「月の西行」創作ノート5

2008年2月

2月 1月に戻る 3月に進む
02/01
深沢中学で講演。去年広島で講演した時は生徒や父母も集まって体育館で話したのだが、本日は大人だけ。ターゲットがしぼれるので話しやすかったし、聞き手の反応もよかった。往路は妻の運転で行った。帰りはバス。バスでも20分で三宿のバス停に着いた。近いところの講演はラクだ。4日の連続のハードスケジュールの3日目。明日が最大の山だ。

02/02
早朝に起きてNHKラジオに生出演。受付の女性もいなくて守衛さんがいた。こんなに早い時間にNHKに行くのも初めて。残間里江子さんと上田アナウンサーのトークのまざるだけなので、話そのものは即興でいい。とにかく起きてNHKに体を運ぶのが仕事。タクシーで自宅に帰ると4日間の疲れがドッと出た感じ。2月になったせいか花粉の影響が出だした感じもする。というか、やっぱり疲れが出たのだろう。とにかくハードな4日間を乗り切った。嬉しい。

02/03
日曜。ハードな4日間が終わり、昨日は疲れがドッと出て、昏倒するみたいに眠ってしまった。本日は雪。軽い散歩だけであとはひたすら「西行」に没頭する。西行が待賢門院璋子の御所に配備されてから、璋子と親しくなるまでのプロセスがこの作品の山場で、その頂点までのプロセスを書いてきたのだが、何か流れがよくない気がして、第2章のはじめからチェックを続けてきた。璋子の御所の法金剛院の伽藍配置が明確でなかったので、そのあたりの文章にも揺れがあったのだが、いちおう自分なりに寺の配置を考えて、揺れをチェックしつつ、璋子と西行がしだいに親しくなっていくプロセスを確認。微妙な修正で流れがよくなった。明日からは新たな領域に進める。
しかし明日はスーパーボウルだ。これは今年最大のイベントだから見ないわけにはいかない。今シーズンはペイトリオッツがあまりに強い(何しろ全勝)ので、スーパーボウルは面白くないと思っていた。ペイトリオッツに勝つとすれば同じカンファレンスのスティーラーズかコルツだろうと思っていたのだが、2チームともペイトリオッツと対戦する前に負けてしまった。しかし、思いがけずジャイアンツがダークホースとして出てきた。マニング弟がいるジャイアンツは以前から注目していたのだが、今シーズンのはじめは負けてばかりだった。マニング弟はプレッシャーら弱く、インターセプトを連発していた。それでも兄弟対決という夢があったので、ジャイアンツを応援していたのだが、シーズンの最終戦、ペイトリオッツが全勝を決めた試合で3点差まで迫ったのがマニング弟のジャイアンツだった。この試合、マニング弟は4タッチダウンをあげ、しかもインターセプトはゼロ。それ以後のプレーオフ3試合でもマニング弟はインターセプトを一度もされていない。人が変わってしまった。パニックにならなくなったのだ。怖さや不安がふっきれたのだろう。こうなるとペイトン・マニングの弟なのだから才能はあるはずで、ペイトリオッツとの再対決が楽しみだ。
予想をしても仕方がないが、期待としてはジャイアンツの奇跡の勝利を願っている。NFCは昔は圧倒的に強かったのだが、このところは弱くなった。カウボウイズでもパッカーズでもペイトリオッツには歯が立たないと思っていたのだが、唯一可能性があるとすればジャイアンツの奇跡だと、プレーオフ前から期待していたのだが、そのとおりになった。奇跡を見たい。ジャイアンツに勝ってほしい。この試合はボストンとニューヨークの対決でもある。わたしはニューヨークに行ったことがないのだが、何となくニューヨークが好きだ。

