●「妖怪ハンター」
●諸星大二郎
●ジャンプスーパーコミックス
●全1巻
●集英社
●「妖怪ハンター」「生物都市」

(C)Daijiro Morohoshi

単行本の初版が1978年ですから「少年ジャンプ」に連載されていたのは、もう20年以上前になります。諸星先生の作品との出会いは手塚賞を受賞した「生物都市」、そして初の連載となったこの「妖怪ハンター」でした。「生物都市」は良質のSF作品という印象でしたが、私にはそれほどインパクトがあったわけではありません。やはり作家“諸星大二郎”を意識したのは「妖怪ハンター」です。この本には「黒い探求者」「赤いくちびる」「生命の木」「闇の中の仮面の顔」「死人帰り」の5作品が収録されています。それぞれを簡単に紹介しましょう。

●黒い探求者● 稗田礼二郎という特異なキャラクター(少年誌では受けそうもない)を語り部にして始まった「妖怪ハンター」シリーズの1作目。映画やアニメにもなった代表作です。
妖怪の実在を研究論文で説き、学会を追放になった考古学者・稗田礼二郎は、一通の手紙に惹かれて九州にある比留子の里へと足を運んだ。そこには、彼の論文を証明できるかもしれない古墳があった。比留子古墳である。手紙の差出人は、矢部まさおという村の少年で、郷土史家だった彼の父親が、1カ月前に比留子古墳の石室内で頭部を失う変死を遂げた。その死が父親の研究に何か関係しているのではないかと、父の資料にあった稗田の論文を見て連絡をとってきたのだ。まさおの父親の死によって、古い事件を思い出し、おびえる村人たち。非協力的なまさおの祖母。そして稗田を見張るかのような不気味な影。ひとつひとつ謎を解いていく稗田とまさおは、比留子古墳の驚くべき真相を知ることになるのだが……。

●赤いくちびる● 変死、首吊り、殺人、飛び降り、生徒たちの血なまぐさい事件が続く中学校。その事件の裏には血のように赤い唇をした少女の存在があった。
優等生の月島令子は、学校帰りに不良グループにからまれる。次の日、令子は前日までの彼女からは想像もできない真っ赤な唇で登校し、学校中の生徒はおろか、教師たちまでをその支配化においていく。令子を害する人間は、令子の言葉通りに死んでいくのである。その赤い唇の魔力に抗えずに。
シリーズ中でも恐ろしさでは一番の作品だと思います。特に、雑誌で読んだときが怖かった。質の悪い漫画誌の紙と、諸星先生の絵柄とが相まって恐怖を煽っていたのかも。「デビルマン」(永井豪)以来の恐怖でした。

●生命の木● 傑作。クライマックスの善次の言葉である「みんな、ぱらいそさ、いくだ」は、仲間内で合言葉になっていたくらいです(って何のことだ?)。
東北の山奥に、かつて隠れキリシタンの里だった小村がある。近くの村人たちから「はなれ」と呼ばれているその村で、善次という男が亡くなった。彼の死体は、骨山という隠れキリシタンたちの聖地だった丘で発見されたのだが、村の牧師は彼の死について何かを隠している様子。隠れキリシタンに伝わる「世界開始の科の御伝え」という聖典に興味を持って村を訪れた青年は、牧師の案内で「はなれ」へと足を踏み入れた。村では重太という男と稗田礼二郎と名乗るよそ者を残して、全ての村人がどこかへ姿を消していた。村人たちは、どこに消えたのか? 「世界開始の科の御伝え」に記された人類の祖「あだん」と「じゅすへる」とは? 奇想天外な世界創生の物語が幕を開ける。

●闇の中の仮面の顔● 11ページの小作品。後の「オンゴロの仮面」シリーズの面影があります。

●死人帰り● 禁断の秘術、反魂の法…。それは犯しては行けないタブーだった。
ぼくの死んだはずのパパが生きている。しかし、何かが変だ。町も変だ。死んだはずの人が歩いていたり、学校が溶けちゃったり。恐ろしいことが起こる前触れかもしれない…。
この作品からは、ラヴクラフトの小説が思い出されます。異界からの侵略者たちの恐怖を感じてください。

「妖怪ハンター」シリーズは、「海竜祭の夜・妖怪ハンター」(ジャンプスーパーコミックス/A5版)、「妖怪ハンター・黄泉からの声」「妖怪ハンター・六福神」(ヤングジャンプコミックス)が出ています。ここに紹介した以降の作品も数多くあるので、興味がわいた方はぜひご覧になってください。最近出版している「西遊妖猿伝」の復刻も加筆が多くわかりやすくなったと聞きました。こちらもオススメ。


諸星大二郎(もろほし・だいじろう)

デビュー作/「不安の立像」
白白白白白白(これ以前にCOMで掲載されたものがあるようですが無視しました)
主な掲載誌/「少年ジャンプ」「ヤング・ジャンプ」「ネムキ」等多数
主な作品等/「妖怪ハンター」「暗黒神話」「孔子暗黒伝」
白白白白白白「西遊妖猿伝」「オンゴロの仮面」「栞と紙魚子シリーズ」等多数
現在の活動/最新刊は「栞と紙魚子・殺戮詩集」朝日ソノラマ(2000.1.30)
白白白白白白「西遊妖猿伝」15巻 潮出版社(2000.2)も出てます。


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