「宇宙論」創作ノート4

2012年05月

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05/01/火
大学。火曜日は1限だけ。暑くなってきた。さて、5月は何をするのか。ノートのタイトルは「宇宙論」だが、まだプロローグで停滞している。短篇小説を頼まれているので、並行して作業を進めることになるだろう。

05/02/水
昔、もっとヒマだった頃は、毎日が日曜日みたいなものだった。それでも子どもたちが学校に行っていたから、5月の連休は楽しみにしていた。というか、こちらとしては何かサービスしないといけないという義務感のようなものがあったのだが。たいていは、浜松の仕事場に行っていたように思う。今年は第二東名が開通したので、仕事場に行くことも考えたのだが、昨日まで大学の出講日だった。月曜日も出講日で、休みになるのは木曜日だけだ。ということで、今回はどこへも出かけずに、本の整理をすることにした。大学の研究室が変わって、前任者の本をもとのところに置いてきたので、自分の本を置くスペースが出来た。早稲田で6年間、専任でつとめたので、毎年40万円の図書を購入したから、それを運ぼうと思っている。できれば自分にとって大切な本も大学に移動し、大学を辞める時は寄贈しようと思っている。一種の身辺整理だ。ということで、箱に詰め始めたのだが、雨なので書庫のある別棟には行けない。とりあえず、独立した息子たちの部屋に置いてある本を梱包した。明日も雨のようなので、地下室と書斎の本を整理しようと思う。ダンボールを50個用意しているのだが、どれだけもっていけるか。いずれこの家は畳むことを考えているので、研究室にもっていけない本は捨てる覚悟をしている。

05/03/木
祝日。木曜日は3コマ連続の日なので、休みになるのはありがたい。昨日から連続して雨。しかも豪雨。本の箱詰めの2日目。応接スペースの本を片づける。客が来るところだが、そこにも本がはみだしていた。きれいに片付いた。『悪霊』の再校届く。早すぎるじゃないか。初校の修正箇所が少なかったせいか。まだ『頼朝』の再校に手をつけていないので、こちらから始める。こちらは校正者の指摘が入っているので、そこだけを見ればいい。

05/04/金
『頼朝』のゲラ完了。10年前の作品だが、テンポがよく中身がある。歴史小説というものに初めて手応えを得た作品だ。この10年、歴史小説を書き続けてきたが、もっと書きたいという思いがまだあるので、しばらく続けたいと思う。本の整理をしていたら、『遮那王伝説』という14年前の作品があったので読み始めたら、最後まで一気に読み、エンディングでは泣いてしまった。こんな名作が誰からも忘れ去られている(わたしも忘れていた)のは、何だか残念な気もする。

05/05/土
文化放送でラジオ出演。漫画家の弘兼憲史さんの番組。『男が泣ける歌』をとりあげいもらえたのでありがたかった。同世代なので楽しく語れた。放送に出演するというのは、自分をスタジオに運ぶだけが仕事というところがある。約束の時間に遅れないように現地に行けば、あとは担当者に任せてスケジュールに合わせているだけでいい。真夏のように暑い日。連休中の唯一のお天気の日なので、どこかに遊びに行きたかった気もするが、こういう日に仕事をするのがプロなんだという気もする。夜は姉を招いて宴会。長い一日だった。

05/06/日
雨が続き、昨日は外出したので、散歩に出るのは久しぶりだ。突風が吹いている。茨城県では死者も出たという。頭上で雷がなり始めたので、某有名歌手の邸宅前で引き返した。ぎりぎりで豪雨に濡れるのを免れた。『悪霊』の再校。とりあえず赤字を入れたところが直っているかを確認しつつ、必要なところはその前後の文章の流れを確認する作業。第1部は初校でもほとんど訂正が入らなかったので、どんどん作業が進む。さて、明日からまた大学が始まる。月曜、火曜は朝が早い。体調を調えたい。

