「宇宙論」創作ノート6

2012年07月

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07/01/日
7月になった。まだ「宇宙論」というタイトルのままだが、まだ序章が仕上がっていない。文体の問題。それはコンセプトの問題につながる。タイトルについては練り直したい。いまは3つの作業を並行して進めている。そのうちどれか一つに絞ってゴールを目指したい。本日は日曜日。いよいよ欧州サッカーの決勝の日だ。早めに寝て早朝に起きるつもりだが、うまく起きられるか。今月はスペインから孫の3人娘が来る。スペインではすべての学校がオフになっている。息子は高等音楽院、嫁さんは地元の音楽院の先生だが、完全にオフになっているようだ。こちらは7月いっぱい大学がオープンしている。原稿を書く仕事はまだ手探りの状態だが、著作権関係の仕事や講演会の予定も入っているので、超多忙であることにかわりはない。孫は顔を見る程度ということになりそうだ。まだ梅雨が続いている。気温も低い。しかし天気予報では今夏は本格的な猛暑になりそうだ。いまのうちに仕事は進めておきたい。大学の研究室でも仕事はできるのだが、資料を自宅にもって帰るかどうか、そういう段取りも考えないといけない。『飛梅』という作品を検討している。以前書いた『天神』の焼き直しだが、前回はオカルトに傾いていた。政治と恋愛を前面に出して、内容の濃い物語に再構築したいと考えている。オリンピックはいつ始まるのか。そういえば女子バスケットも今日が出場をかけた最後の試合だったのではないか。だが本日はサッカーだ。孫の3人娘はサッカーにはまったく関心がないようだが、わたしはスペインを応援する。

07/02/月
夜中に起きてサッカー決勝に備える。スペインが勝つだろうとは思っていたが、試合開始の早い時期に2点とってしまったので気が抜けた。後半の終了間際にも2点を追加し4対0の圧勝。とくにアルバが決めた2点目が圧巻だった。スペインはすべての選手がボールを足もとに置いて、前方に蹴るだけでなく、横にも斜め後ろにも自在にパスを出すことができる。短いパスしか出さない。受けたパスが必ず足もとで止まる。イタリアはドイツ戦で全力を出し切ったようで疲れていたようだ。さて、本日は1限のある日。3限は1年生と弁当を食べる会。4限はテスト。それから学科会。自宅に帰り着くと9時を過ぎていた。長い1日であった。でも、スペインが勝ったので疲れも吹っ飛ぶ。

07/03/火
大学。1限だけ。この時期は学生のレポートなどを成績簿に記入する作業がある。リレー形式の授業を早めに成績を出さないといけないので、昼過ぎまで作業にあてる。そろそろ学生が作品を提出する時期でもある。研究室は冷房が効いて快適。梅雨の時期はありがたい。雨が近づくという天気予報なので早めに帰ったつもりだが、池ノ上の駅ですでに雨が降っていた。昨日のスポーツニュースの録画でスペインの勝利をじっくり反芻する。

07/04/水
休み。月に一度の主治医の診療。それだけ。今月はスケジュールがハードなのだが、今週は水曜と金曜が休み。だが土曜はハードスケジュールだ。有明のシンポジウムに出たあと、すぐに大阪に行かないといけない。さらに明日は孫が来る。スペインの孫だけでなく四日市の孫も来る。孫同士の交流を深めるのが目的だから、わたしはあまり関わらないようにしたい。明日は午前中の会議のあと、3コマ授業があるので、ずっと大学にいることになる。そして帰ると孫3人ということになるのだろうか。

