QuadU型 6AQ5PP






 ARITOさんが中心になって、小型で

もKNF巻線の付いたOPTを特注して、

「チョロQアンプ」と題した小型のQua

dU型アンプを作ろうという話が盛り上が

り、私も発注に便乗させてもらったところ

運良くその中でも特性の素直なものを分け

て頂くことが出来ました。そこで、少しは

他の皆さんのお役に立てればと、6V6用

に製作途中だったシャーシを流用して組み

立て、取り急ぎ特性を採ってみました。

 回路はAyumiさんの回路を参考にして出力段だけ少し変更を加えました。今回選択したトランスはラップ

ジョイントコアだったので許容アンバランス電流が少なく、本来ならばDCバランスを付けたい処ですが、

煩雑になるのでカソード抵抗を入れて、現物合わせで出力管のペア組みが出来るようにしました。実際のと

ころ、ペア組みをしないで特性を測ると、差換えてペア組みした場合よりも低域の特性が大幅に悪くなって

いました。また出力管のSG電圧がプレート電圧より50Vも低いので、抵抗だけでなくツェナーも併用して

SG電圧を下げるようにしました。五極管のロードラインを引く場合には、負荷線が特性曲線のニーポイン

ト付近で交差するように諸定数を選ばないと、歪が多かったり、或いは効率が悪くなったりするからです。

そのような事から当機はSG電圧との差が大きく、抵抗だけで電圧降下させたのでは大振幅時の電圧変動が

多くなると考えたのですが、諸先輩方の作例を見るとさほどの影響は無かったようです。ただ最大出力付近

の特性は当機の方が僅かに良いので、この電圧変動対策が好結果を生んでいるのかも知れません。さらに高

NFアンプの常道として、初段グリッドにパラ止めの抵抗を入れています。ただ、これも結局は補正を掛け

ているので効果の程は不明ですが無いよりは良いでしょう。



 最大出力としてはノンクリップでも5W以上でしたので、出力段の動作点は合っているようです。そこで

歪率測定は後回しにして、補正の必要を検討する為に高域の特性を観測してみました。以下に10kHzの方形

波を入れての応答波形を示します。

 補正無し、負荷8Ω

 補正無し、負荷開放

 微分補正1000PF、負荷8Ω

 積分補正G−G間22P+33K、負荷8Ω

 積分補正G−G間33P+33K、負荷8Ω

 最終決定、微分補正330PF、及び
 積分補正G−G間22P+33K、負荷8Ω

 補正無しでも発振には至らなかったのですが、無負荷ではかなり不安定な波形です。また100kHz付近には

ピークを生じていたので、やはり多少の補正は必要なようです。微分補正1000PFは一見良さそうなのです

が、よく見るとリギングが尾を引いていて、また積分補正はオーバーシュート気味の尖がりを消そうとする

と波形まで丸くなってしまいます。そこで両方を組み合わせてみたら割と良さそうな波形になり、また周波

数特性も以下のように素直な特性が得られました。




歪率特性等

 当初はクリッピングレベルの波形を見ながら、出力管のSG電圧調整をしようと思っていたのですが

目標の5Wを超えてもクリップはしていなかったので、そのまま歪率特性を採りました。


 さすがに高帰還のおかげで 

高域以外は稀に見る低歪なの 

ですが、この高域については 

諸先輩の作例を見ても低歪に 

はなっていないので、このよ 

うな特性がQuadU回路の 

特徴のようです。



無歪出力6.3W THD 0.74%

NFB 約20dB(非計測)