05/07/月
連休は結局、木曜日が休みになっただけで大したメリットはなかったのだが、それでもまた大学が始まったという感じがする。月曜の1時間目という時間にもかかわらず、学生が聴きにきてくれるのは嬉しいことだ。わたしが語るのは文学史みたいなものだが、学生たちにとっては初めて聞くことであるし、わたしの独創的な解釈もまじえているので、まあ、楽しく聞いてくれていると思う。月曜と火曜は1時間目だけの授業なので、2時間目に弁当を買って軽い食事をする。7号館に研究室が引っ越したのだが、この建物の1階にコンビニがあるので便利だ。ようやく講義登録者の名簿ができたので、これまでのレポートを名簿に記入する。この作業が大変だ。とくに月曜の授業は90人くらいの学生がいるので記入するだけでも時間をとられる。まあ、早稲田にいた頃は400人の教室で授業をやったことがある。その時は月に1度のレポートということにしていた。月に1度とはいえ、400人のレボートを読んで成績を記入していくのは、賽の河原の石積のような拷問であった。夕方は学科会。そのあと、非常勤の先生方との懇親会。予算の縮小で去年はお酒の用意がなかったので、わたしが独断で酒を用意したのだが、今年は他の先生方も差し入れしてくれたので、充実した宴会になった。

05/08/火
大学。レポートの記入。夕方帰宅。暑くなったが研究室に冷房が入るようになって嬉しい。去年は節電のため冷暖房がストップしていた。

05/09/水
本日は大学は休み。公用もないので書庫の整理。自宅には奥まったところに書庫がある。この書庫のおかげで、本を捨てることなく所蔵できたのだが、この大量のゴミを子孫に残したくないので、必要度の順にセレクトして、大学の研究室に移送することにしている。ドストエフスキー全集とか、日本の古典文学など、必要なものを選んでいくと、それだけで研究室は満杯になってしまいそうだ。本日で30箱くらいができた。あと20箱でとりあえず研究室の本棚は満杯になりそうだが、箱を積み上げて、改めて不要な本は捨てるか、大学の図書館に寄贈することもできるので、とりあえず多めに送ってしまおうと考えている。残りの本はたぶんゴミとして処分することになるだろう。自分にとって思い出のある本もあるので残念だが仕方がない。

05/10/木
木曜日は3コマある。かなり疲れる。だが『悪霊』の再校ゲラの担当編集者のチェックが届いた。かなりの指摘がある。難しいものではない。わたしの見落としがかなりあるということ。指摘に従って微調整していくだけでいい。しかし何しろ2200枚の作品だから量的に多い。明け方までがんばってようやく半分。ずっと前に渡してあった『超自分史のすすめ』の担当者からメールが届いた。すでに入稿済みとのこと。そのうちゲラが届く。このところゲラに追いかけられている。しかしゲラがあるということは本が出るということで、とにかく3冊の本が出る。次の仕事はまだ決まっていない。しかしプランはいくつかあって担当者に提案はしている。そのうち全体像が見えてくるだろう。

05/11/金
本日は休み。明日、講演があるので、腰など傷めないように、荷造りの作業は控える。昨日、急に寒くなった。このところ天候が不順だ。冬が寒く、急に温かくなったのだが、また寒くなった。太陽の活動が弱まっているらしいがそのせいか。

05/12/土
土曜日だが下妻で講演がある。下妻ってどこだ。「下妻物語」という映画を見たことがあるが、どこにあるかは知らなかった。主催者からTX(つくばエキスプレス)と関東鉄道常総線の時刻表が送られてきたので、行き方はわかった。妻に秋葉原まで車で送ってもらう。TXに乗るのは初めて。10年ほど前、次男はつくばの研究所に勤務していた頃に何度か行ったことがある。その頃はTXはできていなかった。次男はそこで嫁さんを見つけた。嫁さんはつくばの大学にいたのでいまでも友だちがいて、以前、秋葉原まで車で送っていったことがある。つまり嫁さんはTXに乗ったことがある。ついにわたしもTXに乗ることになった。ただし、つくばの手前の守谷というところまで。ボックス席の窓際前向きの席に座れたので快適な旅。柏の葉キャンパスという駅にららぽーとがあるのでびっくり。守谷の駅ではお祭みたいなものをやっていた。そこで乗り換えて一両だけの気動車で下妻へ。2時間近くかかった。どこまでも平らな土地が続く。つくばとは筑波山を挟んで反対側になるらしい。息子がつくばにいた頃には、筑波山までドライブしたことがある。山頂から下妻の方を知らずに眺めていたのではないかと思う。90分の講演は、いつも大学の授業でやっているので慣れている。これが1時間とか、2時間とかだと、少し戸惑うのだが。講演を終え、来たときと逆のコースをたどる。帰りは北千住で半蔵門線に乗り換えたのだが、千代田線と日比谷線はあるのに、半蔵門線の表示がない。何と、東武とうきょうスカイツリーラインというのに乗るのだった。すべての乗り換えがぎりぎりセーフという感じで、時間を短縮できたので、2時間で池尻大橋に到達できた。しかし2時間だと、名古屋から帰るのと同じくらいだ。長い一日であった。

