巻頭言 21年目の野外活動部

顧問 熊野谿 寛

 去年の部誌に「もうそろそろ店じまいかな」と書いたら、「学園小学校で来年は募集しないとのうわさが流れている」との話もうかがった。しかし、今年もジャンボ宝くじに外れたので働くしかなく、普通に年度が変わったら、中1の部員諸君がそこそこの人数で入部してしまった。

この2年間、部の中心を担った学年が引退し、高1が部の中心となった。高2も名簿の上ではいる。彼らも魚について学校で一番詳しいM君を筆頭に、なかなか優秀なメンバーではある。ただ、他の部活と兼部したり、生徒会総務をやって野活からは遠のいた。結果として、春の部長選挙では、部員11票の投票で高1の藤井君が圧勝して、高1が中軸となることとなった。「部活に来なかった上級生より、来ていた高1の方がよい」というのが野活らしいところかも知れない。

 しかし、高1は今まで中心になって運営や企画立案したことがないのだから、あれもこれも手探りとなる。引退した高3の学年もそうだったが、気楽そうに見える野活でも中心になってみると大変だ。合宿で、三度三度の飯を作る、装備品を割り当てたり回収する、部員の落ちこぼれなく移動する、なども特に人数が多いと本当に大変だ。

 今回の夏合宿でも、装備品の事前点検が十分でなく、テントの本体とポールが違っていて穴がきれいにあわないという問題があった。これは引退した高3が最後の春合宿の時にも、テントの袋と中身が違うという問題があったので、前年度からの問題なのだろう。春の時は、ジャンボテントのポールで4-5人用テントをごまかして立てるという裏技を使って切り抜け、入りきらない分は当時の高2が雪洞を掘って泊まったので、かえって合宿としては充実したものになった。この程度の失敗ならば、まず自分たちで考えて対応を考えてもらい、それでダメそうならば何かカバーするというのが、顧問としての私のスタンスだ。行事も活動も、「失敗する自由」のない所に意味があるとは思えない。決定的な安全にかかわる問題以外は、試行錯誤しなければ何も得ることはないのだと思う。この夏合宿も、顧問の私はさっさと自分で飯を作って食べてしまい、ゆっくりと彼らが四苦八苦して飯と格闘するのを横であれこれ言いながら眺めていた。決してイライラせず、ゆったりした気持ちで付き合いたいと思っている。

 私自身はこの春から学校の仕事以外に、働く者の権利と教育を守るための仕事が増えてしまい、なかなか山にも行けない日々が続いている。最高裁や国会、文科省、県当局への要請からいろいろな実務まで、この齢にして「初めて」の経験も多い。山をながめながらのんびりできる日々を夢に見つつ、「平和・自由なくして登山も幸福もなし」と自分に言う日々である。