UKを知ろう


小が大を呑む買収宣言(TAKE-OVER BID)

スコットランド銀行(BoS)がNATWESTを

ロイヤル・スコットランド銀行(RBS)も参戦



最近東チモール問題や台湾地震などアジア地域で大きな問題が
起きているので、一般の新聞には報じられていないが、今UKでは
「小が大を呑む公開買付け(TAKE-OVER BID)」が話題になっている。


公開買付けを宣言したのはスコットランド銀行(The Bank of
Scotland 略してBoS)。
買収の対象になったのは、なんと英国3位の大銀行名門NATWEST
BANK(旧名Natonal Westminster Bank)。

9月25日のBBC NEWSによれば、スコットランド銀行はNATWEST
グループを210億ポンド(邦貨換算約3兆7千億円)で、公開株式買
付けを正式に申請。
これに対し、NATWESTは「この小さなBoSによる敵対的買収には
戦う」と応戦の宣告。

「NATWESTの価値はそんな小さなものじゃない。この公開買付は
願い下げにしたい、歓迎されざる、悪意に満ちた思考である」
『unsolicited,unwelcome and ill thought-out』と反発している。

スコットランド銀行によれば、NATWESTという名前は残し、BoSとは
別の組織として活動させるとのことである。
また支店は半減し、NATWEST1730店、BoS320店、合計2050店舗
で営業したいとの意向である。

当然のことながらNATWESTの従業員組合も、相当の人員削減を
予想し、猛反発している。お得意様の会(the Association of Bank
Customers)の代表も「買収は株主のメリットになるかもしれないが
支店網の削減は不可避であり、銀行の利用者には何のメリットに
もならない」と発言。

しかし、この公開買付の発表でNATWEST株は282pと約30パーセ
ント高騰。スコットランド銀行の買付け価格を上回った。
スコットランド銀行株も50p値上がりし750pとなった。

スコットランド銀行総裁Jhon Shaw卿によれば、
「この買収は業績不振のNATWESTにはメリットになると思う。昨年
来合併について十分協議してきたが、合意を得るに至らなかった」
と、この買付けが突然の考えでない事を説明した。

9月26日事態はさらに進展。
スコットランドの発券銀行であるロイヤル・バンク・オブ・スコットランド
(RBS)も、250億ポンド(邦貨換算約4兆3千億円)で買収に参加。

当初はスコットランド銀行と、ロイヤル・スコットランド銀行の共同
買付けを両行は協議していたが、合意できず別々に公開買付け
なったとのことである。

一方、NATWESTを支援する動きもある。
欧州の大銀行フランスのSociete Generaleやドイツ銀行など数行が
WHITE KNIGHTすなわち「義を見て馳せ参ずる白馬の騎士」的な
支援者として動こうとしている。

NATWESTはスコットランド勢の敵対的買付けに対抗する為に、米国
の国際的な投資銀行であるゴールドマン・サックスに、正式に救援
(WHITE KNIGHT)を要請。防衛対策に出た。
こうした敵対的買付けの救援者をWHITE KNIGHT(白馬の騎士)
というのは、いかにも現代的な騎士道精神の表現のようで興味深い。




小さなスコットランド銀行と、スコットランドの中央銀行とも言うべき
ロイヤル・スコットランド銀行の両銀行が、かってはシティの雄であり、
イングランド金融界の象徴の一つであった旧ナショナル・ウェストミ
ンスター銀行を公開買付けに出た現実とその帰趨は、シティで4年
半過ごした「ロンドン憶良」氏には大変興味と感慨がある。
四半世紀前、邦銀各行が国際業務に本格的に乗り出した時、シティ
ではNATWESTにも大変お世話になり、指導や協力を受けて来た
からである。
しかし経営が悪化すると、かっての名門もこのような公開買付け
(TAKE-OVER BID)」の対象となる。

翻ってわが国では、いくつかの金融機関で「含み損の先送り」が
行われ、どうにもならなくなって、「金融秩序の維持と言う名目で、
公的資金という美名の税金の壮大な無駄使い」が行われている。

(「子孫に美田を残さず」というが「巨額の負債を残すのはおかしい」
我ら大正昭和の元禄世代は、大いに反省すべきであろう。)

金融機関側は「金融秩序の維持」という錦の御旗をすぐ担ぎ出し、
政治や行政が安易な「お助けマン」になるような甘えの構造がある
ように見える。
金融機関が政治や行政の介入をうけるようになった時には、経営の
独立性はない。
(余談ながら、公的資金はできるだけ早く完済し、独立性を回復し
てほしいものだ)

堅実経営に徹して内容の良い地銀が、経営内容はがくんと落ちて
いる大手都銀を、破綻前に公開買付で買収に入る(また当局も無
用な規制をしない)ような状況になれば、日本の金融界も 姿勢を
正し、本来の地味な堅実経営サウンドバンキングに徹し、内部留保
の充実を図ることに専念するだろう。
長期的には経済の血流である資金の循環が正常化し、日本の経済
も活性化するのではなかろうか。

金融ビッグバンとはこういう公的資金に依存しない厳しい試練に遭う
ことなのだと感じた。
皆さんは今UKで展開している「小が大を呑む公開買付け」をどう思
いますか。


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