05/13/日
日曜は休み。本の箱詰め作業。別当の本を仕分けする。全集ものなどをまとめて仕分けたあとは、膨大な量の本の中から、必要なものを一冊ずつ抜き出していく。全集などで用意した箱はほぼ埋まっているので、あとはどうしても必要な本を一冊、また一冊とピックアップするだけだ。書庫は地下にもあるが、そこはまだ手をつけていない。本日の作業で先が見えてきた感じはする。

05/14/月
大学。本日は多忙だ。学生礼拝という行事で7分間、ありがたいお話をせよとの指示に、よりすぐりの「ありがたいお話」をする。それから武蔵野学というリレー形式の講座の当番が回ってきたので90分話す。ふだんやらない話なので少し緊張するがこの適度の緊張感が、気分の高揚をもたらす。自分の仕事は進まず。

05/15/火
大学の1限で講義をしたあと、市ヶ谷に。文藝家協会の総会。1時から常務理事会、総会の前半、理事補充委員会、理事会の後半、さらに新理事による理事会で理事長選挙をしたあと、お客様を招いて懇親会。著作権関係の人々を招待するので、わたしにとっては、例年、一番長い日なのだが、今年は大学の1限が加わったので、本当に長い日になった。

05/16/水
今日は休みだろうと思って、のんびりと目覚めたのだが、午後4時から教育NPOとの定期協議会があった。昨日の懇親会で話をしたのでとくに話すこともないのだが、定期協議だから仕方がない。出かける前にメールでかなりの量の仕事をした。これは公用に類する仕事。本日は自分の仕事がまったくできなかった。

05/17/木
木曜日は3コマある日。3年、4年、大学院のゼミがある。3コマぶっ続けだと疲れるので、4年のゼミは雑談にしておく。学生たちに勝手にしゃべってもらう。学生たちの話には学ぶべきこともあるが、時として絶望的になる。ここから文学が生まれるのかと、少し心配になる。しかし自分が学生だった頃も、文壇では、若い作家がもう出てこないと絶望的になっていた。当時は内向の世代という40歳代の作家が「若手」ということになっていたのだ。だが、停滞していたのはその頃の30歳代にすぎなかった。やがて20歳代の作家が次々に現れた。わたしもその流れに乗ってプロの作家として活動するようになった。まあ、だから、何とかなるだろうという気はしている。

05/18/金
午前中は文部科学省でTPP説明会。午後は書協で検証委員会。あまり中身のない会議であったが、ひたひたとTPPの津波が押し寄せてくる感じがする。もしかしたら日本の文芸文化が滅びてしまうかもしれない。そういう危機感を覚えている作家はたぶんわたし一人だろう。まあ、最悪の状況にはならないだろうが、かなり困難な状況になる惧れはある。公用に関しては、できる限りのことをするというスタンスで臨みたい。私的領域では、書きたいものを書くといういままでどおりのやり方でやりたいと思っている。TPPそのものに反対するつもりはない。試練に耐えるということも時には必要だ。

05/19/土
土曜は休み。荷物を作る。本日でほぼ完了。これから大学、および運送屋と交渉して、引っ越しの日取りを決定する。

05/20/日
コーラス。4月のコンサート以来の練習。難曲を仕上げたあとなので、本日は歌い慣れた曲をのんびり歌う。二次会ものんびりムード。いつもより多めに飲んだ。

05/21/月
大学。いつも月曜日は1限の1コマだけなのだが、輪番制の1年生ゼミの順番が回ってきた。この時間は2コマぶっ続けなので疲れる。それから続けて教授会があるので疲れが倍加する。ああ、疲れた。金環日食、朝、自宅を出る前に確認した。雲があった雲の切れ目から、完全に輪になった太陽を見ることができた。だからどうだということはないのだが、まあ、見られてよかった。

