ロンドン憶良の世界管見


憶良憂国論(3)
マスメディアが報じない他国の内容


庶民に配慮、英国のゼロ税・非課税・軽減税率の明細




マスメディアや学者や財界が報じている欧州各国の高い消費税率
は標準税率であって、食料や教育あるいは報道などの国民生活の
基礎資材にはゼロ税率や軽減税率などの、心憎いばかりの救済
措置が配慮されていることは、前回憶良憂国論(2)で報じました。

マスメディアは「欧州各国の消費税率は高い」と「間違いなく報道」
していますが、「ゼロ税率や軽減税率などの配慮がある」という、
最も大事なことを「正確には」伝えていません。

憶良氏が気に懸けるのは、このような「間違いではないのだが、必ず
しも全体を正確に論じていない」部分論理の展開が、あちこちで散見
されることです。自説に都合のよいところだけのつまみ食いに似てい
ます。可能なかぎり全体を「鳥の目のごとく俯瞰」したいものです。

前回、約30年前、憶良氏が倫敦のシティで働いていた時代に、
『英国は、当時10%の税率でVATを開始しましたが、国民の基礎的
 生活に大きな負担とならないよう、間接税は負担能力のある中流
 及び上層階級が多く負担すべきとの方針で、ゼロ税率の項目や、
 適用外あるいは軽減税率が決められました。』
と書きました。

このたび、『晴耕庵の談話室』ご常連の、スコットランド在住Y.H.さん
から、現在のUKでの「ゼロ税率や軽減税率・非課税項目の一覧表
が送られてきましたので、皆様に紹介します。
(Y.H.さんのご協力に、この場を借りて心から感謝します)

皆さん、キャラバン、ハウスボートもゼロ税率です。そうです。UKでは、
庶民もキャラバン、ハウスボートで余暇を過ごしているのです。
この粋な計らいをする英国国税庁に脱帽しましょう。

さらに、非課税項目に注意しましょう。
なんと土地売買も、賭博も非課税!「ウッソー!」と驚いてはいけま
せん。
英国では庶民は土地を買わず、長期借地権付き家屋を買うか、賃貸
入居が普通です。
賭博というよりちょっとした賭け事の好きな国民性も見え隠れします。
ベッティングに課税するような野暮な官僚は、英国民にあらずという
わけでしょうか。非課税にユーモア文化を感じます。



Y.H.さんのリポート

0%税率適用品目:

Group 1 - Food(食品)
Group 2 - Sewerage services and water(上下水道)
Group 3 - Books etc(新聞雑誌も含む)
Group 4 - Talking books for the blind and handicapped and wireless
     sets forthe blind(盲人用の書籍朗読テープなど)
Group 5 - Construction of buildings, etc(建築)
Group 6 - Protected buildings(保護指定となっている歴史的建築物
     の売買)
Group 7 - International services(輸出入関連サービス、海外向け
     サービスなど)
Group 8 - Transport(旅客運送)
Group 9 - Caravans and houseboats(キャラバン、ハウスボートなど
     可動家屋)
Group 10 - Gold(金)
Group 11 - Bank notes(銀行紙幣)
Group 12 - Drugs, medicines, aids for the handicapped, etc
     (医療品、身障者用機器など)
Group 13 - Imports, exports, etc(輸出入品)
Group 15 - Charities, etc(チャリティ)
Group 16 - Clothing and footwear(子供服・靴や保護作業衣)

非課税(VAT適用外)品目:

Group 1 - Land(土地売買)
Group 2 - Insurance(保険)
Group 3 - Postal services(郵便)
Group 4 - Betting, gaming and lotteries(賭博、ゲーム)
Group 5 - Finance(証券取引など)
Group 6 - Education(教育、塾など)
Group 7 - Health and welfare(保健福祉サービス)
Group 8 - Burial and cremation(葬儀)
Group 9 - Subscriptions to trade unions, professional and
     other interestbodies(組合費、専門職団体会費など)
Group 10 - Sport, sports competitions and physical education
    (スポーツ・体育活動やスポーツイベント入場料)
Group 11 - Works of art, etc(美術品)
Group 12 - Fund-raising events by charities and other qualifying
      bodies(チャリティなどの募金活動)
Group 13 - Cultural services, etc(文化施設やイベントの入場料)
Group 14 - Supplies of goods where input tax cannot be recovered
    (物品を販売する際に徴収するVATをoutput tax、購入する際
     支払うVATをinput taxといいます。業者は商品販売の際に
     徴収したoutput tax総額から、商品仕入や材料購入の際に
     支払ったinput taxを差し引き、残額を税務署に納めます。
     が、本来ならVAT課税対象となる品目でも、零細企業や個
     人など売上げ規模が小さいためVAT登録していない仕入先
     から購入した場合、input taxはかかりません。で、仕入の際
     input taxがかからなかった商品を販売する際にはoutput tax
     をかけてはいけないというのがこの項目の主旨だったと思い
     ます。)
Group 15 - Investment gold(金投資)

軽減税率

現在軽減税率は5%になっています。
(前回憶良憂国論(2)で8%と報じていますので訂正してください)

軽減税率が適用される品目は、

家庭用ガス・電気など
省エネ設備機器などの設置
暖房設置やガス供給を、公的助成を使って行う場合
家屋改築
生理用品
自動車用チャイルドシート

VATの細かい規定の説明は、国税庁発行のVATガイドで説明されて
います。



皆さん、日本のマスメディアは英国の付加価値税率は17.5%と報じ
ていますが、高い標準税率は庶民の生活にはさほど影響を与えて
いないことが、Y.H.さんのリポートで具体的にお分かりでしょう。

では誰が負担しているのでしょうか。
レストランで食事をしたり、高級家具を買ったりできる、負担能力の
ある富裕層が負担しているのです。
(これも階層すみわけ文化と憶良氏は理解しています)

破綻寸前の日本国家の再建には、消費税引き上げ問題は不可避
です。しかし単一税率での引き上げは見直さなければなりません。

「国民生活の基礎資材には別税率を」という憶良氏のささやかな
提言が、大河の源流になる一滴になるかどうか分かりませんが、
もし欧州やカナダ在住者の方々で、参考になる資料やご意見があ
ればお寄せ下さい。
この憶良憂国論(財政シリーズ)あるいは『晴耕庵の談話室』で、
日本の皆様に紹介したいと思います。
(健全な日本再建のため、マスメディアの補完をしたいと思います)

皆さんは、消費税問題をどう考えておられますか。



 
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