ロンドン憶良見聞録

ハイ・テーブル



またまた心ならずもキザな題になつてしまった。
「ハイ・テーブル」とは、いったい何のこっちゃ・・・・やさしい単語である
のに、最初は何のことだかよく分からなかったのは憶良氏とて同じで
ある。

中世を舞台にした歴史小説などで、城や館のシーンによく出てくる。
そう、城主が真ん中にでんと座り、諸候がぐるりと着席して、ワインの
杯を掲げたり、肉を口にしている姿を、絵画や映画で見た読者諸氏も
多いであろう。

その通り、「一段高くなっている高貴な方々の着席される食卓」から転
じて「貴賓たちの座るテーブル」のことである。
念のためオックスフォード英英辞書を引いてみると、もともとの由来が
分かって面白い。

「High Table・・・・Table(on a dais)where senior members(Fellows,Dons)
of a college dine」

これを、憶良氏流に意訳すると、
「(説教やスピーチなどをするため、ホールの奥の方に設けられた壇上
の)食卓で、(寄宿舎制大学の学者や住み込みの事務長など)身分の
高い方々が食事をされるテーブル」 
ということになる。

余談になるが、オックスフォードの大学教授は19世紀半ばまで妻帯が
許されていなかったので、学者や事務長など職員は食事が大変楽し
みで、料理のうまいシェフを置き、食堂が立派になったという。

閑話休題。日本では結婚式の時、新郎新婦と媒酌人夫妻が一段高い
席に着く。あれほど高くないが、一般の者が着席する床より一段高くテ
ーブルが設けられているのが本来のハイ・テーブルである。しかし現在
では高い壇にはこだわりがなくなっている。

天皇陛下が外国からの貴賓をもてなす宮中晩餐会の、主賓や皇室の
方々が着席される横一列の席が、ハイ・テーブルである。
もちろんセッティングにより、Tになったり、円になったりすることもある。
日本ではメイン・テーブルと言うけれども、これは和製英語かもしれない。


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