九石(さざらし)陣屋長屋門

芳賀郡茂木町九石、九石家   




 のどかな里山の風景が広がる九石の地は、かつて忠臣蔵の浅野内匠頭を「殿中でござる」と

制止した1200石の旗本梶川与惣兵衛の知行地で、この地の名主である九石家を領内巡察時

の陣屋としていました。この九石家の長屋門については資料がないのですが、長屋門を間近で

よく見ると(注)木肌の様子等から江戸時代からの建物のようにも見えるのです。という事は

陣屋時代の門という事だと思うので、本章で取り上げる事としました。


   九石陣屋長屋門


 各地の長屋門の中には制約の無

くなった明治以降に建てられたの

もあるのですが、それらは長屋部

分が短かったり様式も簡素化され

ているものが多いようです。しか

しこの門は横幅も長く、何より木

肌や木組みの様子からも十分な古

さを感じさせます。




    陣屋跡全景


 九石家は戦国時代の土豪の家柄

で、帰農した後もその城館に引き

続き屋敷を構えていたようです。

その為に現在の屋敷地も小高い丘

の先端部にあり、正面以外の三方

は谷に囲まれています。






    入り口の大欅


 九石家の入り口に立つ大欅で、

元禄年間には領主の梶川与惣兵衛

もこの欅を賞賛したそうです。そ

の当時から大木だった訳で、現在

ではかなりの古木になり根元には

大きなウロがあいていますが、樹

勢は良好なようです。



 注・・・玄関まで押しかけて声を掛ける厚かましさは無いので、家人が庭先にでも出て来な

  いかと、しばし門前に立って待っている間に繁々と観察していました。しかし誰も出て来

  なかったので、そのまま立ち去りました。