「Mt. Fuji」....日本人の心にこれほど響く言葉は無いかもしれない。「Japan」などと謳わずとも日本を代表するものだと表現するのに最もふさわしい言葉だろう。そんなMt.
Fujiを冠したJazz Fes.が復活した。かつてバブリーだった頃には野外のこの手のフェスはあちらこちらで開催されていたが、野外コンサートという日本では馴染みの薄かった手法も飽きられ、さらには騒音問題、また一時に大勢の人が集まるということで会場周辺の混乱など様々な問題が起こり、さらにはバブル崩壊後のスポンサー企業の激減など、様々な要因で、この手のイベントは廃れていきます。
70年代の"Live Under the Sky"という名門Jazz Fes.も会場となっていた田園コロシアムの閉鎖とともに消え、中には地域興しイベントとしての性格をもちながら継続していったイベントもあったものの、いずれもオールジャパン...日本を代表するイベントとまでは成長することはありませんでした。86年に初めて開催されたこのMt.
Fuji Jazz Festivalも、Herbie Hancock、Art Blakey、Chick Coreaなどのモダン・ジャズ・シーンの大物を来日させて、いわゆるジャズ・ファンを楽しませていたけれど、時代の流れの中で96年にその幕を一旦閉じることとなります。
もともとこの手の音には興味の薄かった私には、実は何ら執着のあるイベントではなかったけれど、世紀も変わった今年、この「Mt.
Fuji」を冠したイベントが復活することを聞いた時には、正直嬉しかった。音楽ファンである以上、ジャンルが何であれシーンが盛り上がることが哀しいはずがない。ジャンルは問わずと言ってはみたものの、時代はJ-POP全盛。しかも男女問わずアイドル系が抜群に盛り上がり、一方でお子様R&Bが席捲し、その心根も理解されぬままに70〜80年代の音楽がもてはやされる時代に、大人の音楽ファンの居場所が見つからない。ここで便利だと感じたのは「Jazz」という言葉。この単語がついただけで子供は排除できる。しかも会場は富士の裾野となれば、基本的に可処分所得の額が小さいガキ共はやって来れないだろう。久し振りのオヤジとオバンの楽しめる場が実現する...そんな思いがした。
私が行ったのは8月11日、フェスの最終3日目。生憎と爽やかな夏空が広がる...という天候ではなかったものの、雨の心配もなく、絶好の野外コンサート日和といえるだろう。もともと正統ズージャ系は苦手な私には、この日のキャストではTom
ScottとD. Garfield、そしてTower of Powerあたりがお目当てということに。特にJeff
Porcaroトリビューと謳ったD. Garfieldのセッションには期待していた。今年から会場となったのは富士スピードウェイの駐車場。おっと目の付け所が抜群ですね。野外イベントで最も問題になるのは駐車場とトイレ。ここならいずれの設備も充実している。しかも当然当日はレースは無いので、広い敷地を自由に使えるというもの。連日の熱暑に見舞われた今年の日本列島。高原の空気はさぞ心地良かろうとの期待もあった。着けば期待とは裏腹に真夏の陽射しが照りつける、ある意味では野外コンサートらしい日和であった。それでもじきに雲が広がり気温というよりも湿度が下がって、実に心地よい風が吹き抜けていく。執着の無いステージの間は特設されたドリンク・コーナーでビールを飲みながらの一時を過ごす。野外コンサートなので音は十分に聞こえていて、うぅむ、何とも贅沢なビアガーデン状態か。旧知の仲間との再会もあって、充実の時間が流れていきました。
さて肝心のステージの内容をご紹介(^^;;)。Tom Scott Bandは、ドラムにJohn
RoBinsonが参加するL.A. Expressスペシャル。彼独特のプロウが富士の裾野に響き渡る。会場にはTomをお目当てとしたファンは少なかったように感じた。会場の客席は、正直1/3ほどしか埋まっていない。そんな中で前方10列、しかもその数分の1かもしれない彼のファンは、普段のクラブでのステージとはまた違ったTom本来のスケールの大きさに酔った。40年近い彼のキャリアは伊達じゃない。やはり彼は偉大なミュージシャンだった。お得意の<Rock
Island Rocket>で締めくくられたステージはわずか1時間たらずだったものの、それなりに納得のパフォーマンスでありました。
続くD. Garfieldのステージ。期待に胸が高まる。おやおや、ドラムは引続いてジョン・ロビ
かい?。まあ良いかと思いながらもステージは始まる。ギターはPaul Jackson
Jr.,。ベースはFreddie Washington。オープニングは彼のジェフ・トリビュート・アルバムに入っている<E
Minor Shuffle>。PJのギターの歪み方は半端じゃなく格好良いゾ(笑)。ただし、良しと思ったのは正直ここまで。後はTotoだとかBoz
