ロンドン憶良の世界管見


ロンドン憶良のホリエモン資本論考(2)


――報道界と公共性―




4 報道界と公共性

(1)現在のテレビ報道は公共性が高いといえるか?
  ――――いささか疑問である。この機会に国民も再考しよう。

 ライブドアによるニッポン放送株式の買収問題は、単に企業買収と
いう次元をこえて、さまざまな論議をよびました。
まともな意見もあれば、頓珍漢な意見も、テレビというマスメディアを
通じて流れました。玉石混交ですが、果たして国民はどれだけ理解
できたでしょうか。

今回は、新聞やテレビといった身近なマスメディアのあり方について
一石を投じたと思います。

新聞やテレビは、「マスメディアは社会の公器である」と言いますが
本当にそうだったのでしょうか。

 ライブドアが、リーマン・ブラザースから資金を調達して、市場内
時間外取引という合法的手段で、フジテレビの形式的親会社である
ニッポン放送の株式を大量取得したことに、主として自民党議員は
猛反発し、いろいろ発言しました。

 その意見を集約しますと、
「虚業か実業家はっきりしない若造のIT産業が、外資から金を調達し
て、マネーゲーム感覚で、こともあろうに公共性の高い放送やテレビ、
さらには新聞まで支配しようというのは、いかがなものか。けしからん」
ということでした。

 政治家がメディアの買収問題に容喙しすぎると、それ自体がメデイア
操作していることを証明することになりかねません。

 メディアが外国資本の支配下に置かれることは、問題がありますの
で現在、外国投資家の株式は20%に抑えられています。憶良氏もこ
れは当然の措置だと思います。

 しかしホリエモン氏は、純然たる日本人であり、ライブドアも日本の
企業です。しかも、ホリエモン氏は自分の保有株を担保に調達をして
いますから、外国人投資ではありません。邦銀が貸さなかったのか、
あるいは計画の漏洩を懸念して、外国の投資銀行を利用したのか
わかりません。日本企業の国際化とは、日本の企業が、国籍を問わ
ず内外の金融機間から資金調達することも、そのひとつです。
資金調達方法について、クレームは筋違いです。外資によるメディア
取得と見るのも誤りです。

 在任時「これからに日本は、IT(イット)産業だ」といって、世間の失笑
を買ったM元首相が、IT(インテリジェント・テクノロジー)産業のテレビ
業界進出を、「マネーゲームによる公共性の高いテレビ買収はけしか
らん」というのは、いかがなものでしょうか。

 財政収支黒字の時、一億円を津々浦々の市町村にばら撒き、「発言
明瞭、論旨不明瞭」と称されたT元首相同様に、論旨一貫しないのでは
ないでしょうか。

 こうした発言に対して、コラムニストの天野さんが、
「今のテレビ業界がはたして公共性が高いといえる報道をしているのか」
「自民党の議員がマネーゲームはけしからんといえるのかね」
という趣旨の発言を、テレビでされました。
テレビの常連である天野さんが、ずばりと「公共性に値する報道をして
いるのか」と批判されたことを、見事と感じました。

 NHKとBBCには、権力に対する姿勢に大きな差があります。ましてや
民間のコマーシャル収入に依存している民間TV局は、大口スポンサー
の意向にかなり気を使った報道あるいは不報道をしているでしょう。
 新聞もまた、購読料だけでなく新聞広告が大きな収入源ですから、
スポンサーに気を使っています。政府や政治家にも、気を使っています。
「ペンは剣より強し」とは必ずしもいえないことは、戦時下の新聞報道
で明白です。昔軍隊、今スポンサーです。

 ましてや、フジテレビは娯楽路線を売り物にしてきました。公共性の
高い報道内容という観点からでは、いかがなものでしょうか。
日枝会長が「経営の浮沈にかかわる問題を、(他社が)面白おかしく
報道するのはいかがなものか。われわれも過去の姿勢を自己反省す
る」旨の発言をされたとの記事を読みました。

 これまで新聞やテレビは、北朝鮮問題や竹島問題、あるいは韓国の
IT技術への取り組み、映画産業の育成、中国の家電産業の躍進などを、
継続的に追って、国民にきちんと報道してきたでしょうか。
地味な報道よりも、勝敗結果の派手な報道や、記者クラブ的同質報道
になっていないでしょうか。

 インターネットで、通信の双方向性と大衆化ができるようになりました。
テレビ業界が、一方的な報道で王座にある時代は、変貌するでしょう。

 ホリエモン氏が「新聞もテレビも無くなる」と極論したように報道されて
いますが、彼の英知では、「新聞やテレビが一方方向の報道の王座に
鎮座する時代では無くなる」とうことを、端的に表現したのが誤解を生ん
だのでしょう。


(2)傾聴すべきメディア論の紹介

 たまたま買った「週間ポスト」4月8日号に、立教大学社会学部服部
孝章教授(メディア論)の記事がありましたので引用、紹介します。

「日本の放送事業では、国が付与する放送免許を盾にして、政治的経
済的な支配者が競合相手を調整、新規参入を拒むとう、”談合”の図式
がいまだにまかり通っている。民主主義の原理原則には逆行している
世界です。

フジがとった方策も、政財界を巻き込んで常識外れの新株予約権の発
行を企て、それが阻止されると競合企業と提携するという、まさになりふ
り構わぬ企業防衛に他ならなかった。

『メディアの公共性』がその隠れ蓑に使われたのならそれは視聴者に対
する裏切りだ。今一度、メディアの存在意義、現場と資本との関係など
について論議されるべきです」

 本ホームページもまた小さなメディアです。インターネットの世界にも
善悪いろいろあります。これからますます発展し、テレビや新聞との共存
共栄の世界に入り、淘汰と発展が繰り返されるでしょう。
インターネットを含む『メディアの公共性』が論議されることを望みます。
皆さんは、どう感じますか。



  「白馬の騎士か漁夫の利か」は次回に   



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