土曜日の朝はまだ小雨が降っていたが、入山口の入之波温泉のさらに奥の筏場に着いたときにはすっかりあがって絶好の沢日和になっていた。 ガイドによれば入渓点は林道からさらに仕事道を詰めた先、馬の鞍沢との二股だが、時間の余裕があるし、登山道はかったるいということで林道終点から白倉又沢に入渓した
 ガイドにものっていないので二股までは平流が続くのだろうと考えていたが、6m、4m、15mと登れない滝が続き、やっとゴルジュを抜けたと思うと、右の支流には50mの大滝がかかり、本流には20mの斜瀑がかかっていた。20mの斜瀑は左が登れそうで登れず、さらにその先にも15mの滝がかかっているのが見えたのでついでに巻き、も一つついでと8m位の滝も一緒に巻いた。
 ようやく、流れはおとなしくなったが、二股までの間にさらにいくつか滝をかけ、左の何もないところから水がとうとうと滝になって流れ込んでいる不思議な光景があったりと、飽きることがない。
 ようやくたどり着いた二股の滝は10mではとてもきかず、水量が多くつらそうなシャワークライミングを避け右の薮のきわを登ったが、あしもとがずるずるの笹薮で泥だらけになってしまった。笹をかきわけ飛び出した先は明るく開けた別世界になっており、その先には・・・ 轟音を響かせ、圧倒的な高さの大滝がかかっていた。ガイドには20m、10mの2段と書かれているが、どうみても60mはあるすばらしい大滝だった。左に立派な巻き道がついており楽に越えることができたが、そうでなければ尻尾を巻いて逃げ出すところだ。
 その先のゴルジュには4m程度の滝が4本かかっていたが、3本までが2条になっていた。3本目の滝には釜があり足があと数センチ長ければへつれるのだが、残念ながら私は泳ぐしかなかった。 大きな枝谷が入った先には5mの滝、6mの滝と続いたが、いずれも下部がえぐれた形になっていて登れそうで登れず、左から巻いた。さらに滝が続いた先には20mの斜瀑、なめと続き細い廊下となった。
 廊下の出口には6mの滝がかかり抜けられそうにない。ゴルジュの左側の斜面を少し進んだところが楽に登れそうだったのだが、なかなか恐い一歩がありエイリアンを残置しそうになった。
 続いて7mが2段になった滝は左から巻く。小さく楽に巻いたのだが沢に降りるところがずるずるでこれまた一歩が出ない。手持ちのシュリンゲではどうしても足りず、ザイルを出して懸垂した。突っ込む前にちゃんとシュリンゲを集めておくことを忘れなければもっと簡単に降りられただろう。
 沢に降りた先の8mの滝は上からはとても登れそうに見えなかったが、取り付いてみると右側を意外と簡単に登ることができた。少し進むと、再び廊下となり奥に20mの滝がかかっていたが、少し手前のルンゼから簡単に巻くことができた。 この先はがらっと雰囲気が変わり、谷は明るく開けていた。二股までと思っていたが、前に滝が見えた途端に元気が無くなり、右から大きな枝沢が入っている所を今晩の天場とし、今日の遡行を打ち切った。
 日曜日は昼から天気が崩れるとの予報だったため、午前中に下山してしまおうと5時に起きた。しかし、6時にはすでにぽつぽつ雨が降り出し、出発する頃には本降りになっていた。
 すぐの4m、10mの滝は右から簡単に登れそうと取り付いたが、雨の日の朝一番はどうにも気合いが入らない。最後のいやらしそうな落ち口を斜面に逃れた。最後は4m、20mの斜瀑。これは落葉と泥を慎重に落としながら左側を登る。結構しっかりしたホールド、スタンスが豊富にあり簡単に登れた。
 ここから二股までは再び開けた明るい谷が続く。二股は思ったより、狭く昨日の場所を天場に選んだ事は正解だったようだ。雨が降っているという大義名分が得られたため、ドライブウエィまで詰めることはやめてさっさと下山することにした。馬の鞍沢に向けて尾根を乗っ越せる場所を探して右股に入ると、ほどなくおあつらえむけの緩やかな谷が見つかった。緩やかなと言いながらも足元がずるずる崩れる斜面を笹に掴まりながらひーひー登った尾根には仕事道がついていた。
 うまく探せばこの道をつかって楽に登れたようだ。出たり消えたりする仕事道をたどって南北に伸びる主稜線に登るとそこにはさらに太い仕事道が・・・。乗っ越して馬の鞍沢へ下る計画は、この道を見た途端に挫折し、楽そうな道を下ることにした。しばらく下ると尾根は西に向かい太い道もそちらへ続いていた。このままだと沢に追い戻されてしまいそうだったが、うまい具合に北へ向かう踏み跡があったのでそちらへ向かう。しばらくは明瞭な踏み跡が続いたが”このまま下まで下れればラッキーだね”といった途端に踏み跡が消えてしまった。
 後はあーだこーだと言いながら楽そうな場所を選んでとにかく北向きに下る。それでも少し西に寄りすぎていたようで希望より早く白倉又沢にぶちあたってしまった。今度は東へ、東へトラバース。どうやら正解らしい明瞭な尾根を再び北へ向かうとうまい具合に大滝の巻き道にぶちあたった。泥だらけになって登った沢の入り口の滝は懸垂するしかないと覚悟を決めたら、立派な巻き道が見つかった。”このまんま林道まで道がついてたりして”と言うと、その先には本当に崩れかかった杣道がついていた。だがやっぱり世の中はそんなに甘くない。途中で道は崩れ、再び沢に降ろされてしまった。今回の下山路はうまくいくと思うとうまくいかなくなる、ああだめだと思うとうまくいくようで、踏み跡はすぐに見つかった。3時間ほどかけて沢の下部はたったの20分だった。
 白倉又沢はいくつも大滝、小滝をかけ、登り、高巻き、へつり、さらに泳ぎ、下山のルートファインディングまで詰まった充実した沢だった。