UKを知ろう


聖パトリックの日、3月17日に注目(速報)



ワシントンで北アイルランド和平関係者が会談予定




北アイルランド和平会談は、武装解除問題でこじれ、目下北アイルランド
自治政府の地方分権ともども凍結状態になっている。
しかし、水面下では協議が進んでいるようである。

3月12日(日曜)のBBC NEWSによれば、来る17日、アイルランド系カトリ
ック教徒が祝祭するアイルランド守護聖人である聖パトリックの日に、
ワシントンで関係当事者が会談すると報じている。
同放送は内容が濃いので関係当事者の言動をまとめてみよう。
(日本のTVや新聞ではあまり報道されていないと思うので)



1 IRA政治団体シンフェイン党ゲリー・アダムズ党首は、3月12日共和派
(Repubricans)の集会で次のように述べている。

「北アイルランド和平交渉は最悪の事態になっている。
停止されている自治政府は直ちに再開されるべきである。
シンフェイン党からは友好的な手を差し出しているが、連合派(Unionists)
は拒否権を発動している。

(注)Unionistsをこれまで(UKへの)統一派と訳していましたが、
   アイルランド共和国への統一を志向する共和派と混同される
   おそれがあるという読者のご指摘もあり、連合派(連合王国派)
   と改訳しました。
   他の局面でも統一派は連合派(連合王国派)と読み替えください。

英国政府のマンデルソン北アイルランド担当相は、連合王国の圧力に屈し
て,(プロテスタントよりの)オレンジ・カードばかりを切っている。」
The Sinn Fein leader again accused Northern Ireland Secretary
Peter Mandelson of caving in to unionist pressure and "playing
the Orange card".

シンフェイン党は、マンデルソン北アイルランド担当相は武装解除問題
が袋小路になっている最中に、アルスター連合党のトリンブル党首の辞
任を阻止するためだけに、和平会談を凍結してしまったと解している。
The party believe Mr Mandelson suspended the assembly during the
arms decommissioning impasse to solely to prevent Ulster Unionist
leader David Trimble's resignation.

余談であるが・・・・ 
日本のジャーナリズムでは、共和派(Repubricans)という表現はあまり
使用されないが、BBCや現地報道ではカトリック系はRepubricansと報
道される。アイルランド共和国に属したいという政治思想である。
これに対してプロテスタントは連合派(Unionists)と呼ばれる。UKに属
したいという意向の人々という意味である。
宗教と政治思想の結びつきが明確である。
当HPでは共和派と連合派の代わりに、従来どおり,カトリック系とプロ
テスタントという表現を続けるが、現地の表現は理解しておいてほしい。

オレンジ・カードという諧謔的表現について・・・
Orangeはプロテスタントである連合派(Unionists)のカラーである。
1795年に北アイルランド・アルスターで結成された新教徒(プロテスタン
ト)の秘密政治結社の党員を「Orangeman」という。


2 一方アルスター連合党の方は、
「IRAの武装解除こそ直ちに実行されるべきだという姿勢に変わりはない。
我々は戦争はもう終わったんだと知りたい。それが広報されると知りたい。
武装解除が最良の広報なんだ。」
"It is very simple. We need to know the war is over and we need to
know that that is demonstrated. And that is of course best demonstrated
by decommissioning."

と、引き続き武装解除の実行を主張し、平行線のままのように見える。


3 アイルランド政府とUK政府
先週、ベルファーストでUK政府マンデルソン北アイルランド担当相とアイル
ランドのブライアン・コウエン外相が、このデッドロックを打開するために
会談したが、公式見解を表明するに至らなかった。

しかし聖パトリックの日、3月17日にワシントンで、和平合意文書の関係当
事者全員がが集結して協議をすると、さりげなく報じている。



4 注目したいアハーン・アイルランド首相の英駐留軍削減要望発言

オーストラリアを訪問中のアハーン・アイルランド首相は、3月12日、メルボ
ルンで開催されたオーストラリア・アイルランド基金の集会で、注目したい
発言をしている。

「まず、北アイルランド紛争に関係している全当事者が、もはや武力闘争
に逆戻りする選択肢はないということを承知したと国民が確信するならば、
それは信頼の構築に大きく寄与するであろう。
UKとアイルランド政府のみでなく関係当事者全員が、和平合意文書(the
Good Friday Agreement)の完全履行をなす責務がある。その実行にあた
る義務がある」と強調した。
"It would make an immense contribution to confidence-building
if the public could feel assured that every organisation that was
involved in the Northern Ireland conflict accepts that a return
to an armed campaign is not an option," he said.

"But all of us, not least the two governments, have an absolute
obligation to ensure that all aspects of the (Good Friday) Agreement
are implemented in full.

「このためには、北アイルランド、特に差別や紛争の激しい南Armaghなどで
は、英国駐留軍の配備を削減すべきである」と英国軍の削減に言及した。
"This includes the de-escalation of military dispositions by the
security forces as provided for in the agreement, especially in
certain border areas such as south Armagh, where they are still
a source of harassment and annoyance."

また、現在の危機状態を打開するために、北アイルランド自治政府議会は
早急に再開すべきと主張している。
Mr Ahern also said the best way to resolve the current crisis
would be to reinstate the assembly.

"Realistically, the institutions need to be securely in place
and working to create the right conditions for all the legitimate
expectations raised by the agreement to be fulfilled," he said.

「しかし最も大事なことは、いかなる方法で武器使用をやめるか決めること
こそが、双方の準軍事組織の「愛国者としての責務」である」と述べた。
But he added that it was the "patriotic duty" of paramilitary
organisations on both sides to decide how to put their weapons
beyond use.

アハーン・アイルランド首相のこの発言に、UK政府マンデルソン北アイル
ランド担当相は直ちに反応し、

「北アイルランドの英軍の規模は、現地市民の要望に応え、その安全を
守るレベルである。市民の恐怖がなくならない限り、削減するわけにはい
かない。これは先週ダブリンでの会談でも述べたことだ。適度の保安が必
要ということは十分認識している」と反論した。
But replying to Mr Ahern's comments Peter Mandelson told the BBC:
"Army levels in Northern Ireland are those required for the
protection of civilians against terrorism.

"Security cannot be reduced unless the threat falls away. I said
this in Dublin last week, and the need for proper security is well
understood."





アイルランド政府が、(憶良氏の前回指摘のように)IRAのみでなく、英国
軍およびプロテスタント側の準武装勢力の軍事削減に触れた点で、注目
したい。

UK政府がある程度の駐留軍削減で譲歩し、プロテスタント側テロ勢力の
武装解除もすすめることを条件にIRAが武装解除を開始するのではなか
ろうか。
IRAが武装解除する前提条件は、駐留軍削減であろう。

UK政府マンデルソン北アイルランド担当相としては、英国国民感情から
駐留軍削減には応じられないと発言しているが、アメリカやカナダなど第
三者の仲介で駐留軍削減案に譲歩するのではなかろうか。

アメリカでのアイルランド系カトリック教徒の「聖パトリックの日」の行進は、
大規模である。
「聖パトリックの日」に、劇的な進展がありそうな予感がする。





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