最終更新:1999年10月25日

死ぬほどおざなりな輪急便映画(ドラマ)3種比較対応表。

ネタばれ豊富に付き処方に注意。

クイックシルバー

メッセンジャー

疾風(ハヤテ)のように

1986年

1999年8月

1999年10月4日放送

米国映画(原題:Quicksilver)

日本映画

NHK制作テレビドラマ

狂言回し:ケビン・ベーコン

元株屋(20代後半〜30代)、すってんてんになり収入を得るために自転車便で働き始める。縁は株屋時代にタクシーに乗って競争した某メッセンジャーが落としていったベレー帽、だと思う。

狂言回し:飯島直子

(愛のあるサイトが見つからなかった(落涙)

筋金入りのバブル女(29才)がパトロン会社の倒産で身ぐるみはがれた折りも折りに轢いてしまった自転車便の男に示談条件として求められ、自転車便を始める。

狂言回し:森田剛

女にふられ人生に虚しくなった高校卒業生が予備校に行く金で自転車を買い、前後の脈絡の全くないまま自転車便でバイトを始める。なぜ自転車便なのかの説明はゼロ。

舞台はニューヨーク。トリックプレイ見せつけシーンや車線すり抜けシーンは結構多い。ロードバイクが圧倒的に多いのは時代背景からか。クリップペダル使ってるし。(SPD以前の映画だ)

舞台は東京。トリックプレイシーン、見せ場で効果的に使われている。「レインボーブリッジ超え」「品川駅横断遊歩道爆走」「階段降り」などの街乗り暗黒テク満載。登場するチャリの全部がMTBというのもひょっとしたら偏り過ぎかも。

舞台は東京、一部千葉。トリックプレイ皆無、車線すり抜けもほとんど無し。気が付くと歩道寄りの車線を大人しく走っていたりする自転車便(微笑)の方々が描写されている。ロード、MTB半々。髪型がパンクな方が一人いるほかは服装も街では危険なほど地味な人が大多数。

確認されている限りでは最初の自転車便映画。余談ながら「ユー・ガット・メール」では一瞬ながら最新モードのNYメッセンジャーが拝める^_^

←へのオマージュ:オープニングのタイトルロゴの出し方、およびモノクロ+彩色写真による表現。ディレイラーの動作の併走するカメラによる撮影?(情報お待ちします)

←へのオマージュ(多分):狂言回し氏の派手派手なバイクファッション(何故かそこはかとなくDH系)?

死者2名。ヤバイブツの運び屋をやっていたメッセンジャー、そしてその依頼人。

死者ゼロ。偉い!

死者1名。元教員のメッセンジャーのかつての教え子に自殺者がいる。

女性キャラとして狂言回し氏の元カノジョ、そして家出娘メッセンジャー(最後にくっつく)がいる。話に絡むものの影薄し

狂言回しが女性である上に途中参加のメッセンジャー(同僚のカノジョ)、狂言回し氏の仕事上の友人など女っ気は多い。

女性キャラは同僚の元カノジョと自転車便をパシリ代わりに使う生意気女子中学生が主。どちらも台詞が非常に嫌な役回り。

結局メッセンジャーから株屋(と思われる)に逆戻り、家出娘は看護婦、同僚の一人はホットドッグの屋台で独立。メッセンジャーを「定職」とは絶対認めない、と明言する奴がやたら多い。

結局メッセンジャー稼業が気に入った(他にも理由あり)ようでそのまま居着く。更にメンバー増加か?という予感を漂わせてエンド。メッセンジャーに将来性&人生の夢を見るキャラ、多し。

結局予備校でオベンキョウ開始。狂言回し氏はバイシクルメッセンジャーという特定の環境から何を得たというのだろうか。別に他の職業でも良かったのでは?メッセンジャー稼業に関するご意見、皆無。

BGMは「この映画唯一の収穫」なんて言っちゃう人もいる(by amazon.comの読者レビュー)程度にまし。まぁNYの眺めだけでオカズになるのでそーゆー点で得をしてる映画かも。

BGMは要所要所でキめてくる。音使いに定評のあるホイチョイ映画の面目躍如か。OP、EDテーマは久保田利信。東京タワーを始め、東京という街をほぼ無加工で最大限に格好良く撮影している。

BGMが泣けるほどしょぼい。ビデオ撮影のため、東京の町並みが報道シーンのような無機質さで描写されてしまい、結果として幻滅するほどださいニッポンの帝都が画面いっぱいに広がっている。

リアル指向なのか都会派夢物語系なのか不明なシナリオ。消化不良な枝葉(両親との葛藤とかぁ)が多い。悪役の存在理由が不明&どんな悪いことをしてたのかよーわからん。

いわゆる「楽しい夢物語」系。コメディの定石をきっちり押さえてくれる快感に酔うことだけを要求してくるさりげなさが身上。悪役もマンガ的類型なので、見ていて不快感がない。

いわゆる「道徳ドラマ系や〜な話」。くどいネーム(台詞)が見る者の不快感を増幅する上に、脇役の扱いがぞんざい過ぎる。いなくても差し支えない人間が多すぎ。あと、煙草を吸うシーンが異常に多い。JTの差し金か。

レンタルビデオ店で見つけられる、かも。(随分探しました)

ポニーキャニオン系でビデオ化されるのは確実(時期未定)。で、続編は?