02/04
奇跡というものがたまには起こるものだということを実感した。ニューヨーク・ジャイアンツが勝った。レギューラーシーズン16戦全勝のペイトリオッツに対し、ジャイアンツは序列5位のワイルドカードでの出場。あらゆる成績でペイトリオッツが圧倒していたにもかかわらず、ジャイアンツが勝った。しかし試合の展開は胃の痛くなるようなものであった。試合開始直後に10分以上かけて3点とるまではジャイアンツのペースだったが、結局フィールドゴールに終わってしまい、直後にあっさりとタッチダウンを許した。その後は両チームのディフェンスが互いにがんばって点が入らずそのまま終盤になった。最終クォーターに入ってジャイアンツが初タッチダウンを挙げたものの、ペイトリオッツのブレイディーのショートパスがじりじりと決まりだして、再逆転のタッチダウンがスタープレーヤーのモスに決まった時は、残り時間が2分ほど。スタープレーヤーの逆転タッチダウンという絵に描いたようなシナリオで、ペイトリオッツの全勝制覇が決まったと思われたのだが、そこから奇跡が起こった。自陣でのサードダウン残り5ヤードの難しい状況で、マニング弟が相手ディフェンスの密集に呑み込まれた時は、これでもう試合は終わりと思われたのだが、何がどうなったのかよくわからないまま、マニング弟がその中から抜け出し、シャツを引っぱられながら投げたヘイルメアリーのようなパスが通って敵陣に攻め込み、最後も奇跡のようなタッチダウンパスが決まった。どうしてこんなことが起こるのかというような大逆転だった。キャプテン翼でスラムダンクでも起こらないような非現実的なゲームであった。わたしはジャイアンツ・ファンであるからよかったが、ペイトリオッツのファンにとっては悪夢だろう。
朝8時に目覚ましをかけておいたのだが、屋根から雪が落ちる音で目が覚めた。さわやかというわけではないが、目覚ましで起こされるよりはましかという寝覚めだった。大邸宅?なので雪が降ると屋根に大量に雪が積もる。昔、犬を飼っていた時、最初はベランダで飼っていたのだが、屋根から雪が落下するのに驚いて、それっきり部屋の中に居ついてしまった。雪崩のような音が昨夜から続いている。空は快晴。爽やかな一日だ。
さっき「何がどうなったかよくわからない」と書いたマニング弟の密集からの脱出は、ネットの映像で見ると、ほぼまっすぐ後ろに逃げたようだ。ペイトリオッツのディフェンスは人数がいたので安心してしまって、ホールドが甘かったのではないか。それにしてもエンドゾーン近くに後退してからヘイルメイリーのような山なりをパスをキャッチしたタイリーとかいうレシーバーがバンザイの格好で倒されたのにボールを離さなかったのは奇跡に近い。このレシーバーは、バレス、トゥーマー、スミスの次の4番目のレシーバーだが、タッチダウンレシーブも1つ決めている。ショットガンで4人レシーバーを出す時も1人はタイトエンドのボスだから、4番目のレシーバーはふだんは出番がない。スミスよりも背が高いので起用されたのか。このタイリーの奇跡のキャッチが勝敗の分かれ目だったように思える。

02/05
何事もなし。今月は木曜にテレビがあるだけで雑文の締切もない。恋愛小説のピークともいえる部分を通過したので、ここから先は歴史小説として展開することになる。恋愛の余韻のような悲しい別れがあるが、それはものすごいスピードで流れていく歴史的時間の中で語られないといけない。ここがふつうの恋愛小説と違うところで、ヒロインが死んでもまだ歴史は続いているのだ。不幸な運命によって自分が産んだ二人の皇子(崇徳院と後白河帝)が保元の乱で敵味方として闘うことになる。これがヒロインの最大の不幸になるのだが、本人はもう亡くなっている。すべては残された西行の心のうちのドラマということになる。

02/06
また雪。書くスピードが出ている。恋愛ドラマが終わって歴史の領域に入っているので当然だ。しかしアラスジだけにならないように要所で西行の心理を描かないといけない。ようやく少しは先が見えてきた。今月末に草稿完了というゴールは、時間との闘いになるが、何日かの遅れはあってもとにかくゴールに到達できそうな気がしてきた。

02/07
妻の運転でNHK。先週はラジオだったが今回はテレビ。年に一回くらい出演している「ブックレビュー」という番組。手順は慣れているので問題ない。本を5冊読まないといけないのだが、以前「空海」を出した時は特集で取り上げてもらい、9刷まで出た。そういえば「天気の好い日は小説を書こう」を出した時も夫馬素彦さんがこの番組で紹介してくださったのがヒットのきっかけになった。ということで、責任をもって本を紹介しないといけない。今回の一押しは中上健次の伝記「エレクトラ」という本。懐かしい中上さんの思い出がいっぱいつまっている(放送は今週末の日曜日の朝と深夜)。さて、執筆中の「西行」はピッチが上がっているのだが、上げすぎるとアラスジだけになるので要所を押さえないといけない。ここまでの西行はずっと受け身で来た。このあたりで展開が必要だ。これはやや難しい手続きで、主人公の内面をしっかりと追いかけないといけない。

