UKを知ろう


エリザベス女王、オーストラリアの国家元首を継続


豪州国民投票は共和制移行を否決



「エッ、オーストラリアの国家元首はエリザベス女王だったの!」
という方もいそうだ。
そこで11月6日のBBC NEWSや、日本の新聞報道などを参考に、豪州
国民投票(Referendum)や英連邦について、憶良流の解説をしてみよう。

1999年11月6日挙行された豪州国民投票は、オーストラリアがエリザベス
女王を国家元首とする現在の立憲君主制から、大統領を元首とする共和制
に移行するかどうか、世界とりわけアジア諸国の注目を集めていたが、開票
結果は移行を否決した。

共和制移行     反対 『NO』   約54%
              賛成 『YES』  約45%



選挙前のアンケートでは、共和制移行反対(立憲君主制の継続)は9%程度
と見られていた。
しかし大統領の選出方法が国民投票ではなく、議会が選ぶ間接選挙である
ため、共和制移行に賛成しながらも、『NO』に投じた国民も多数いると見られ
ている。

オーストラリアは1970年労働党政権下となり、「脱欧入亜」のアジア親密政
策に転じた。
共和制への移行を問う国民投票も、その流れの一環であった。
しかし1996年に保守連合が勝利し、ジョン・ホワード(Jhon Howard)首相
になって、共和制への移行の動きは消極的になっていた。

この投票結果に、共和制移行のリーダーは、
「ジョン・ホワードは、この国民の心を傷つけた首相として、その名を歴史に残
すであろう。彼はオーストラリアに外国の女王を扶養させる事にした男だった」
(He will just be remembered as the prime minister who broke this nation's
heart.He was the man who made Australia keep a foreign queen.)
と酷評している。

一方、女王は、
「私は、オーストラリアの立憲君主制の将来については、オーストラリア国民
の問題であって、彼らだけで民主的かつ憲法に準拠した方法で決めればよい、
と常々明言してきました。」
(I have always made it clear that the future of the monarchy in Australia is
an issue for the Australian people and them alone to decide,by democratic
and constitutional means.)
と付言して、オーストラリアの国家元首(Head of State)の継続を喜んで受諾さ
れた。

この結果、エリザベス女王を盟主とする(英国以外の)英連邦53ヶ国のうち、
15ヶ国が引き続き女王を国家元首とする立憲君主制を維持することとなった。


エリザベス女王を国家元首とするUK以外の立憲君主国 15
アンティーグア・バーブーダ、オーストラリア、バハマ、バルバドス、ベリーズ、
カナダ、グレナダ、ジャマイカ、ニュージランド、パプアニューギニア、
セントキッツ・ネビス、セントルシア、セントビンセント・ブレナディーン、
ソロモン諸島、ツバル。


歴史の潮流は、国民が大統領を選任する共和制に移行しつつあるが、一方、
国民投票や議会で選ばれた大統領が、必ずしも清廉潔白な、民主的政治家
とは言いがたい、国民を不幸にしてきた近代・現代の事例も多い。

「No more power to the politician」のスローガンは、「レベルの低い政治家に
大統領として大きな権限を与えるよりも、今は立憲君主制の方がまだましでは
ないか」という、オーストラリア国民の『次善の選択』のように思える。

ここで注目したいのは、共和制であれ、立憲君主制であれ、エリザベス女王は、
その国家元首の選択をその国民の総意にゆだねている事であり、また共和制
をとった国でも32ヶ国、立憲君主国15ヶ国、その他君主国など6ヶ国、合計53も
の多数の国家が女王を盟主とする英連邦に参加している現実である。


英連邦に加盟の共和国 32
バングラデシュ、ボツワナ、カメルーン、キプロス、ドミニカ、フィジー、ガンビア、
ガーナ、ガイアナ、インド、ケニア、キリバス、マラウイ、モリディブ、マルタ、
モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ナウル、ナイジェリア、パキスタン、
セーシェル、シエラレオネ、シンガポール、南アフリカ、スリランカ、タンザニア、
トリニダード・トバゴ、ウガンダ、バヌアツ、ザンビア、ジンバブエ、

英連邦に加盟の独立君主国など 6
ブルネイ(サルタン)
レソト、マレーシア、スワジランド、トンガ(以上独立君主)
西サモア(終身立憲君主)


英国(UK)を日本と比較した時、他国に及ぼしている精神文化・文明の影響の
大きさで差があるような気がします。
良きにつけ悪しきにつけ、UKの英連邦諸国との深い関係は軽視できません。
『黄昏でない英連邦の絆』をもう一度ごらんください。
皆さんは、オーストラリアの国民投票の結果をどう受け止めましたか。



黄昏でない英連邦の絆

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