晴耕庵の談話室

NO.81



標題:英国アイルランドの調査終え、帰国します

REPORT

2003/2/28

ロンドン憶良様


以前、2度ほどお便りさせて頂きましたエジンバラ在住のH.Y.と
申します。いつも楽しくも大変勉強させて頂いております。
この4月に帰国予定です。2年間に渡り、英国、アイルランドの国
のかたちを辿る調査をしておりました。

年明けから、北アイルランドのデリー(ロンドンデリー)でカトリック
とプロテスタントとの紛争地帯に入り、コミュニティーの調査を致し
ましたが、偶然面談できたIRA(プロビジョナル)のメンバーからの
感触では、和平の到来には悲観的にならざるをえません。

シエットランド諸島の調査では、15世紀までノルウェーの領土だ
ったことから完全にバイキングの伝統を今に残し、自らをスコット
ランド人ではなくシェトランダーと呼んでおり、マン島人が自らを
マンクスと呼んでいることと同様に、祖先に誇りを持っているよう
です。

先週まで滞在していたウェールズでは、西海岸地域を重点的に
廻りましたが、日常的にウェールズ語が使用されていました。

ウエールズからの帰途に寄ったロンドンも開発が著しく、とくに大
ロンドン市議会は、ウェールズ議会に匹敵するぐらいの大きな権
限をもちつつあります。

帰国を控え、その準備におおわらわです。残念ながらエジンバラ
のウェバリー公園に咲き誇る水仙を今年は見れませんが、昨年、
その咲き誇っていた水仙の美しさに魅せられて詠んだ一句です。

水仙の 分きてそれとは 咲かねども 愛でる人の 色はいろいろ

4月から仙台で大学の研究職に戻りますが、これまで日本の政治
学者の関心ががウェストミンスターに偏重しており、分権のあおり
でここ数年やっとスコットランドにも目をむけるものが出てきました
が、ウェールズや王室保護領まではカバーされておりません。

帰国しましたらロンドン憶良様には是非、お会いして英国について
ご教示願いたいと思います。


                    H.Y.(エジンバラ)

THANKS

2003/3/1

H.Y.様


メール有難うございました。
昨年末から今春にかけて日本は気候がおかしく、例年なら年末
から1月に咲き誇る我が家の水仙が、今満開です。

2年間、英国、アイルランドの国のかたちを辿る調査をされたとの
こと。地方分権の実現や北アイルランド紛争集結間際の座礁な
ど、さぞかし収穫が多かったと思います。
帰国後は仙台で研究に励む由、イギリス即イングランド政治学
から脱皮してUKの内包するケルト諸国以来の問題や王室保護
領、さらには英連邦も包摂した、スケールの大きい政治学の成果
を上げてください。

イギリス即イングランド論に疑問や不満を感じた方々が、当ホー
ムページで、GBとかUK、さらにはコモンウェルスの理解にまで
興味を持ってきています。UKの歴史と動向を知ることは日本の
今後の方向付けに大変参考になると確信しています。

まだ未掲載ですが、2―3年前ウェールズ語の教育について、
若干調べました。そのうちアップロードしようと思いつつ、そのま
まになっています。その節にはご意見を寄せてください。

ご帰国後、湘南にお出での折にはどうぞお立ちより下さい。
以前フランスから帰国された談話室の常連F.M.さんがお見えに
なり、ノルマン史について語り合い、情報交換したことがありま
す。趣味に年齢差はありませんので、大変愉快でした。

私はシェットランド編みのざっくりした華やかなセーターを愛用し
ています。真説マクベスを書くべく資料を集めていますのでシェッ
トランド諸島の話も聞きたいですね。北はインバネスまでしか行
っていませんので。

お会いできる日を楽しみに


                      ロンドン憶良


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