンドを認めて
もらう方向で取り組む」と表明したものの、その後の取り組みはない状況である。現在の所、生
徒には次のように説明している。
 @この問題については、かつては生活指導上の問題で禁止になった。
 Aしかし、現在の段階では教員の間にこの問題についての共通認識がないまま、慣例として禁
止となっている。
 B軽音楽部については矛盾があることはわかっている。しかし、顧問から具体的な提起をして
ほしいと頼んであるが、まだ、なされていない。
 C自由参加のバンドについては、生徒心得のバンド出演禁止規定との関係でも問題をにつめる
必要がある。
 D問題を解決したいのであれば、生徒会総務委員会に意見を集めなさい。ただし、そう簡単に
はすすまないかも知れない。それは教員の間に新しい合意をつくるという課題がこの問題のポイ
ントなのだが、なかなか議論にならない。むしろ教員が議論を嫌っているとすら思われるからで
ある。

 そうは言った物の、この状況である。「見通し」のないままに総務に取り組ませて、玉砕とい
うわけにも行かないだろう。と言って、さて、しかし、どうしたものだろうか。
 とりああえず、「総務としてクラス委員会で約束したことなのだから、どのように考えるのか
をまとめなければいかん」という点で考えさせている。しかし、それ以上の点になると、こちら
にもあまり展望が持てないのが現状である。なにしろ、この問題が「全校生徒の共通の要求」と
いうことにはなかなかなりにくいし、バンド活動をやりたい生徒は「総務でなんとかしろよ」と
言って、他の事には協力しない・・・ということなのである。このことを中心に逆に、討議を組
織させる方法を考えたいのだが、とても高2でクラス討議が成立させられる指導体制はな
い・・・。はてまぁ、と頭の中でグルグルと回っているのである。

2)考え企画し、指導できる総務委員会の確立・・・
 
 総務委員会が「行事屋」から脱したのは前進としても、これにかわる活動を組織し、全校生徒
集団を動かす中心としての役割を持つようにしていくことには、道遠く・・・という具合である。
学校生活に関することをどの様にとりあげさせて取り組ませていけるのか、という問題が一つ。
そして、もう一つは全校(各学年)でリーダーシップをとれる総務をどの様につくるか、という
課題が一つ。そして、さらには生徒会の「基礎組織」としてのクラス・学年の取り組みをどの様
に前進させるか・・・・。こうした積み重ねの上に、新しいリーダーとしての総務委員会が生ま
れるはずなのだが・・・。
 総務委員や生徒会活動の担い手をどの様に育てるか、中学・高校一貫教育の中で、ほとんど意
識されなくなっているこのことをどこから手をつけるかが、大変に重たい課題である。

3)集団づくりへの研修と実践をどの様にすすめるか

 クラス・学年の集団づくりなくしては、生徒会・全校集団の前進は基本的には困難であると考
える。しかし、「クラス経営」「集団づくり」という言葉そのものが死語である現からどの様に
自覚的な実践を発展させ、広げるか、とりあえず昨年12月に合唱コンクールの指導に関係して全生
研の実践家を招いて研修会を実施した。今年も7月に研修会を行いたいと計画していたが、生徒
の活動日程との関係で9月に延期した。しかし、研修会だけでは、集団の力関係を組み替えるこ
とは不可能である。いかにして、教職員集団の意識と実践をかえるのか???ウムムと考えてし
まう。とりあえず、9月には「学園祭にクラスから取り組む」ということで、できれば高生研の
実践家を招いて研修会をとりあえずはやろう、と思っているのだが・・・。
                                      (以上、1994年7月記)
7.追記 その後の生徒会指導・・・・ 

