●「バナナブレッドのプディング」
●大島弓子
●セブンティーン・コミックス
●全1巻
●集英社

(C)Yumiko Ooshima

とっても難解な漫画。「バナナブレッドのプディング」には、そんな評価が多いようです。主人公である三浦衣良(いら)の特異な性格が、読者の共感を拒むのでしょうか? 大島先生の描く少女たちは、思春期の苛立ちを鋭角的に強調した性格を持つことが多く、三浦衣良はその最右翼を担うキャラクターでしょう。私がこの作品を読んだのは20歳前後の頃で、比較的容易に受け入れることができたのは「大島弓子の世界を楽しめる」という点で幸運だったといえます。

三浦衣良は「世間にうしろめたさを感じている男色家の男性」という理想の男性像を持つちょっと変な女子高生。強いシスターコンプレックスを持つ彼女は、姉の結婚話により血がフリーズドライ化するほどの恐怖を感じている(<本人談)。たまたま転校先で出会った幼馴染の御茶屋さえ子は、衣良の言動に不安を感じ、ボーイフレンドを紹介することにした。しかし、衣良の理想の男性は見つからず、さえ子が密かに思いを寄せていた奥上大地がホモであった事実にショックを受ける。結局、さえ子は兄の峠に一芝居うってもらい、衣良と付き合わせることにするが、それは二人の結婚へと話が進展してしまう。さらに、奥上のホモ相手である大学教授の新潟も巻き込み、人間関係はもつれにもつれてくのだが……。

子供の殻を破れずに苦しむ衣良に振りまわされ、自分自身を見つめることになる登場人物たち。その中で衣良は、徐々に峠に対する恋愛感情に気付いていきます。しかし、コンプレックスによる強い自己否定に苛まれる衣良は、峠に対して気持ちとは逆の行動を取らざるをえません。彼女が成長するためには、この苦しみを乗り越えなければならないわけです。人生で出会えるという「最高の素晴らしさ」を見つけるために。


大島弓子(おおしま・ゆみこ)

デビュー作/「ペルーの涙」1968年(週刊マーガレット春休み増刊)
主な掲載誌/「週間マーガレット」「週間少女コミック」「LaLa」
主な作品等/「綿の国星」「ロスト ハウス」など多数
現在の活動/「本の旅人」に連載中。最新刊は「雑草物語」角川書店(1999.11.10)
白白白白白白「からだの異常:病態生理学2」日本看護協会出版会(1999.12)など。

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