ジョバンニ&カンパネルラの二人芝居(標準版)

アドリブで日によって変わるため、筆者の記憶の限りでキメの台詞を中心にまとめました。


舞台中央にイス2脚、イスの前にそれぞれ譜面台が置かれている。

上手からカンパネルラ(石井)、下手からジョバンニ(コータロー)が登場。2人とも楽隊の制服(白地に金モールの帽子と短上着、黒ラメパンツ)を着て手にはトランペットを持っている。
(どーでもいー話:ジョバンニとカンパネルラって『銀河鉄道の夜』宮沢賢治作ぢゃないの?)

石井(以下、石):始まったなぁ。
コータロー(以下、コ):始まったなぁ。
石:(舞台中央のイスに歩いてきながら)よぉ、ジョバンニ。
コ:(同じく歩きながら)おー、カンパネルラ。
石:(すわって)今日も始まったなぁ。
コ:(すわって)あぁ
石:この、サーカスってヤツは始まりがいいね。楽しくってさ。
コ:今日もお客さんいっぱいだよ。
石:見に来てる人は1度っきりだけど、俺らは毎日だからなぁ。
コ:そうだよなぁ。あきるよなぁ。
石:そうそ、あきるんだよ。お、見てみろよ、象だよ。俺はこの象ってやつが大好きでさぁ。
コ:象って言えば、知ってる? へっへっへ、あのうわさ。
石:あぁ、あの象使いアルベリオと象がデキてるって話だろ、知ってるよ。んなわけねぇだろ。
コ:いや、火のないところに煙は立たないってね。
石:(のりだして)お、おい、何か見たのかよ?
コ:知りたいか?
石:うん。で、どうだったんだよ。
コ:こないださー、ピエロのアドルフ・・・
石:あーあの手癖の悪い
コ:あいつがさ、万引きして捕まった夜、満月だったの覚えてない?
石:そういえばきれいな満月だったな。
コ:そうそう。あの夜おれなんだか眠れなくなっちゃってさ、散歩してたんだよ。そんで象の厩舎・・・
石:象の檻(おり)な
コ:そのおりのそばを通ったとき、聞いちゃったんだよ。
石:何をだよ?
コ:象のあえぎ声
石:あえぎ声だぁ?!
コ:そう。ふつう象ってどういうふうに鳴く?
石:そりゃぁ(手を挙げながら)ぱおーん!ってこんな感じだろ。
コ:それが、違うんだよ。ぱお・・あぅふ、おぅふ、うぅふ、(早口で)ナマステナマステナマステ
石:なんだよ、そのナマステナマステってのは
コ:だってインド象だろ?
石:そうか、インド象ね。ふーん。はあぁ(話にあきて視線をはずす)
コ:なんだよ、ききたくないのか? 象使いのアルベリオと象がしてたって話
石:おまえ本当にみたのかよ。
コ:見たっていってんだろ!
石:(のりだして)そっちのほうの話が聞きてぇな、あえぎ声なんかじゃなくてよ
コ:じゃおまえがアルベリオとして、ここに象がいます。こっちが尻な。おまえならどうする?
石:オレがアルベリオな。
コ:(象のまねをして)はぁ、早くして。もう
石:(ドラムロール、スネア一発と同時にこぶしをつきだす)
コ:はぁ、そういうことね。おまえ、以外と発想とぼしいんだな。
石:え? だって・・・
コ:全身を使うんだって。オレがアルベリオとして、こっちに象がいます。
ずぶずぶずぶずぶぅ・・・ってここまで(首をさす)入っちゃったんだから。

石:え?ここまで・・・
バンマス(ジュリアーノ勝又):やめろ
石&コ:(小声で)すいません。すいません。
石:(すわりながら)おこられちゃっただろ。しかしなんだなぁ、それって象を着てるって感じだな。
コ:そうそ・・・
石:吹け
(2人立って、ぱんぱかぱんぱん、ぱんぱんぱんぱんぱーん!とファンファーレ)