07/05/木
木曜日は午後からの出講の日だが、午前中の会議が入った。何だかよくわからないが、事務局と談合するようで、今後の方針みたいなものを話し合うようだ。出てよかった。こういう談合では言いたいことを言っておかないと、将来の環境が変わってしまう。わたしはすでに老人で、将来などというのはおこがましいのだが、老人にだって快適な未来を画策するということはある。老人ホームに入るとかいうのもその一つだが、わたしの場合はとりあえずいまいる大学の環境をこのまま持続させれば、体が元気な間はここにいてもいいというくらいの感触をもっている。研究室に自分の本を運び込んだので、もはや自分の書斎がここにあるという状態になっている。埴谷雄高や吉本隆明の本が並んでいて、いつでも手にとって読むことができる。自宅では別棟に書庫があって、昔読んだ本は全部そこに封じ込めてあった。だからとても懐かしい感じがして、つい本を読んでしまう。前期も終盤で成績をつけなければならないのだが、作業は遅れ気味だ。会議のあと時間があったので、短いエッセーを一本書いた。昨日、ヒッグズ粒子が発見されたというニュースが入ったので、わたしの『宇宙論』も何とかしなければいけないのだが、まあ、夏休みの課題ということにしたい。3コマの授業を終えて自宅に帰る。孫が5人揃っているかと思ったのだが、誰もいない。四日市から2人の日本男児をつれてきたはずの次男の嫁さんの車がない。皆で箱崎にスペインの人々を迎えに行ったようだ。で、風呂に入っていると、四日市の孫の声がしたのであわてて出てくると、嫁さんがカーポートに車を入れているところだった。次男の車はワゴン車なので、荷物を積み込んできたようだ。その荷物を運び込み、とりあえず四日市の孫と遊ぶ。彼らとは正月に会って以来か。嫁さんは青山通り、妻は六本木通りを走ったらしく、半時間ほどのタイムラグでようやく妻が帰ってきた。工事中だったようで、とにかくスペインの孫とも再開。2年半ぶり。3人ともすごく大きくなっている。ああ、年月というものは、子どもを大人にしてしまう。分別のある人と話すのは楽しいが、ききわけのない幼児のままでいてほしいという思いもある。5人の孫を同時に見るのは、何年ぶりかというより、わたしにとっては初めてのことだ。妻は去年、四日市の嫁さんと孫をつれてスペインに行ったのだが、わたしは大学の仕事があったので行けなかった。孫5人はそこで仲良くなっていて、1年ぶりの再会でもすぐに仲良く遊んでいる。親族というのはいいものだ。わたしは長い年月、孤立して生きてきた。そんな感じがしているのは、文学にひたっていたからだが、実際には妻と2人の息子たちに守られていたように思う。息子たちが独立していまは妻と2人きりの生活だが、こうしてたまさかに孫たちが集うと、自分も人間としてまっとうな人生を送ってきたなと、自分を褒めたくなる。ということで、大勢の人間が集まったのだが、皆、疲れていて、すぐに寝てしまった。わたしも午前中から会議があったので疲れてはいるのだが、ここでふんばって少しは仕事をしたい。本日、池ノ上から自宅に帰る途上で、突然、閃くものがあった。ドストエフスキー書き換えシリーズの最終巻、『新釈カラマーゾフ』の根幹となるアイデアが浮かんだ。簡単に言うと、悪魔を登場させるのだ。原典にも悪魔は出てくるのだが、そのはイワンの妄想の中の人物ということになっている。わたしの作品では、ふつうの人間のふりをして、さりげなく悪魔を登場させたい。悪魔の登場シーンがこの作品の成否のカギになるだろうといまは考えている。

07/06/金
本日は休み。明日はシンポジウムのあとで大阪へ日帰りという強行軍なので、体調をととのえるために散歩にも行かずに、自分の部屋で仕事。5人の孫が騒ぎまくっているのだが、わたしは安全地帯にいる。ヒッグス粒子が発見されたというので、気持は宇宙論に傾いているのだが、数式を用いずに哲学や存在論のタッチで書くので、風変わりな宇宙論になるだろう。そこが狙いだ。