02/08
今週は昨日のテレビ出演だけだったが、テレビに出るとなると体調を整えなければならずややプレッシャーがあった。本日はのんびりと休養したいところで、イケアに家具を見に行くという妻につきあった。第三京浜で港北インター。意外と短時間で着いた。妻はバルセロナのイケアで長男夫婦の買い物につきあってえらい目にあったという体験がある。それは妻だけがスペインに行った時の話でわたしは体験していないが、イケアという広大な家具店があることは頭にインプットされた。そのイケアが横浜にできたということで、とにかく行ってみることにした。秋に長島温泉のアウトレットで妻が買い物をしている間にアイデアが生まれたことがあるのでいちおうメモはもっていった。買い物をする妻のうしろをカートを押してついていきながら、わずかな隙にメモをとった。すごいアイデアがひらめいたのだが、5分か10分の間だし、夢の中で見たアイデアはつかいものにならないことが多い。しかし帰って文章化してみると、けっこう使えるアイデアであった。イケアはいいところだ。

02/09
土曜日。寒い。昨日イケアで書いたメモは意外に重要なことが書いてあったので慎重にふくらませながら入力している。そろそろ雑文の締切も考えないといけないが、いま重要なところにさしかかっているのであと数日「西行」に集中したい。
02/10
日曜日。雪はつもらなかった。前に降った雪がベランダに落ちたまま根雪になっているのだが。ひたすら「西行」。主人公のキャラクーを練り直したい。ここまでずっと受け身できたのだが、もう少し行動的にできないかと思う。最初から読み返している。

02/11
月曜日だが祝日。何の祝日だ? 主人公のキャラクターを練り直すために最初から読み返すことにした。ヒロインとの死別を書くにあたってキャラクターを最終的に確定する必要がある。そこが終わればあとはやや長いエピローグのような感じになる。

02/12
ジャスラックで打ち合わせ。いつも徒歩で行くのだが今日は雨なので妻に送ってもらった。帰りは徒歩。車で来たのと同じ道を歩いて帰るのは何となく疲れる感じがした。主人公のキャラクターの見直し。徐々に進んでいる。何度も読み返すのは大変だが、この作業でキャラクターが深い部分まで確定できればあっとはエンディングまで一気に進むことができる。

02/13
重要なところに来ている気がするのだが、本日は雑文の日。それでも「西行」も少し進んだ。

02/14
問題のあった前半部の修復をほぼ終えたのだが、念のために後半のチェックも続ける。うまくいっているとは思うのだが、読者がどもまでフォローできるか。歴史小説というのは読者のイマジネーションに頼るところが大きいので、やや不安が残る。もっと読者の負担を軽くすべきだとは思うが、歴史の説明をすべて排除してしまうとわけがわからなくなるので、まあ、このあたりかというところで話を展開している。

02/15
以前からワードが時々フリーズする。その時に何か表示が出るのでとりあえずオーケーのボタンを押していたのだが、よく見ると解決法があるらしいので、そちらの方を参照してみると、ネットにつなげという指示で、つないで見るとソフトの修復ができるということで、やってみたら、ATOKが出てこなくなった。わたしはワードを一太郎のATOK変換で使っていてキーボードの配置なども自分流に変えているのでATOKが使えないというのは困った事態だ。10分くらい試行錯誤してようやくもとの状態に戻せた。で、ワードに何か変化が起こったことはわかったが、改善されているかどうかはしばらく使ってみないとわからない。夜は下北沢で講演。小さな集まりだが話すことは同じ。聴衆との距離が近いので楽しかった。

02/16
土曜日。コーラス。練習場は北野だが、わたし以外は全員がめじろ台の人なので本日は二次会はめじろ台。ところがどういうわけか駅前の飲み屋がすべて満杯。バーミアンならすいているはずだが、などと言いながら、一番混んでいそうな料理屋に念のために行ってみるとちょうど客が帰ったあとでテーブルが一つだけあいていた。軽く飲んで帰る。夜中も仕事ができた。

02/17
日曜日。ダイニングルームにテレビを載せる台がほしいと妻が前から言っていたのだが、ぴったりのものがネットに出ていたというので実物を見に行く。目黒川沿いで歩いても25分くらいで行けるところ。以前はサイドボードがあったのだが圧迫感があるので物置に撤去していた。サイドボードの下半分だけのようなものを探していたのだ。「西行」はまだ主人公の内面のチェック。ストーリーと内面とがシンクロしているか、読者にどうように伝わるかをチェックしている。いま『文蔵』というPHPの月刊誌に「プロを目指す文章術」という連載をしている。今月が連載の最終回だが、もうゲラを送ってきた。最初から読み返して最終回を書けということか。連載が終わったらすぐ本を出すということらしい。「西行」も佳境に入っているので並行して作業を進めることになる。