05/22/火
大学。研究室の書架の棚の位置を調節する。荷造りが終わったのでいよいよ本を運び込むことになる。すべての本を書架に並べることはたぶん無理なので、箱を積み上げるスペースも用意しておく。本日はすっごく寒い。で、明日は暑いのだそうだ。還暦を過ぎた身にはこの温度差は体にこたえる。

05/23/水
先週はハードな日々だったが、今週は休みが多い。のんびりと水曜日の休日をすごす。

05/23/水
先週はハードなスケジュールだったが、今週は水曜は休み。週の真ん中が休みだと気分的に寛ぐことができる。書きかけの短篇、枚数は予定のところまで来た。ストーリーのある話ではないので、あとは適当にエンディングをまとめればいい。

05/24/木
大学の研究室に着いて、とりあえず書きかけの仕事をプリントする。とりあえずこれに赤字を入れていって、通読してからエンディングを考える。木曜は午後からだが、夜間の大学院まで3コマ連続のハードワークだ。何とかきりぬける。自宅に帰って赤字を入れる作業。担当編集者からメールが届き、明日、『超自分史』のゲラが届くとのこと。ということは明日中に短篇を仕上げてしまわなければならない。

05/25/金
日本点字図書館。評議員会が早く終わって、次の理事会まで2時間のタイムラグ。しかしわたしにとっては好都合だ。ルノアールでプリントチェック。すでに半分近くはチェックを終えていたので、一気に完了して、エンディングも書き込んだ。これで夜中に入力すれば作業は終わりだ。理事会は議長を担当。議長だと考え事とか内職ができない。プリントチェックが終わっていたので、気楽に議長をつとめることができた。

05/26/土
『文芸思潮』の原稿をメールで送る。明日が締切なので予定通り。妻と渋谷まで散歩。『超自分史』のゲラ、読み始める。序章はまったく直しがない。小説ではないので、こんな感じで最後まで行けるのではないかと思う。

05/27/日
日曜日。のんびりとすごす。久々に北沢川の散歩。あとはゲラを少し。

05/28/月
大学。3コマに加えて昼休みに学生が相談に来たので相手をする。学科会がないので早く自宅に帰れた。『日本の世界遺産』という雑誌に原稿を書く約束をしていたのをコロッと忘れていた。2枚なのですぐに書く。月曜と火曜は1限から授業があるので早起きになるが、寝る時間を急に早くすることはできないので、睡眠時間が不足気味になる。水曜からはふつうの時間(午前10時くらいに起床)に戻るので体調も戻るだろう。

05/29/火
大学。火曜日は1限の1コマだけ。学生たちは熱心に話を聞いてくれる。いつもは昼過ぎまで研究室で仕事をしているのだが、雷雨が来るというので早めに自宅に帰る。何だかのんびりしてしまった。休日みたいな気分だ。やっぱり研究室で仕事をやればよかった。

05/30/水
水曜日は大学がない。ここに休みがあると助かるのだが、そうもいかない。午後に2つ公用が入っている。国会議員の勉強会。4回目なのだが、今日初めてきた人もいて、議論がフリダシに戻りそうになった。仕方がないのでわたしが発言して、最初から説明した。ご理解を得られたようだ。とにかく方向性は定まった。一時はすべてがご破算になりそうだったので、いささか困惑したが、こういう時は瞬時の軌道修正が必要だ。この会議の場所は参議院会館で、次の会議は国会図書館。交差点を斜めに渡るだけの至近距離だ。交差点で会議に同席していた国会図書館の館長と肩を並べることになった。立ち話をするうちに館長室に招かれたので、次の会議が始まるまで雑談した。こういう雑談が実に有効だ。必要なことを全部話せた。アキ時間に仕事ができるかと、ゲラをもって出たのだが、結局、自分の仕事はまったくできなかった。

05/31/木
大学。3コマ。疲れたなあ。明日も公用がある。しかし木曜は午後からの授業で早起きしなくていいので、夜中に仕事ができる。これで5月も終わり。今月は多忙だった。公用が集中した。著作権関係の会議が目白押しだった。なーんか、自分の仕事があまり進まなかったなあ。来月はがんばろう。



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