07/07/土
有明のビッグサイト、ブックフェアの一貫でシンポジウム。2年前に講談社のブースで短いスピーチをしたことがある。その時、妻に車で送ってもらったが、今回は恵比寿まで車で送ってもらい電車で行く。電車でお台場に行くのは初めてか。直通運転なので意外に早く着いた。時間があるので、務め先の武蔵野大学の新校舎を見に行く。お台場から有明への広々とした遊歩道に面していて最高の立地だ。文学部はもとの武蔵野校舎のままなので、ここへ来ることはないのだが、いいところだと感じた。駅から遊歩道を歩いていけばいいというところが何よりだ。シンポジウムは他のメンバーが楽しく論争していたので、こちらは順番が回ってきた時に短くコメントするにとどめた。必要なことは話せたと思う。終わって東京駅に向かう。有明から東京駅に向かうのは初めて。意外に速く着いた。ただし京葉線の駅から新幹線までの通路がものすごく長く、拷問みたいだった。駅に着けばあとは列車に身を任せるだけだ。母校の追手門学院の宴会に参加するだけ。その宴会のコンセプトがよくわかっていなかったのだが、同窓会とPTAの役員の方々の集まりのようだった。その中で、わたしの表彰式があった。何で表彰されるのかもよくわからないのだが、賞状とカップをありがたくいただく。スピーチを求められたので、『悪霊』の宣伝をする。午前中のシンポジウムはネット中継されるというので、『悪霊』の本を一冊持参して宣伝をした。電子書籍の時代に出版社は必要か、というテーマだったので、電子書籍の時代になっても紙の本はなくならないし、出版社の役割も重大であることの証として、4800円もする分厚い本を見せておくのは効果的だったと思う。その本をもったまま大阪に行ったので、スピーチでも本の宣伝ができた。私立学校の関係者なので生活にゆとりのある人々なので、この5000円近い本を何人かの方々に買っていただけるのではないかと思う。

07/08/日
日曜日。昨日、四日市の次男も来たので家族のフルメンバーが揃った。そこで妻の叔父、叔母、わたしの姉などにも来てもらって、演奏会をすることになった。3人娘の長女がピアノを習っている。なかなか上手だ。それから長男と嫁さんが連弾、最後に長男の独奏。自宅のピアノをスペインに送ることにしたので、この家での最後の演奏会になる。長男のピアノを聴くのは何年ぶりだろうか。高等音楽院の先生だから、さすがに上手い。その後は総勢16人の大宴会。ふだんは妻との二人暮らしなので、いささか疲れたが、家族がいるということを思いきり実感した。

07/09/月
大学。今週は水曜日にも会議があるので毎日大学に行くことになる。まるでサラリーマンみたいだ。1コマ目の授業。構造主義の話をする。毎年1回、数学の話などもするので頭が疲れる。あとは自分の仕事をずっとしていた。学科会も後半は入試の話になったので一人だけ先に帰らせてもらう。

07/10/火
大学。1コマを終えて研究室で学生の作品を読む。文藝家協会の常務理事会へ。夕方、池尻大橋から自宅へ、いつものように緑道を歩いていると、向こうから浴衣を着た涼しげな家族が来る。かわいい女の子がいると思ったら、わが孫たちであった。スペインの血が入っている子どもたちなので、3人ともキュートだね。

07/11/水
大学。水曜日は休みのはずだが何か会議があるというので、コンセプトのわからないままに出向いたのだが、学院長、学長もいる重要な会議であった。突然、頭のスイッチが入ったので、言いたいことを言った。放っておくと文学部は廃止になってしまう。就職率が他学部に比べて悪いからだ。しかし学生の満足度ということでは、文学部はダントツに高いのではないかと思う。文学部のない大学は二流だ。そのことは学長もわかっているはずで、まあ、言いたいことを言っても許されるだろう。わたしは作家になる前のサラリーマンの頃から言いたいことを言ってきた。言いたいことを言っているうちに異例の出世をして収入が3倍になった。いまはそんなことをあてにしているわけではないが、学生たちによりよい環境を設定するために尽力したい。夕方、東京堂書店の出版部へ。『超自分史のすすめ』の再校を渡す。その後、軽く飲み会。編集者と飲む機会も最近は減ってしまったのだが、たまにはいいものだ。