02/18
冒頭からの読み直しの作業、第2章まで完了。さてここからだ。昨日買ったサイドボード届く。少しはみだすのではと心配したのだがぴったり収まった。しかし見慣れぬ家具があると何となく落ち着かない。慣れるまで数日はかかるのではないか。どうでもいいことだが、古い写真を探す必要があってデスクトップのパソコンを起動した。このノートでも書いたように去年の暮れにネット通信ができなくなった。三ヶ日の仕事場では小説を書くのに使っているノートパソコンでメールを送っているのでその後もノートパソコンを使っていたが、次男の嫁さんのアドバイスでデスクトップの通信機能も修復できた。だからメールも遅れるのだが、ノートパソコンでメールを送ることに慣れたし、このホームページのファイルもノートパソコンから送るようになったのでデスクトップはまったく使わなくなった。久しぶりに起動すると、何となくデスクトップちゃんがすねているような感じがする。機会ではいってもつきあいが長いので生き物のような気がする。

02/19
ひたすら「西行」。第3章に突入。この章の終わりにヒロインが亡くなって、第4章は長いエピローグという感じになる。このエピローグはテンポを変えて書く。アラスジになるのをいとわずに歴史的な展開を圧縮するだけでいいと思っている。ヒロインが亡くなっているので盛り上げようがない。しかしその後の歴史を描かないとヒロインの人生の意味が見えてこない。ここが歴史小説の難しさと面白さだ。中心人物がいなくなっても、その後に歴史的に評価される場合がある。西行はまさにそういう人物だし待賢門院璋子の場合も同様である。

02/20
文化庁で短い打ち合わせ。渋谷から歩いて散歩を補う。しかし考えてみると夜も出かけることになっていたのだった。メンデ協会理事会。仕事あまり進まず。

02/21
朝7時50分から岸田国務大臣を囲む朝食会。何だこの会議は? ホテルオークラの朝食をいただき、参加者は各3分ずつの発言を求められる。3分では何も語れないが、とにかく保護期間延長を訴え、データベースの整備や裁定制度の簡略化には資金と人手が必要なことを指摘した。必要なことだけを述べたのでかえって効果的だったかもしれない。帰りは急行に乗ったので三軒茶屋から帰ったが午前中の陽射しを浴びた街の様子がふだんとは違って見えた。自宅に帰ってもまだ朝の10時だ。たっぷり仕事ができる。それにしても一日が長い。冒頭からのチェックが終わり、ようやく先に進める。ここまで主人公の心理の動きをチェックしてきたが、ここに到るまですべてがうまくいっている。多少の修正はしたがこれで大丈夫だ。ここからヒロインの死まで一気に進み、その後のエピローグはスピードを上げて語りたい。少しはゴールらしきものが見えてきた気がする。

02/22
本日から妻が大阪(正確に言えば兵庫県だが)の実家に帰った。そのせいでもないだろうが今日は集中力があった。昨日でこれまでのチェックを終え、西行と璋子が対話をしている場面に戻った。この場面の二人の心理が見えてこなかったので最初からチェックしたのだ。そのおかげで二人の立場が明確になったのでやや強引だがそのことを説明でまとめて、この場面を打ち切ることにした。状況設定とキャラクターが確立されたので、ここから先はストーリーに加速度をつけて一気にエンディングに突入したい。まだ第3章の半ばだがこの章の終わりに一つのピークを設定して、第4章はやや長いエピローグということになる。ここには材料がいっぱいあるので、場面ごとにイメージを鮮明にしながらテンポよく歴史を語っていく。ヒロインの死のあとで保元の乱が起こるのだが、この過程がヒロインの存在の意味にかかわるのでここを書かないわけにはいかない。ただ三部作にする構想もあるので(第1作が売れなければ撤退する)、あまりぶあつい本にしたくない。第4章という長さの範囲内で書けるだけの歴史を書き、もれた部分は次作で振り返るということにしたい。PHPの連載の最終回も半分以上は書いた。あとは最後のまとめをキリッと書いて終わりたい。

02/23
土曜日。PHPの連載の最終回、完了。ピシッと追われた。妻がいないのでコンビニで弁当を買う必要がある。本日は昼は南風、夕方から北風になるという予報なので早めに散歩に出たのだが、2時半の時点で竜巻のような突風。タイヤ屋のタイヤが道にごろごろころがり出てきた。危なくタイヤに轢かれるところだった。土埃が舞い上がりまるで北京みたいだ。あとはひたすら仕事。西行の出家。ここが一つの山になるかと思っていたのだが、登場人物のキャラクターが充実しているので、自然な流れで出家に到った。ここまで来ると、人物がひとりでに動きだして、作者はただ眺めているだけでよくなる。

