UKを知ろう

ヴァイキングの末裔同士で語りましょう



エリザベス女王、ハラルド・ノルウェー王を訪問



ヴァイキングの末裔はご親戚

 日本では報道されていない最近の王室情報をひとつ紹介しよう。
読者諸氏は、この王室外交の報道の中に、いろいろな話題を見出す
であろう。

 2001年5月30日のBBCのHPは、75歳のエリザベス女王が64
歳のハラルド王と懇談した情景を詳細に報道している。

 夫君エジンバラ公とノルウェーを訪問されたエリザベス女王は、お国
自慢の「トナカイの肉赤ワインソース、新ジャガ添え」を賞味しつつ、ヴ
ァイキング時代から続く歴史的な話題から、北海の石油や貿易、さら
には現代の英国アートやポップミュージック(BRIT POP)のノルウェ
ーに与えている影響まで幅広く懇談したという。



 晩餐会の席上、女王は、
「私たちはヴァイキングの時代については、お互いにからかいあうかも
しれませんが、ノルウェーから定住した方々は私たちの言語や習慣に、
今なお続く影響を及ぼしてきました。スコットランドの一部の地方はヴァ
イキングの時代の後も、ノルウェー領でした」

At a state banquet with Norway's King Harald, the Queen said:
"We may tease each other about the Viking era, but the Norse
settlers had a lasting influence on our language and customs.
"Some parts of Scotland remained Norwegian long after Viking
times."

  「私たちの親戚関係と私たちに共通する伝統は、先進工業社会とし
ての豊さと多様な関係を、今は下支えしています」

"Our kinship and our common heritage now underpin a rich and
diverse relationship as advanced industrial societies.

更に格調高く、
「私たちは、挑戦し変化している世界の中で、いかにして私たちの理想
を具現化するかということについて深淵な尺度の合意を持っています」
「このことが英国とノルウェーをこのようにごく自然なパートナーにして
いるのです」

"We have a profound measure of agreement on how to project
our ideals in a challenging, changing world.
"This is what makes Britain and Norway such natural partners."

と挨拶された。



 余談になるが、憶良氏が少し補足説明をしたい。

 まずは”ヴァイキング”である。日本では『海賊』と訳しているが妥当
ではない。『海賊』は"pirate"であるが、これが混用されて、仰々しい
"pirate"船が、「ヴァイキング船」という命名で芦ノ湖などに浮かぶ。
”ヴァイキング”は、『水軍』である。村落や国をあげての侵略や、交易
や、移住や、略奪をしていた水軍である。村長や、酋長や、国王自ら
が軍団を率いて出動していた。つまり集団の軍事政治行動であった。
他方、独自の民族芸能や文化、宗教を持っていた。
商船を襲って積荷を掠め取って、酒盛りをし、金貨を洞窟に隠してい
たような、無法者の"pirate"ではない。
 ”ヴァイキング”は、土地に根を下ろしていた水軍であり国家であった。

 ”ヴァイキング”の時代から、王室間の婚姻は多い。
 因みに、ハラルド王の祖母モード元王妃は、イングランドのエドワー
ド7世(ヴィクトリア女王の嫡男)の三女である。”私たちの親戚関係”
とはこの背景を指している。
 記憶のよい読者は「ロンドン憶良見聞録」の中の王室外交アスコット
を思い出しているかもしれない。そう、エドワード7世杯が示すように、
エドワード7世は競馬の好きな王であった。

 またハラルド王は、青年期オックスフォード大学に留学し、社会科学
歴史、経済を学ばれているように、両王家の親密関係は深い。

 女王が、”スコットランドの一部の地方はヴァイキングの時代の後も、
ノルウェー領でした”と述べたのは、スコットランド北部のシェトランド
諸島やオークニー諸島、ヘブリディーズ諸島などである。
これらの諸島は、13世紀ごろまでノルウェー領であった。
とりわけシェトランド諸島ではノルウェー人の定住者が多く、言語習慣
には今なお影響が深く残っているという。

 北海を中心とした地図を描くと、英国の北部は地勢的にもノルウェー
に近いことがよく分かる。
海洋民族は容易に移動できたのである。



 閑話休題
 女王はこのご訪問で、英国では最高位のガーター勲章をハラルド王
に授与された。

 ヴァイキングの末裔の両王国は、現在労働党政権であることも共通
している。
 それに、もうひとつ頭の痛い問題もオフレコで語りあったかもしれない。



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