UKを知ろう


世襲貴族議員を廃止した英国上院


ブレア首相の中世の清算




英国の議会制度は上院(The House of Lords)と下院(The House
of Commons)の二院制である。
文字通り訳せば貴族院と衆議院であるが、日本では俗にいうThe
Upper House/The Lower Houseから上院・下院と訳されている。

1999年11月、エリザベス女王が出席した20世紀最後の英国国会
(The House of Parliament)開院式には、数百年の伝統を引き継ぐ
上院の世襲貴族議員多数の姿が見えなかった。

ブレア首相の労働党内閣は、中世の残滓ともいえる世襲貴族議員
制度にバッサリとメスを入れ、廃止したのである。
貴族制度を廃止したのではなく、貴族だから世襲で議員の席を得
られるという時代遅れの特権を、遅れ馳せながら止めたということ
である。



上院議員1330人の構成メンバーは次の通りであった。
世襲貴族議員                     751人
歴代政権任命の一代貴族議員や
最高裁判事に相当する法律貴族
および2大司教・24上級司教など         579人
(参考までに英国の上院は最高裁判所も兼ねている。)

暫定的に92名の世襲議員が残されたので、659議席がなくなった。
この結果、上院議員は1330名から671名に一挙に半分にスリム化
された。
因みに選挙で選ばれる下院議員(MP)は659名であるから、上院
下院ほぼ同数になったといえる。

今まで世襲貴族議員が上院でどのような役割を果たしていたか知
らないが、10月26日の上院は、廃止賛成221反対81で可決したと
報じられている。
実際の政治は下院で決まっている。
国民からさしたる反対もなかったところをみると、当然の帰結だった
のだろう。

21世紀を迎えるにあたり、ブレア首相は時代にそぐわなくなった古
い国内の政治制度や植民地意識の改革、宗教戦争の終結などを
具体的に漸次実行しているように見える。
世襲貴族議員の廃止も、ブレア首相の政治改革の目玉であるが、
同時に、「中世の清算」の一環とみるが、いかがであろうか。



ところで日本の議会制度は、明治維新の際、英国の議会制度を参
考にして、貴族院と衆議院の二院制度であった。
しかし第2次大戦の敗戦により、貴族制度と貴族院は廃止された。
その代わりに、政党色に囚われない主として諸業界の専門家や学
識経験者を対象にした、高い視野にたつ審議機関として参議院が
創設された。

しかし参議院が所期の審議機能を果たさず、テレヴィやマスコミに
名の売れたタレント専門院に堕しつつあるのは皮肉である。
参議院の存在意義が問題になっているが、この際UKを見習って、
参議院の定数削減や議員の資格や選出方法の改定などを検討し
てもよいのではなかろうか。



余談であるが、国会開会式に出席する女王の到着前に、ビーフィ
ーター(Beefeater大食漢)と呼ばれる「The Yoeman of the guard」の
一団がランタン(角灯)を持って国会議事堂の地下室を見廻る儀式
がある。
彼らはチューダー王朝時代の赤い衛兵服を着て、女王の城である
ロンドン塔の警備にあたっている退役陸軍下士官である。

すでにお気づきの方もあろうが、1605年のガイ・フォークス火薬爆
破未遂事件に由来する伝統的行事である。
何が何でも機能的にというのではなく、このような遊び心の儀式を
残しているところはUKらしく面白い。




ガイ・フォークスの火薬陰謀事件とその背景

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