6BM8 三結 シングルアンプ






 私の初めて真空管アンプは42の標準的なシ

ングルアンプでした。その後いくつかのアンプ

を組んだりするうちに、シングルアンプとはい

え、もう少し低域を出せないかと考えるように

なりました。OPTのHS−7をそのまま流用

して、特性を上げるには三極管にするのが早道

と考えましたが、6R−A8や6G−A4など

はすでに入手困難に、2A3は高価になってい

たので、代用管を探すことにしました。

 上記の球の代わりになるのが選択の条件なのですが、すでに6C−A10sのアンプを製作して

ましたし、OPTの容量が小さいことから、2Wから3Wぐらいで、入手が容易で安価な三極管あ

るいは五極管の三結という事で規格表を見ると、6L6GC、7591と言ったところがあるので

すが、いずれもPPで使えば40W前後の大出力管ですので、こんなミニアンプには不釣り合いで

す。また6080はドライブ電圧が高く扱いにくい、6BX7は双三極のためプレート損失がとれ

ずシングル動作は不利、と言う具合でうまい球がありません。しかたなく2W以下にも目をやると

6BQ5、6BM8等があるのですが、6A−R8の代わりを探したのですから最低でも2W以上

は欲しいものです。それでこのどちらかを使ってカソードフォロワードライブで出力増加を図るこ

とにしたのですが、必然的に3段アンプとなるので、複合管の6BM8を使うことに決めました。

出力は6BQ5より少ないのですが、内部抵抗が比較的低いので、その点も今回の目的に沿うだろ

うと考えた次第です。



 製作のポイントとしては

1.OPTの 16オーム端子に 8オーム負荷を接続して、1次側 7Kオームを 3.5Kオームとして使用

  しました。今ならソフトンのRW-20を使うのが良いと思います。このOPTは本機には勿体

  無い大型トランスですが、ケース入りにも関わらず価格は手頃で、下手な廉価トランスを使うよ

  り遥かに高コストパフォーマンスです。1次側は2.7kとし、2次側の6Ω端子に8Ωを繋げば

  3.6kの負荷となるので、本機とほぼ同じ特性が得られます。

2.電源トランスにはノグチのPMC-100Mや春日のKmB100Fなどが使えます。

3.出力管のカソード電圧が99Vになるように、50Kのトリマーを調節する。

4.電源の平滑回路はスペースの都合で抵抗にしたのですが、出来れば 10mH100mAぐらいのチョーク

  コイルにしたいところです。


 諸 特 性

 当初は測定器が揃わず、ろくな測定もしないまま聴いていたのですが、後日測定をして見たところ

小型管にしては良好な特性が得られました。


 出力3W付近まで直線で伸

びていて、入力電圧約1V弱

で3Wが得られます。

 サイン波形は2.5Wを越える

とクリップが目立ちはじめ、

さらに入力信号を上げていく

と4Wを超えた処で頭打ちに

なります。



無歪出力2.3W THD3.2%

NFB 6.5dB+KNF

DF=5 on-off法1kHz 1V

利得 15dB(5.7倍)1kHz

残留ノイズ 0.64mV



 次に歪率特性ですが低域以外はほぼ揃った特性になっています。高域はやや早めにクリップするの

ですが、これはOPTの変則的な接続に拠るところもあるようです。予想では100Hz特性の方が早め

に崩れると思ったのですが、中域との開きも少なく意外と健闘している感じです。一方、30Hz特性の

2W以上はほとんど垂直線で、いくら入力を入れても出力の増加はありませんでした。小型のOPT

なので仕方ないのですが、それでもシングル動作でこれだけの低域伝送能力を示すのはOPT容量に

対して余裕を持たせた効果と思います。




 周波数特性は出力別に三通り採ってみたのですが、当然のように出力が大きいほど低域特性は悪く

なります。それでも低域側で20Hzまでは、ほぼフラットな特性が得られています。小出力時にカット

オフ付近でやや盛り上がっているのはスタッガ比不足の所為だと思うのですが、段間の時定数を変更

しても変わらなかったので、OPTのカットオフ変動が、思いのほか大きいのかも知れません。それ

でも不安定になる程ではないので、これで良しとしました。




 雑  感

 小型管にしては我ながら予想以上の結果が得られたと思います。最近の大型直熱管を崇拝する風潮

へのアンチテーゼ、などと大それた事を言うつもりはありませんが、ありふれた球でも「やれば出来

る」という好例ではないでしょうか。



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