単球レフレックススーパー





 前にも紹介した”手作り真空管アンプのページ”の中の

”宇多さんのページ”に掲載されている単球レフレックス

ラジオ(以下、宇多式レフ)を製作したいと思って、この

記事を何度も眺めていたのですが、シールド板を立てたり

コイルを自作したりと、どうにも難易度が高そうでした。

かといって本章の乾電池式レフではお手軽すぎて実用性は

無いに等しく、もう少し簡単に宇多式レフに準じるセット

を作れないものかと思案し、低電圧式のセットで手馴れた

グリッド注入式のスーパーで製作してみました。

 このレフレックスラジオをスーパー方式にすると、発振しやすいレフレックス段がIFTを使っての複同調に

なり、中間周波以外の高周波を容易に除去出来ることが一番の利点になるようです。これは宇多式レフの回路図

を見ていて思いついたのですが、考えることは誰でも同じようで電池管を使ったレフ式スーパーのブロック図が

”手作り真空管アンプのページ”にも紹介されていました。ところで、スーパーとする為には最低でも2段構成

となるので、三極五極の複合管を使った単球ラジオとなるわけですが、使用する球の条件としては両ユニット間

にシールドがあり、五極管のPG容量が小さく電力感度が高い、等の特性が要求されるようです。要するに信号

の回り込みを防ぎ、検波信号を直接増幅してもスピーカーを鳴らせるだけの電力感度を持つ球ということです。

このような条件を満たす球に6AW8Aがあるのですが、元来がテレビの映像増幅管なのでラジオ用として使い

やすい120V前後の電圧での動作例が公表されていませんでした。仕方ないので、またもや特性を採って見た

ところ「 Eb120V RL7K Ec1 -1.5V Rk140ohm Ib11mA Po370mW 」となりました。1V強の入力電圧でフ

ルパワーになり、またRL12Kの場合は0.4W以上得られるので、ラジオ用の小出力管としては手頃な球では

ないかと思います。この特性を採るときに、ついでに他にも数種類の小出力管の特性を採ったので特性図は他章

に譲りますが、動作点付近のgmは10,000近くあってレフレックスでは十分な発振対策が必要となりそうです。

今回はこの6AW8Aを採用し、前段のCOV−MIXは低電圧式で使い慣れた三極管でのグリッド注入式にし

ました。ということで以下のような回路になりました。




使用部品について

1.同調コイルはバーアンテナ、バリコンはポリバリコン、OSCもトランジスタ用を使用しています。

2.IFTは14mm角のインダクターなど大小四

 つのIFTを組み合わせたものが、一組になって

 真空管用として売られていました。当セットでは

 この内「B2」は使いませんでした。

3.コンデンサーの耐圧は図を参照してください。

 普通は電源電圧分あればいいのですが、トランス

 レスセットでは一律とはいきません。対シャーシではAC100V(DC280V)の耐圧が必要です。

セミトランスレスとする為には

1.五球スーパーの章で既に述べていますが、アースラインはシャーシから浮かせて配線して下さい。また

2.ポリバリコンなどのトランジスタ用部品はアースラインからも絶縁する必要があります。電源コンセン

 トの極性によりシャーシとアースラインの間にはAC100Vが発生するからです。

レフレックス段の発振対策としては

1.プレート回路の配線とグリッド側の配線はなるべく近づけないようにし、ボリュームからの帰還回路は

 シールド線で配線します。これをフェライトビーズに通すのも効果的かも知れません。

2.ソケットのセンターピンやIFTのシールドケースは必ずアースラインへ接続して下さい。

3.シャーシは最低でも並三ラジオぐらいの大きさが必要です。私の場合は一球のセットだからと小さ目の

 シャーシにした為に、配線が入り込んでいて発振対策も思うに任せませんでした。シャーシ内はクモの巣

 状態で、人にはとても見せられない配線になってしまいました。


 上記の回路になるまでいくつか試行錯誤したのですが、例えば当初帰還回路もボリュームの中点から直接

グリッド側に戻していました。しかし弱い発振状態になっていたらしく(局発出力かも?)、同調に関係な

く常時DC5Vぐらいの検波電圧が出ていて、バイアスがカットオフ側に振られてしまい感度が上がりませ

んでした。同調時に少し振られるくらいならAVCになって良いのですが、発振状態を完全には解消出来な

いのでグリッドリーク抵抗は別に入れ、0.05のCでDC電圧をカットするようにしました。

 最終的に出来上がったセットは、標準的な並三ラジオよりは明らかに上で、感度出力とも実用的なものに

なりました。東京杉並では外部アンテナを繋がなくてもスピーカーをガンガン鳴らせますし、またまた自画

自賛になってしまいますが、単球ラジオではベストといえる性能になったのではないかと思います。



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