DF=8.3 on-off法1kHz 1V

利得 22.5dB(13.3倍) 1kHz

残留ノイズ 0.32mV





トランスを並品に換装


 上記の通り、良品トランスの場合には予想通りの良好なデータが得られ、また一週間だけの試聴期間です

が音質的にもなかなか好ましい音を出していると感じました。そこで補正は変更せずに、OPTだけを並品

に換装して、とりあえず発振の有無を観測しました。

 積分補正22P+微分補正330PF、負荷8Ω

 積分補正22P+微分補正330PF、負荷開放

 積分補正22P+微分補正330PF
 負荷8Ω+容量負荷0.1μF
 積分補正22P+微分補正330PF
 容量負荷のみ 0.1μF


 波形を見ると僅かに立ち上がりのピークが見受けられますが、容量負荷や負荷を開放した場合でも発振に

は至らず案外安定しているようです。そこで補正無しと有りの場合とで周波数特性を採ってみました。



 まずは補正無しで特性を採ってみると、意外にも良品トランスの場合よりも高域の盛り上がりが少なく、

以前のままの補正(B補正、22P+330PF)ではその分高域の低下が早まるようです。そこで、補正を

をいくぶん軽目にして(A補正、15P+220PF)特性を採ってみたところ、50kHz付近までフラットに

伸びた好ましい特性になりました。この定数で確定しようかとも思ったのですが、念の為に方形波の波形を

見てみました。

 積分補正15P+微分補正220PF、負荷8Ω

 積分補正15P+微分補正220PF、負荷開放


 A補正での方形波応答を見ると、立ち上がりのピークが以前にも増して目立ってきています。この状態で

負荷を開放にしても発振する事は無いのですが、これだけ明確なピークだとやはり気になります。諸先輩方

の意見では、なるべく軽い補正の方が音が良いと云われていますが、私の駄耳ではその違いがよく分からな

いので、安定性を重視する事にしてB補正(22P+330PF)で確定としました。しばらくはこのままで

聴き込んでみようと思います。




 チョロQアンプ・プロジェクトとは


 このプロジェクトの元になったQuadUアンプは音の良い事で知られ、当時は知らぬ人が無いほど有名

なアンプでした。しかし、その後の高帰還アンプを嫌う風潮の中で一時忘れ去られた存在になっていたので

すが、それは高帰還に対応できる良好な高域特性のOPTが希少だったので、例え音が悪くなっても過度な

補正を掛けなければ使えないという事情があったようです。このような流れの中で、近頃は無帰還や低帰還

でも簡単に良い音が得られる三極管が人気を得ていたのですが、ラジオ技術誌で氏家先生が最新の巻線技術

で作られたOPTを採用した「現代版QuadUアンプ」を発表されて音の良さが見直され、一転して高帰

還アンプが注目を浴びるようになりました。ただ、このアンプはオリジナルを忠実に踏襲しているので、比

較的大出力のセットとなっていて、気軽に追試をしてQuadUの音を楽しむという訳にはいかず、もっと

小型で小出力のセットを手軽に作りたいという要望が高まりました。ところが現在の既製OPTでは、この

ような仕様に適合する製品は無く、二次巻き線をKNFに流用したり、或いはKNFではなくUL接続にし

たりして、似て非なるセットを組むしかありませんでした。

 このような時に文頭で紹介したARITOさんが、ミニQuadUアンプ、題して「チョロQアンプ」用

のOPTを小さなトランス屋さんに特注してチョロQアンプを製作するという話を紹介され、これに共感す

る仲間が続々と集まり、最終的には100個を超える数を共同購入する運びとなりました。図らずも取りま

とめ役となってしまったARITOさんが、大変なご苦労にも関わらず(大勢の方が集まると、ご多分に漏

れずに紆余曲折があるものです)出来上がったトランス一つ一つの特性を測定して、ペア組みした上で配布

して下った事は、高帰還アンプにとっては大変有り難い事で、(両chの補正が均等に出来る)ARITO

さんには重ね重ね感謝申し上げる次第です。


 関連ページの紹介

チョロQアンプ・プロジェクト公式掲示板 ARITO's チョロQ、纏めの チョロQトランスの仕様

話の発端となった UMETECH's AUDIO BBS、同TOPページ UMETECH's AUDIO Home Page

取りまとめ役のARITOさんのホームページ ありとな世界

私が参考にさせて頂いたAyumiさんの QUAD IIタイプミニアンプ、同TOPページ Ayumi's Lab.