某公営放送のことだから再放送しまくった挙げ句ハイビジョン対応ビデオにしてくれることでしょう(微笑)

まだのどかな時代だったのか、NYバイク便名物「ヘビメタ系鎖チェーンロック」「ぼろ布ぐるぐる巻き付け」は見られない。が、盗難に神経質になってる描写が繰り返しなされている。メットのデザインも時代を感じさせる。

パンフレットで使用バイクや小道具の説明はばっちり。→のドラマで飯島直子使用バイクが使われているような気がするのは気のせい?

協賛企業を出してくれないのは公営放送ならではの縛りか。使ってるバイクのブランドチェックにも不自由する。それでいて森田クンがショートホープを吸うシーンだけは鮮明。やっぱJTの差し金でしょ?

…「クイックシルバー」は車線逆走とか町中での競争とか、時折見応えはあるもののなんとなく何もかもが不明瞭なまま終わってしまう。NYという街が映画撮影に協力的なのは昔からなので、チャリが逆走したくらいではもうわたくしは驚けないのだ(公平な見方でないのは承知)。株のディーリングで一発逆転大儲けするシーンがうっとりするほどご都合主義で、しかもほとんど本筋と関係がない。メッセンジャーたちのオフィスに百貫デブ(失敬)がいたがカレももしかしてチャリに乗るのか?是非見てみたかったぞ!新入りが仕事をもらう→仕事をこなす→金を貰う、というビジネスモデルをかいま見ることが出来る。仕事割り振り人(ディスパッチャーのような素振りは描写されず)の爺さんの枯れた風情がいい味だしてる。シナリオのベクトルがドラマとファンタジーの間で最後まで落ち着かないのが非常に残念。

…「メッセンジャー」についてはまぁ精一杯冷静に評価しようとしてもこの3本の中では間違いなくトップレベルの出来映えである。オープニングが「クイックシルバー」に捧げるオマージュになっているということを今回はっきり確認できた。とにかく散漫なシナリオと傍線を追うだけでも十分楽しめる練り込まれたシナリオとの違いを見せつけられる思いがする。もちろん「をいをい」というツッコミ所も割と豊富なのだが。映画ロケにあまり協力的だという話を寡聞にして聞かない帝都トーキョーでよくぞここまで、というシーンも多いが良い子とアマチュアは決してまねをしてはならない。褒めすぎのような気もするのであら探し;折角のクライマックス、バイク便vs自転車便の競争シーンで「あれ…?」という間延びした感覚を数カ所で味わう。チャリならではの「荒い」映像も欲しい。カメラがきちんとホールドされ過ぎているような気がする。折角のニューヨークロケなんだからやぁっぱし本場モノのメッセンジャーを1シーンでいいから欲しかった(贅沢言ってるのは承知)。…枝葉末節。苦言もこれが精一杯、う〜ん、いい作品だ…

…「疾風(ハヤテ)のように」。危ない吊り天井が落ちて来るぞ!↑↓↓→→!それは「忍者ハヤテ」。とゆー寒いギャグでさえほかほか気分で迎えられる寒〜いシナリオ、寒〜い登場人物、泣ける映像、しょぼい音楽。いい所を見つけようとすると「まぁバイク便と喧嘩しないだけリアルかな」とか「交通法規は遵守してるみたいでこれならママもOKかな」(でも高速道路上にトラック乗り捨てると超迷惑だよ)とか「国生さゆりはどう本筋に絡んでいるんだ?」とか「街では都市迷彩を使え!(by士郎正宗)というか客商売に迷彩服はまずくないか?」とか、ああやっぱり苦言になってしまふ。悲しい。きっとメッセンジャーという舞台装置には積極的意味あいはまるっきり、ないのだろう。そもそものきっかけになった元カノジョがその後のストーリーにまるで絡まないのも、結果的にドラマの焦点をぼやけたものにする一因になっているのだがこれでは単なる悪口雑言になってしまうので「子褒め」ならぬ「ハヤテ褒め」;乾いた映像にウェットなシナリオ、描写に抑制が利いているという評価もできるだろう。「メッセンジャー」みたいにうりゃうりゃな自転車便よりも淡々とした感じがするのはもしかして90年代的リアルか。それだけに狂言回しクンが*あえて*自転車便を選択する経緯を描いて欲しかった。

文責:相良守人(CN9M-SGRアットマークasahi-net.or.jp)