石:きっかけってやつだな、これが。
お、今度はローゼン夫妻のナイフ投げ。これがすごいんだ。もう40年のキャリアだっていうからな。(下手指さし)ほら、奥さんのほう、目隠ししてるのに自分の立ち位置わかってるだろ?
コ:あ。ほんとだ。
石:だんなのほうも、ドラキュラみたいな格好して、ほそい髭ぴんとはやしてかっこいいな。やっぱりこれは夫婦ならではの出し物だね。
コ:そうだな。
石:お互いの信頼関係ってやつだ。これが前の日に夫婦喧嘩でもしてみろ、たいへんなことになるから。
コ:そうかも・・・
石:お、始まった。(ドラムロール、石井の上手から下手へ首を振るアクションに、コータロー以下全員が追随。スネア一発!(タン))
おぉ。ここだよここ。脇の下すれすれ
コ:すげえな。あれじゃわきげそらなくてもいいんじゃねぇの。
石:お。次だ(ドラムロール・・・タン)すげぇ、ここだよ、またぐらかすめたよ。
コ:これ男だったらたいへんなことになってんじゃねぇ?
石:お、次は(ドラムロール・・・タン)。おぉ、耳の横。ぎりぎりだよ。ほら、イヤリングが揺れてる。
コ:ほんとだ!
石:ナイフがかすったんだな。お、4本目。(ドラムロール・・・タン)
コ:(2、3歩近づいて)すっげぇ、ど真ん中! あれ、目と目のあいだ。眉間っていうの?(この間石井、事態を察してあとじさる)、(コータロー振り返って、石井を見る)え? 事故? 事故?
石:吹け
(ぱんぱかぱんぱん、ぱんぱんぱんぱんぱーん!終わりがうわずる)

石:ひでぇもんみちゃったな。ピクピクしてる。まだ立ってるよおい。
コ:あれ、突き抜けてんじゃねぇの?
石:客もわかってねぇな、拍手してるよ。あーあ、後ろの板ごと運ばれてくよ。・・・これで明日からこの出し物はないよ。いやなもんみちゃったなぁ。
お、だんなのほう、下向いて・・・おい、笑ってんじゃねぇか?
コ:笑ってるよ。
石:なんかあったんだな。

石:(上を見上げて)お、次の出し物。綱渡り。すげぇよな綱渡りってのはよ。
このセルゲイっていうのがこの世界では第一人者なんだよ。
コ:(同じく上を見ながら)え? セルゲイ? セルゲイなに?
石:セルゲイさるわたり
コ:猿渡ぃ? おれさっき楽屋で一緒だったんだよ。あいつ所沢生まれだって。なぁにがセルゲイだ!
石:おまえは生まれで人を判断するのか! オレは茨城生まれのカールスモーキーっつんだ!!
(立ち上がったのがもどってきて座る)あのセルゲイの持っているあれ、イルカ。
コ:イルカ? だって全然うごかないぜ。
石:ばか。動いたらバランスがとれなくなるだろ。動かないように訓練してあるんだ。
コ:あーそうか。
石:あれ? なんか綱が揺れてないか? あ、あ、大きく振れてる!(ドラムロール・・・ドン)(全員でドラムにあわせて上から下へ首を振る)
石:吹け
(ちゃんちゃらら〜ちゃんちゃらら〜と軽快なワルツを全員で演奏。途中石井がコータローの耳元でラッパを吹き、コータローがよろけるという演出つきで1曲演奏)

石:(立ち上がって前へでてきながら)あーあ、ひろがっちゃって。
(指をさしながら)そこアタマだろ、あっちが腕で、こっちが脚。
コ:広がったねぇ・・・人間てひろがるね。
石:客はわかってないよ。大喜びだよ。残酷だねぇ。やなところだね。
石:あ、見ろ! イルカ、まだ上にいるよ。綱をかんで・・・イルカ! 今助けに行くぞ、待ってろ!!
コ:待ってろよ!!(2人左右にハケる)

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