晴耕庵の談話室

NO.30


SPRING HAS COME

99/3/24
標題:ボルトンに春が来ました

ロンドン憶良様

久しく御無沙汰うちすぎ失礼いたしました。 HPは、更新日にかかさず拝見して
いるのですが。
前回のお子様方の初登校のご様子、1年半前を思い出しました。 親も心配しま
したが、まるで言葉の分からない子供達にとっては、心細いよりも、恐いといった
方がよいくらいの経験だったことと思います。今では3人ともすっかり慣れて、
毎日のびのびと楽しく過ごしています。日本人はひとりもいない学校ですが、先
生方も、お友達も親切に受け入れてくださったおかげと本当に感謝しています。
こちらに来る前一番心配したのは、子供達のことでしたから。

さて、こちらボルトンもようやく春らしい陽気になってきました。学校のイース
ター休暇も今日で終わりです。イースターが来ると、急に街が活気付きますね。
着るものも軽く明るくなるし、冬の間休業していた観光地も再び開かれました。

水仙をはじめムスカリ(こちらでは、パイナップルヒヤシンスという方が馴染み
深いようです)、プリムラ、チューリップといった春の花が、いっせいに咲きそ
ろい、庭も、色鮮やかによみがえったようです。お天気のいい日には、どちらの
お宅も庭仕事に精を出しておられます。
そうそう、去年のちょうど今ごろのことです。ある日、子供の迎えに行こうと外へ
出ると、御近所の方達が、いっせいに外へ出て庭を掃いたり芝を刈ったりして
いらっしゃるのです。そんな光景を見るのははじめてだったので、「これは、回
覧版がまわって、今日は、御町内一斉清掃の日だったのかしら」とあわててお
たずねしてみると、何のことはない、お天気がよくて暖かくなった春の第一日目
は、だれもがまず外へ出て、明るい日の光と、あたたかなそよ風とを楽しみたく
なるのだということでした。

長くて暗い冬を過ごした後では、このまばゆい日の光は本当にうれしい自然の
贈り物です。
日本で大掃除はお正月を迎える前の仕事ですが、ここ英国では、イースター前
に行う行事だそうです。4月1日は、National Spring Clean Day でした。

いつ伺ってもどちらのお宅もお掃除が行き届いていて、今更大掃除なんてしな
くても、と思うほどですが、とにかく、窓もいつもより更に念入りに曇りなくピカピ
カに、ベッドの下も、家具も動かしてというふうに家中を磨き立てるのだそうです。
私も、何日かかけて Sparkling Clean にしました。暖かくなって体を動かすこと
もおっくうではないし、何より、明るい日の光に照らされると汚れも目立つの
で、これは大変という気になるのです。何もかもが新しい命を吹き込まれて、輝
きはじめる季節です。

ついにこの休みにBattleへ行きました。そのご報告は別便にてお送りします。


                                        N.N.


RESPONSE

N.N. 様

メール拝見しました。
あの子供たちが結婚し、孫が数年うちにその年齢に達するかと思いますと、
「光陰矢の如し」と実感します。

>毎日のびのびと楽しく過ごしています。日本人はひとりもいない学校ですが、
>先生方も、お友達も親切に受け入れてくださったおかげと本当に感謝してい
>ます。

お子様がたが幸せですね。
どうして英国のがっこうはギスギスしていないのかと不思議におもいますが、
わが子供たちもいじめにあわず、エンジョイしました。
ところが日本の学校では教師や生徒のいじめにあい、苦労しました。
これは精神的にユトリのない社会や家庭のフラストレーションの反映かなと
感じています。
「ロンドン憶良見聞録」のあとがきを「ユトリ論」で締めくくったのは、まさに
この点にあります。

>水仙をはじめムスカリ(こちらでは、パイナップルヒヤシンスという方が馴染み
>深いようです)、プリムラ、チューリップといった春の花が、いっせいに咲きそ
>ろい、庭も、色鮮やかによみがえったようです。

「冬来りなば春遠からじ」春を待つ北国の人々の気持ちと、あの華やかな
春の開花は見事ですね。

>ついにこの休みにBattleへ行きました。そのご報告は別便にてお送りします。

何の変哲もない鄙びた場所ですが、今までにも何人か拙著を読み、訪英の
さいBattleを訪れてくれています。
Battleのご報告を楽しみにしています。

                                  ロンドン憶良
           
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