07/12/木
大学。3コマの日。4年生のゼミでは卒業写真の撮影。15人なか14人揃った。卒業アルバムは高価なので、何人が買うかはわからないが、就活シーズンで出席率が下がっている時期に、よく揃ったと思う。

07/13/金
ペンクラブ理事会。今日は東京会館。ということはそのあとで例会がある日だが、例会はパス。孫たちと付き合いたい。四日市の孫は四日市に戻った。スペイン3人娘だけになったのだが、何だか静かだ。騒がしいのはあいつらだったかと思う。3人娘も昔は騒がしかったが、長女が10歳だから、おとなしくなったのだろう。

07/14/土
スペイン娘たちは早朝に出発した。スペインに帰ったわけではない。関西方面への小旅行だ。わたしと妻には、つかのまの平安が戻った。この週末はのんびりとすごしたい。

07/15/日
孫のいない静かな日曜日。ありがたいことだ。妻の疲労も回復するだろう。今週の月曜日、大学の講堂で講演を聞いたあと、急に左足が痛くなった。歩けないほどではないが、何となく痛い。本日、ほぼ回復したのだが、この週末は散歩に出なかった。まあ、何とか治ったのだろうと思う。

07/16/月
祝日らしいが(何の日だ?)大学は授業あり。朝1コマのあとは教授会までアキ時間。ただし作品をもってきた学生と大学院受験の推薦書を求めてきた学生がいたので対応。スペインの孫たちはいまは大阪にいるらしい。まだ平和な日々が続いている。とりあえず仮題『菅原道真の見果てぬ夢』に取り組んでいる。

07/17/火
朝の1限。それだけの日だが、学生の宿題がドッと出たので研究室で読み始める。空が暗くなってきたので、重いけれども自宅に持ち帰る。2年生だがいい作品が多い。皆、文章がうまい。かなりのレベルだ。本をよく読んでいる感じだ。児童文学やライトノベルが多いのだが、とにかく展開力がある。

07/18/水
初台オペラシティーの著作権情報センターで著作権と表現の自由委員会。午後は同じ場所で臨時理事会。すぐに終わったので自宅で仕事。アキ時間は玉川上水緑道沿いの喫茶店で仕事。いい喫茶店だったが、寒天屋が出している店で、ランチはすべて寒天だった。店構えがおしゃれだったので誘い込まれてしまった。というわけで昼食は豆乳寒天だった。

07/19/木
3コマの日。疲れきって自宅に帰ると、四日市の孫が到着していた。またにぎやかになる。

07/20/金
伊香保で講演。伊香保という温泉があることは知っていたが、正確な場所を知らなかった。徳冨蘆花文学記念館というところ。わたしは世田谷文学館の選考委員を10年以上続けている。その世田谷文学館があるのが芦花公園で、徳冨蘆花の邸宅がその近くにあることは知っているが、伊香保に縁があるとは知らなかった。その地が気に入って、そこで亡くなったのだという。群馬県では以前に土屋文明記念館で講演したことがある。文学者を大切にする県のようだ。高崎まで新幹線。迎えの車で、途中、水沢うどんの昼食。講演は『清盛と西行』。同じテーマで5月に下妻でも講演をやった。下妻に行くのは大変だった。今回は新幹線の車なので楽だった。