ScaggsだとかSteely DanだとかのJeffが参加したセッションの曲をボーカル無しで演奏していく。きちっとアレンジしている訳でもなくソロ・バートだってパッせず、曲は耳馴染みのあるものばかりだったけれど、だからこそキチっと作ってくれないと、頭の中でボーカルを鳴らさないと一体曲のどこをやっているかが分からないという状態に不満が募っていく。後半になって「ここでスベシャル・ゲストを..」とのことで期待が膨らむと、おやTom
Scottが再び登場。確かにTomもJeffとは親交があっただろうけれど、さっき見たばかりのミュージャンを「特別ゲスト!」なんて紹介されても、正直白けてしまいました。パフォーマンスは確かに素晴らしかったけれど、何じゃこりゃって感じです。さすがに前10列のお客様のほとんどはノっていたようではありましたが、私なんかは座りこんじゃいましたよ...。あと白けさせた要因の一つに舞台袖のスタッフの姿。Tom
が出てきてシラけちゃったところに、袖にスタッフが鈴なりになって見に来ていて、しかも中にはデジカメやらデジタル・ビデオなりで撮影している人もいる。あと、音響だかカメラマンだか分からない妙なオヤジがステージ上をウロウロしていて、確かにミュージシャンの後ろを通ってはいたものの、やたらと目に付いてしまいしまた。あぁん、主旨は魅力的なのに、メンツだってそれなりなのに、実際がこんなのじゃ決してJeffも浮かばれないなぁって感じ。期待ハズレでした。
あと、ちゃんと見たステージはTower of Powerだけ(^^;;)。Peter FramptonはJazz
fes.には相応しくないかなと思いつつも、懐かしの大ヒット曲<Show Me The
Way>なんかが流れると、思わず腰が浮いてしまった私(笑)。外見はメチャクチャ老けたけれど、声はまだまだ現役で、当時と遜色が無いというと大袈裟だけど、当時を彷彿とさせるものは確かにありました。きっと彼もずっと好きで音楽続けていたんでしょうね。賞賛の拍手を送りましょう(^^)。
で、最後に控えし最強のファンク・バンドのTOP!。皆さんご存知のようにベースのロッコが肝臓移植手術を受けるということで、当然のように不参加。途中で手術のための資金援助の呼びかけや募金活動なども行われていました。後で分かったことですが、実はロッコの手術は7月23日には終わっていました。にもかかわらず当日の支援協力の呼びかけでは、そのことは少なくとも私には伝わってきませんでした。「困っているから助けて..」と呼びかけているだけでは俄かヒューマニズムの押し売りです。術後の費用も相当なものとなるだけに継続した支援活動が必要になるのは理解できますが、疑問の残る姿勢であったと言わざるをえません。募金を呼びかけたのなら、その呼びかけたのと同じだけの労力を使って結果を報告する義務があると私は思っています。果たして今回の主催者でもあるNTVは、そうした行動を起すのでしょうか...。ヒューマニズムの安易な受け売りは偽善です。それで満足しているのは欺瞞です。中途半端なことしか出来ないのなら、しない方がマシです。今回のコンサートで集めた募金が確実にロッコ基金に届けられたという報告をどこかで絶対にしてくださいね。
さて、TOPのステージですが、相変わらずの熱烈パフォーマンスで楽しめました。時間が同じく1時間程度で、しかもラストステージなのにアンコール無し。定食だけでアラカルトの注文を拒絶されたレストランみたいで、ちょっと物足りなかったかな。
復活したMt. Fuji Jazz Fe3stival。Jazzという根っ子は残しながらも、単なるお祭りに終わらせずに、様々なアーティストの交流の場として、さらにここから新しい音楽が発信できれば...。プロデューサー氏の志は支持したいと思います。それでもアーティスト側からの一方通行的な発信は、気づくと独り善がりのものとなりがちです。主役は観客です。しかも、ここに集まってくるのは耳も財布もお腹も肥えたオヤジ&オバン共です。会場内のホスピタリティも今一つだったし、生半可な企画では観客は集まりませんよ。それを決して忘れることなく、今後の展開を期待したいと思います。来年ももし行くことがあれば自由席でも良いかなぁ...(^^;;)。
(2002/08/17)
※ロッコ医療基金についてのコメントを一部修正しました。(2002/10/25)
このHPの掲示板でご指摘いただいたように、募金活動そのものを非難しているかのような誤解を生む表現がありました。関係者の方々にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。なお当日の支援活動はボランティアで行われていて、さらに当日集められた善意の資金は、確実に基金に送金されたとの連絡も頂きました。
が、しかし、少なくとも会場内で行われている全ての活動は全て主催者に無断で行われるはずもないので、どのような釈明があろうとも、あの支援活動は主催者の意思であると私は認識しています。あの時に配布されたチラシは手元に残っていませんが、活動の経過や結果報告はHPで...と、もっと分かりやすく表現してあれば良かったと思います。でもひと安心(^^)。以って他山の石...ですね。
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