●「ご近所の博物誌」
●わかつきめぐみ
●ジェッツ・コミックス
●全1巻
●白泉社

(C)Megumi Wakatsuki

わかつきめぐみ先生といえば、その個性的な作風とかわいらしい絵柄で多くのファンがいる漫画家さんです。デビューの頃は、いかにLaLaという感じの絵柄でしたが、瞬く間に独自の雰囲気をつかんでしまって「So What?」では、SF仕立ての不思議なファンタジーを描き、ブレイクしました。最近は、出る本全てがA5判という、固定ファンに支えられた作家さんになってしまったようなのは、ちょっと残念です。

「ご近所の博物誌」というのは比較的新しく、すでにわかつきワールドが確立してからの作品です。わかつき先生の作品に多く登場する“変わり者”である都から来た博物学者のニ羽(にわ)さん。両親を亡くし村長の世話になっているいたずら者の三稜(みくり)くん。貧乏蔓に住みついた食いしん坊の木ねずみ(?)キキ。このふたりと一匹が織り成すハートフルファンタジーです。毎回登場する様々な動植物に対する二羽さんや三稜くんの対応が笑えます。そして、三稜くんに捕まった時に見せるキキのきゅーきゅーと鳴く表情が愛らしくて好きです。二羽さんにお腹の皮を引っ張られて、怒っている時の後ろ頭もいいですね。登場人物である村人たちも良い人ばかりで、わかつきワールドだなあと納得してしまいます。

この作品からは、わかつき先生の植物や動物に対する愛情が強く感じられます。貧乏蔓に我が家を占領されても嬉々としている二羽さん。怖い伝承のあるクラガリダケを、おいしい食用キノコと知って密かに山へ採りに行く村人たち。人間たちの都合で切られてしまうワタリギの話に涙する三稜くん。各エピソードを読んでいると、自分の中にある優しい気持ちが表に出てくるような気がします。
各話の間に差し込まれた「閑話休題」というタイトルのコラムも、やっぱり楽しい植物の話です。最近ちょっとイライラしてるとか、ストレスが溜まっているなんて方は、わかつきめぐみ先生の作品でも読んでみてはいかがでしょうか?


わかつきめぐみ(わかつき・めぐみ)

デビュー作/「春咲きハプニング」1982年
主な掲載誌/「LaLa」
主な作品等/「パステルトーン通信」「月は東に日は西に」「So What?」
白白白白白白「きんぎんすなご」
現在の活動/最近は講談社で描かれているようです。
白白白白白白最新刊は「言の葉遊学」白泉社(1999.11)


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