「バンド問題」についての「要望書」提出と「継続審議」へ

 夏休み前に高2総務委員のHがやってきて、「バンド問題についてまとめているが、もう一度
経過を聞かせてほしい」と言ってきた。一通り経過を話してから、「なぜ、バンド活動を学園祭
の中で認めてほしいのか、それが学園生活をよくすることにどのようにつながるのかと言うこと
も考える必要がある」と話した。Hは、ウムと難しい顔をしたが、「考えてみる」と言って戻っ
ていった。しかし、その後Hは、「難しいよ」と言うだけで手をつけようとはせず、H2総務の
間でも議論がされていない様だった。このまま行けば、またまたH2の一部が勝手にルール違反
をとり、来年から前夜祭禁止になるという恐れがあった。しかし、H2の総務が動かない、ほと
んど全員が体育祭の応援団・チェアガールでほうけている・・・という具合では、たきつけよう
がない。そもそも彼らの中には、「別に自分はバンドなんてできなくても関係ない」という様な
考えがあるのだ。「生徒の代表」となることの意味をどの様に教えるか・・・・。また、バンド
をやりたいと騒ぐ生徒にも、自らは何もしない、勝手にやらせろという生徒が多いのである。
 ・・・・
 しかし、9月8日、H2のバンド活動をしている中で中心となっているN等が教員室の私の所
にやってきて、話があると言う。
 聞けば、「エレキがなぜだめなのか、どうしたら許可されるのか、署名をすればよいのか」等
と話す。今までの経過と現状、問題点等を話して、なかなか難しい問題となるだろうという事を
話した上で、Nたちにはこう話した。「君たち生徒の代表は生徒会総務委員会だ。総務委員会に
問題を話して、生徒会の組織として取り上げてもらいなさい。君たちが勝手に行動しても、学校
として話し合う場はつくれないが、生徒会規約には協議会というものがある。この場で話しても
らうことができる。」
 翌日、Nたちは高2の総務に話をしに行った。Nたちが「突き上げ」、学校への要望書を出す
方向で動き出した。試験前(二期制なので9月に期末がある)なので、昼休みが中心である。放
課後に総務とじっくり話すわけにも行かない。で、別紙の様な資料をつくって9月10日に委員
長のMに渡し、参考にするように渡した。そして、「学園祭前に要望書を出すのであれば、教員
会議が9月29日だから、それよりも前に提出されないとダメだ。また、要望書を出すのであれ
ば正規のクラス委員会にはかって、承認をうけるようにしなさい。」と話した。
 9月17日に試験が終わり体育祭まで一週間となった。H2の総務は昼休みにNたちと話して
「要望の内容」はつまってきていたが、いっこうにクラス委員会を開く気配がない。それどころ
か、放課後に総務を開いて全体で議論することもしない。どうも「29日にだせば、エレキがで
きるのだろう」程度にしか考えていない様である。そこで、生徒会指導委員会では意思統一して、
「H2の総務に自分たちの責任を自覚させると言う点でつめる」ことを確認する。H2の総務と
会ったらどこでも、この問題への取り組みについてつめるという事である。
 そして、私も委員長のMをつめた。「残念だが、このままでは時間切れだ。」「えっ?」「ク
ラス委員会もへていない要望書をもらっても、それが全校生徒の意思をふまえたものとは認めら
れない。だが、いったいいつクラス委員会をやるのかね。それにだ、君たちはH2の総務だけで
話していて、まだ、総務全体も集めていないではないか。」・・・翌日、MとHが血相変えて
やってきた。「今日の昼にクラス委員会、翌日にもう一度やることにして、全校で話してもら
う」と無謀な事を言う。「君たちだって何度この問題を話し合ってきたのか」「いったい、今日
の昼に話して、まったく知らされていない全校生徒が何を議論できるのか」「そんなことをして、
無用の混乱だけが起きたら、手が付けられなくなるぞ」とつっぱねて、「君たちの話した内容に
ついて、明日、H2のクラス委員をまず集めてそのルールで要望することで高校2年がまとまれ
るのか、確認しなさい。」「そして、その上で放課後にクラス委員会を開き、要望する内容を承
認してもらって要望書を出しなさい。」と話した。
 28日、昼にH2クラス委員が集められ、総務から経過説明が行われた。H2のクラス委員は
総務の内容を了承し、クラスで討議するということを確認したようである。NたちのいるH2C
では放課後にクラス討論を30分以上にわたって行った。担任の話では「普段は絶対に討論など
で発言しない自分ではバンドをやっていない生徒が、おもむろに生徒手帳をあけて、学園の建学
の理念には個性豊かな人間を育てるとあるのに、今の学校の姿勢はどうなのか??と発言し、活
発な議論になった」とのことである。しかし、それ以外のクラスではクラス討論は行われず、そ
れどころか放課後のクラス委員会にも欠席する委員がH2でもかなりの数にのぼった。結果とし
ては、正規の定足数に足りない。
 クラス委員会でMが説明したが、なかなか意見はだされなかった。中学生から「教員側の考え
も聞いてみたい」という意見も出された。多くのクラス委員は、突然でとまどっていた様である。
しかし、ともあれ要望書を出すことは了承された。会議の最後に発言を求め、生徒会としてこの
問題について正式に手続きをふんで要望することは初めてであること、検討の結果はわからない
が、クラス委員会ではかって要望するということは貴重な成果であること、結束して生徒側が対応
できるように勝手な行動はとらないこと、等をクラス委員に話した。