07/21/土
休み。スペイン娘の上の2人はキャンプに出かけた。日本の子どもたちと集団生活をさせることで日本語の上達を期待している。本当は、2人は別々のキャンプに参加させるつもりだったのだが、催行人数に達せず1つがキャンセルになったので、やむなく2人で参加させることにした。長女はかなり日本語がしゃべれるので、周囲の人々と日本語で話すだろう。次女がそこに参加して少しでも日本語力が上達することを願う。長男と嫁さんは、長男の友人の結婚式。一泊する。12年前にスペインでの長男の結婚式に出席してくれた友人で、だからわたしも面識がある。音楽人は生活の基盤を築くのが難しく、ボヘミアンのような人生を送りがちだ。わが息子はスペインに根を張ることで何とか生きている。その友人はチェリストだが、日本のオーケストラに所属できたので、生活できるようになったのだろう。わたしには2人の息子がいるが、2人とも自立して生活できていることが何とも喜ばしい。経済が下降している昨今では、息子がちゃんと仕事をもって自立しているというのは奇蹟に近い。大学の先生をしていると教え子の人生にも責任を感じる。4年のゼミはちょうど15人いるので、相撲の勝ち越し負け越しみたいな感じがする。せめて勝ち越したいと思っているのだがどうなることやら。さて、いまわれわれは、長男の家族5人、次男の家族3人(サラリーマンで休みのない次男を除く)、わたしたち夫婦の10人で暮らしているのだが、キャンプの2人と結婚式の2人が今夜は不在だ。残りの6人で渋谷の先のこどもの城に行く。入場料をとられるが、子どもの遊び場があるので、そこで孫3人のエネルギーを発散させ、夜中の安眠を期待している。このシーズンは学生の宿題の小説作品を読むことに忙殺される。とりあえず読み終えた。今週は提出期限なので、大量の作品を読むことになった。期限に遅れても月曜の昼休みまでは受け付けるといってあるので、月曜にも何篇か出てくるだろう。それを読めば、今年前半のノルマが終わる。8月も大学院入試や、オープンキャンパスの模擬授業などがあるのだが、とにかく来週で前期の授業が終わる。大学の暦ではさらに1週間の講義が予定されているのだが、最終回は質問に答えるということで、メールで質問を寄せてもらうことにしている。このところ涼しいので助かっている。このノートは今月でいったん閉じる。小説家なので小説を書きたいという気持が強い。生涯の仕事として宇宙論を書きたいというモチベーションはあるのだが、担当編集者を通じて営業部の了解をとらないと昨今は企画が通らないので、企画が通ったものを優先する。ということで、『菅原道真の見果てぬ夢(仮題)』を河出書房新社で出すことにした。8月から、『見果てぬ夢』のノートにする。しかしその次も「宇宙論リプライズ」といったノートを書きたいと思う。

07/22/日
日曜日だがコーラスの練習がある。本日は吉祥寺のイタリア料理店の地下にあるホールでマリンバの演奏を聞いてからそこで練習して、それからイタリア料理の宴会という素晴らしいスケジュール。いままでここで練習したことがあるし、先日のコンサートはここのお嬢さんに伴奏してもらった。本日のマリンバの伴奏はお姉さんの方で、ご両親ともども国立音大の出身とのこと。われわれのコーラスの先生が国立の先生なので、こういう企画が実現したのだが、マリンバをちゃんと聴くのは初めてかなと思った。長男が芸大にいた頃に何度か学内コンサートに出向いたので、打楽器奏者の演奏も聴いたのだが、本日の演奏者塚越慎子さんはすでに有名な人だそうで、すごい演奏だった。伴奏の大澤愛さんも楽しい人だった。音楽関係の人と接すると、わが長男がピアニストなので、何となく胸が痛んでしまう。音楽は厳しい世界だ。わたしは大学で小説の書き方を教えているので、似たようなものだが、音楽大学の学生はつぶしがきかない。文学部の学生は、文学の教養のある不動産屋になってもいいのだし、小説家志望の乗用車のセールスマンになったっていいのだ。このわたしだって、某自動車メーカーの販売店向け機関誌の編集者だったし、原付免許教室のマニュアルを書いたり、トップセールスマンに取材して販売マニュアルを書いたこともある。その体験は現在のわたしにとって、大学での講義よりもはるかに役に立つ貴重な体験となっている。さて、イタリア料理で楽しくワインを飲んで自宅に帰ると、長男と嫁さんも戻ってきていて、キャンプに行っている2人を除いて、孫3人がいる。幼い3人なので可愛くうるさい人々だ。

