2月といえば学生時代は短い3学期を慌しく過ごす時期です。最終学年ならばなおさらで、卒業式や期末試験、さらに卒業後の進学やら就職やらの準備などと、その落ち着きのないことといったら相当なものがあります。本当だったら一緒に過ごしてきた仲間達と残り少なくなったそんな学園生活を、もっともっと充実させるために時間を使いたいのに、そんな感傷ムードに浸ることなど許してはもらえません。今までは日常的だった教室や校庭での何でも無い出来事が、数ヶ月後には2度と過ごせない過去の思い出になってしまう....、こんなことって幾つもあるのに、こんな「卒業」をきっかけとする別れは、他のどんな出来事よりもインパクトは大きいように思います。ユーミンといえば、冬場に新譜がリリースされることが長かったことから、どうしても冬のイメージになってしまいます。特にこの『Tears
and Reasons』はそんな印象の強いアルバムです。Ultra Audioという超バーチャル処理されたサウンドのためでしょうか、全体に冷たい印象を受けるのも、そう感じる理由の一つかもしれませんが、私の部屋の安いオーディオ・セットでも感じられるその立体音場は一聴の価値ありです。
さて、ユーミンがデビュー以来歌い続けているテーマの一つに「学園生活物」があります。このアルバムに収められている<冬の終わり>という曲では、思いを打ち明けられた彼に応えられなかった女の子の心境を歌っています。決して嫌いだったわけでは無いけれど、「何を綴ってもうそになりそう」なので「返事を出せずに月日は流れ」てしまい「卒業してしまった」などと...。「卒業」ってある意味では強制的にオール・キャンセル(リセット)する事のような気がします。世間から何の非難も受けることなく離れられる「卒業」という通過点を「ラッキー
! 」だなんて、口が裂けても言えませんよね。男の子の側からすれば結局振られちゃったひとになるのだけれど、これもまた「卒業」という口実があるものだから、それほど傷付くことも無く「(それなりに良い)思い出」になってしまう。そこまでの事を込めてこの曲が作られているとは思わないけれど、「卒業」って、「こんなこともあったなぁ...」という楽しくも哀しい思い出を作ってくれるものだと思います。
もうすぐそんな残酷な卒業式のシーズンです。そんな季節になると「冬の終わりの教室で...」なんてつい口ずさんでしまいます。テレビなどでは着慣れない袴にはしゃいでいる女子大生の姿が紹介されますが、そんな光景を見ていると、「この娘は就職できたのだろうか」とか「社会人としてちゃんとやっていけるのだろうか」などと余計な心配をしてしまいます。とりあえず何をしてこようが、一旦チャラになる「卒業」。そんな切り札はこれから一生使えないのだから、大切にしてほしいものです。
話は変わりますが、このアルバムのハイライトとも言えるラストナンバーの<Carry
On>という曲で聞けるMichael Landauのギターソロは特筆物。彼のワークスの中でも1・2を争う素晴らしい粘りのあるフレーズだと思います。AORな方、侮れませんよユーミンって(笑)。
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