 29日、朝、Hが要望書をもってやってきた。昨日学校では終わらず、徹夜で書いたというこ
とだ。この日の企画委員会に提出すると、すぐに結論は出せないだろうということで、ともかく、
一度、教員会議で意見を自由に出してもらうということで対応することになった。途中、MがH
2の署名なるものを持ってきた。しかし、そこには「要望書」で出された内容についての記述は
なく、ただ、「エレキをやらせたい人」とだけあって名前が書かれていた。Mを呼んでこれを突
き返す。「この中には君たちが議論した内容が反映されていない」「また、会議の当日になって
かろうじて要望書を出して果たしてどうなるかわからない時に、こんなものを集める動きが広
がって、君たちは後まで生徒の動向をまとめきれるのか。要望書が継続して議論されるとなった
としても、単なる不満から勝手な行動をとるやつが出たら、おしまいだ」「執行部として、君は
どんな考えがあってこれを持ってきたのか。」・・・・
 
 教員会議にはこれまでの経過を含めて報告し自由に意見を出してもらった。様々な意見が出さ
れたが、生徒の要望を認めてもよいとする意見も含めて、さらに継続した議論とルールづくりが
必要であることは共通していた。しかし、何よりも成果であったのは、教員会議で様々な教員が
それぞれ自分の考えをすすんで述べたということである。「今後、出された意見を整理して、学
校として検討を始める」ことが会議で了承された。

 会議後の金曜日に総務を集めて結果を伝えた。そして「少なくともこんな要望書を出すとはけ
しからん・・という意見はなかった。もっと早く総務として君たちがまとめて要望していれば、
何か具体的な成果になったかも知れない。」「今、少なくとも勝手な行動がないように高2をま
とめること、そしてどの様に今後、要望した内容の実現をはかるのかを総務として後期に考えて
欲しい。」と話すと、ややがっかりはしたようだが、納得していた。翌日、クラス委員会を開き
経過をMから説明した。

 学園祭は混乱もなく、初めて「実行委員会」が主体となって行事としては大いに盛り上がった。
前夜祭で騒ぎ出して統制がとれなくなりかけると、Mが立って進行に協力させるようにようやく
なった。

 後期に入って「行事の季節」は終わった。「合唱コンクール」の原案づくりを終えて、総務もよう
やく本来の様々な課題に向かうという意識を少しは持ち出したようである。「生徒会誌の発行」
などが計画されている。11月に研修旅行、そして12月の中間試験と、活動が止まる時期が続
いたが、これから3月までが生徒たちにとってはまとめの時期にはいる。

 さて、総務委員会から提出された要望書への対応については、教員会議での議論をふまえて、
当初、生徒会指導委員会では次のような方針を考えた。
 @軽音楽部とそれ以外は区別して考え、軽音楽部について部の顧問のもとに一定のルールをつ
  くって限定付きで認める
 Aそれ以外の音楽活動については、これまでの規制のあり方を改め、グループを登録し
  た上での事前審査(オーディション)を行って認められたものだけに限定する形に変
  える 
 B具体的なルールづくりについては、生徒会総務委員会を通じて全校討論を組織させ、
  規制のあり方をふくめた合意が形成できた段階で新しいルールを認める
 しかし、こうした内容について、企画委員会では校長から「8年前に軽音楽部にも認めないと
した職員会議の確認がある」等、否定的な意見が出され、議論はすれ違いに終わった。このまま、
何も示せないのでは最悪である。そこで、次の方向に転換することにした。

 @生徒会から要望された事項について、教員内部で一致した結論を出せる状況ではない。また、
生徒内部での議論も十分とは言えない状況である。従って、この問題について指摘された問題点
を文書でまとめ、生徒会総務委員会を通じて全校生徒に示す。
 A生徒会総務委員会にはこれまでの取り組みをまとめさせ、それを全校生徒に報告すると共に、
生徒会として回答書で示された内容についての検討を行うことを求める。
 B議論・検討の上ではできるだけ多様な意見を考える様にさせる。また、生徒会から協議会の
申し入れがあった場合は、企画委員会で対応する。

 この方針がなんとか企画委員会で認められ、12月12日の教員会議で認められたことによって、
「エレキ問題」は第二ステージに向けて動き出した。年明けまでに回答書を作成し、生徒会の要望
書に対しては学校として検討した内容をきちんと示し、生徒会としての検討をさらにもとめると
いう形での「決着」がこれから進められるのである。