07/23/月
大学。1限だけ。80人以上いる講義の科目なので毎回のレポートを見るだけでも大変なのだが、いいレポートを書く学生が何人もいるので、自ずとそうでない学生との差ができる。成績をつけて大学のシステムに入力。明日の授業の宿題の締切が本日で、読もうと思ったら学生が2人研究室に来たので対応しているうちに、学科会の時間になった。宿題は自宅に持ち帰る、孫5人いる喧騒の中でどうにか読み終える。2年生のゼミなのだが、いい作品が多かった。

07/24/火
大学。2年生のゼミ。宿題を返す作業だけ。生まれて初めて小説を書いた学生も多いはずだが、厳しい点をつけたものもある。そのショックを乗り越えてがんばるか、もうやめてしまうかは本人しだい。40人のプレゼミなので、来年は半分に減ることになる。早めに自宅に帰って自分の仕事をする。短いゲラなどがあって時間がつぶれる。

07/25/水
大学は休みの日だが、仕事がある。午前はジャスラックで創作者団体協議会。これは議長をつとめているので内職ができない会議。午後はペンクラブで言論表現委員会。ツタヤの担当者を招いて図書館問題について説明を聞く。この担当者は感じがよかった。ツタヤは意欲をもって業務を拡張している企業で、本や雑誌の売り上げでも業績を伸ばしている。時にやりすぎてフライングをすることがあるので、文藝家協会からの要望を伝えておいた。要するに「複本を置くな」ということ。しかし利用者からの要望があれば複本を置かざるをえないだろう。だがこれはツタヤだけの問題ではない。全国の図書館の問題で、多くの公共図書館が指定管理者に丸投げしている。ただツタヤはフライングしがちなので、実際の業務を見守る必要がある。

07/26/木
大学。3コマ目の大学院のゼミは、打ち上げの宴会にした。全員で近くのしゃぶしゃぶ屋へ行く。時間いっぱい飲み放題で飲む。登録6人に追加2名のクラスだが、お互いの交流ができたと思う。自宅に帰ると孫たちは寝ていた。長男とサッカーを見る。スペイン対日本。予想を裏切って日本が勝った。スペインではパニックが起きているだろう。長男はサッカーにまったく興味がない。子どもを寝かせつけた次男の嫁さんが後半に参加。少しは盛り上がった。

07/27/金
休み。本日、ピアノの運送屋が来て、スペインに向けて送り出す。思いでのこもったピアノで、なくなるということにわずかな悲しみがある。来年、わたしと妻は小さなマンションに引っ越すことを考えており、ピアノをもっていくことができなくなった。長男のピアノなので本人に確認すると、スペインで使いたいとのこと。それで送ることにした。ついでに母の形見の戸棚も送る。自宅を畳むというのは決意の要ることだが、われわれも老齢化しているので、早めに生活を縮小したい。仕事に必要な本は大学の研究室に運んだので、手元に置きたいわずかな本だけを残して、残りはそっくり処分することになるだろうが、それは来年だ。もう一度点検をして、残したい本は研究室に少しずつ運ぼうと思っている。

07/28/土
週末だが本日は宇都宮で講演。もう何年も年に一度通っているので慣れている。担当者も顔見知りだが、聴衆はそのつど変わる。本日は文章論というテーマを担当者から与えられていたので文章について話したが、結局は小説全般について語ることになる。本日のように技術論から始めた方が反応がいいという感触を得たが、たまたま今日の聴き手が熱心だったからかもしれない。猛暑。宇都宮はいつも暑いが、年に一度、7月の終わりにしかいかないので、暑いのは仕方がない。それにして先週、伊香保に行った時は寒かった。東京駅でも上着を着ていた。数日前から猛暑になった。本日は午前中の講義なので夕方には仕事ができる態勢になった。