02/24
日曜日。ひたすら仕事。西行が妻と娘と別れる場面。ここは西行にまつわる伝説では山場で、慕い寄る四歳の娘を突き放すシーンが印象的なのだが、わたしの西行はそこまではしない。ただ心の中に冷たいものがある。このままで西行のイメージが悪くなるので、少しタイムラグを置いて娘への思いを盛り上げ、西行が涙を流すシーンを入れることにする。涙を多用するのは邪道だが、一回くらいは泣いてもいいだろう。ちなみに空海は一度も泣かない。そういうキャラクターではないからだ。日蓮は何度か泣く。腰巻のコピーもセンチメンタルなものになっているが、日蓮は大衆運動家なのでそういう面を見せておかないといけない。西行は受け身の人間ではあるのだが、時として感情が爆発することがある。そこを大げさにならないようにさらっと展開したい。

02/25
月曜日。妻が帰ってきた。また日常が始まる。ただし小説の方はオートマチックに動いているので、妻の相手をしているゆとりがない。西行が出家したことをヒロインに告げにいく。ここでも山場があるかと思っていたのだが、何もない。するっと場面が進む。そうでない可能性も考えたが、流れができているので自然の流れに任せることにした。もう作者が無理にコントロールする必要のない状況になっている。登場人物のキャラクターを設定しおえたので、あとは人物たちが自動的に動いていく。

02/26
明日からまた公用が始まるので、一日フルに仕事ができるのは本日まで。ただしばらく雑文がないので「西行」に集中できる。出家した西行と待賢門院との会話もさらっと終わり、ここからは長大なエピローグになる。ただものすごく複雑な状況をテンポよく語らないといけないので調整に手間取るだろう。あと一箇所、ヒロインの死のシーンを描かないといけないが、そこもテンポよく語りたい。

02/27
文化庁著作権分科会。今シーズンの第1回。表参道の青山フロラシオンなので近い。帰りは徒歩でと思っていたのだが花粉が舞っていそうなのでやめ。あとはひたすら仕事。もはや長いエピローグ状態になっているのだが、あんまり駆け足になってもいけないので、重要なシーンはしっかり描いてメリハリをつけたい。

02/28
本日はアーカイブ委員会。新しい文化庁というか、元に戻った文化庁に行くのは3回目なのだが、今日は少し早く着いたので、いつも入る旧館の入口ではなく、虎ノ門の角の方に行ってみたら、屋外エスカレーターがあってその上が広大なテラスになっていた。去年の9月にパンプローナで孫2号のバギーを押しながら時間をつぶした美術館前のテラスを思い出した。感じが似ているというだけのことだが。日本の広場にしては人間が少ない。お役所と霞ヶ関ビルにつながっているだけだから、遊びで来る人がいないのだろう。文化庁も本来はこのテラスの方から入るもののようで、そこで思い当たることがあった。会議に参加者が入館証みたいな書類をもっているのに、わたしだけそんなものをもっていない。正規の入口でないところから入ったせいのようだ。
本日の会議はめずらしく紛糾した。図書館が便利になるという話なのだが、出版社は図書館が便利になることに恐怖感をもっているから、そこで話がストップしてしまう。むしろ不便になるということを強調しないと話が前に進まないのではないか。たとえば紙の書籍のページをデジタル写真に撮る。図書館ではディスプレイでその写真を見ることになる。以前のように手にとって本を読むことはできない。その「不便さ」を強調すれば出版社は安心するはずだ。
さて進行中の西行はヒロインが出家した。ここからは大きなドラマはない。ただテンポよく歴史を語っていくだけだが、西行の仏教観を示す必要があるので、読者に負担をかけない程度に法華経のことも語らないといけない。今様と法華経は深いつながりをもっている。これがこの作品の核だと考えている。もちろん恋愛小説なのだが、ただの恋愛小説ではない。宗教的哲学的恋愛小説というわたしにしか書けないものを目指している。

02/29
今年は閏年である。2月が1日長いというのは、サラリーマンの人にとっては損した気分だろうが、公用の多いわたしにとっては負担である。本日は午後ジャスラックで会議、夜、著作権関連の打ち合わせがあって、自分の時間が少なかったが、ちゃんと夜中は仕事。よくがんばっている。


次の創作ノート(3月)へ進む 1月へ戻る

ホームページに戻る