07/29/日
日曜日は休み。子どもと孫たちは箱根に出かけた。一台の車に入らないので小田原でレンターカーに乗ることにして、次男の嫁さんと次男の長男だけが小田急特急に乗った。前から電車に乗りたがっていたのでちょうどよかった。昨日新幹線に乗っていると、車内販売のワゴン車が通りかかった時、何か緑色のものが目に入ったので、ハヤブサ・グッズではないかと呼び止めた。いろんな種類があるようなので質問すると、お勧めはチョロQで、ここにはないがすぐにもってくるというので、2つ買った。これが孫男子におおうけだった。旅行にももっていった。スペイン娘たちにはトチオトメの根付。これも喜ばれた。さて、子も孫もいなくなってもとの老妻と2人だけの平穏な生活に戻ったが、妻が風でダウン。こちらはのんびりとテレビを見ながら仕事。そろそろエンジンをかけないといけない。
夜中、孫たちもいない静かな環境の中、水割りを飲み、仕事のワープロを叩きながら、サッカーを見る。モロッコってけっこう強い。とくにゴールキーパーがいい。日本はスペイン戦の疲れが残っているのかキレが悪く攻めきれない。それでも終了間際、ワンチャンスの清武のスルーパスを走り込んだ永井がキーパーの頭の上をふわりと浮かした技ありのシュートで貴重な1点を上げた。男子サッカーは確実に強くなっているが、疲労がたまっているので、第3戦のメンバーが重要になる。主力を休ませるほどの戦力の厚みがあるのか。引き分け狙いでもいいのでリザーブのメンバーを使ってみたい。

07/30/月
大学。授業の最終回は質問のある人だけネットで質問するということにした。学科会もないので休みなのだが、研究室のパソコンを入れ替えるというので立ち合わないといけない。担当の女性がデスクトップのパソコンを運んできて取り付けはすぐに終わったのだが、それからが問題だ。まずXPだったウィンドウズが7に変わった。自宅の仕事用のラップトップもXPで、慣れているのだが、7というのは使い勝手がわからない。インターネットのブラウザも変わった。この新しいブラウザは妻が使っていて、時々質問されるので、かなり不便になっていることは知っていたが、自分が使うとなると、慣れるまでに時間がかかりそうだ。ワードは研究室のものは2007で、これはそのままだが、自分用にツールバーのアイコンを並べていたので、同じ状態に設定しないといけない。それからATOKだ。わたしは昔は一太郎を使っていたが、いまもそのままATOKのカナで打っている。しかも、その前の東芝ルポのキー配置に似た配置に変更して使っているので、その配置を再現しないといけない。それと辞書の移し替え。さらに以前から使っている百科事典と大国語事典。これらの導入にずいぶん時間がかかった。何年かに一度、こういう作業がある。自宅のラップトップも長く使い込んでいるが、来年あたりは買い換えないといけないと思っている。結局、4時間ほど作業をしていた。孫たちはまだ箱根にいるので、自宅に帰ってものんびりと仕事ができる。昨日から仕事の調子が出てきたので、このペースを持続させたい。

07/31/火
今日からオフ。学生からいくつか質問が来たので対応。木曜日にも質問が来る可能性があるが、とにかく猛暑の中を出かける必要はない。孫たちはまだいるが、スペイン3人娘はそろそろ帰るだろう。3人とも美人になりそうな予感。あと10年くらいたつと、美女に囲まれたおじいちゃんになるかな。箱根へ行っていた孫たちが帰ってきて、喧騒が戻った。四日市の長男が風邪でダウンしてすぐに寝た。一人いないだけで、ぐっと静かになる。さて、7月も終わった。8月、9月は自分の仕事に集中したい。とりあえず『菅原道真の見果てぬ夢』をこのオフの期間に完成させたい。


以下は随時更新します


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