<H1>菊池鈴々の「RinRin日記」</H1>

2002年5月分

それぞれタイトルのあたまにジャンルの目印をつけています
主な内容は、■本 ●漫画 ▼映像 □雑誌 ○同人誌 など

■本と●漫画は独断評価つき(5点満点:★1点・☆1/2点)
文中敬称略

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05/30(木)

優しくせめないで/きたざわ尋子 ★★★★★
小説エクリプスで読んだものに書き下ろしおまけつき。
高校時代の陸上部での辛い過去にとらわれ、前身から拒否オーラを出して暮らしている美貌の大学生・真宮が、よくわからない調子のいい男・自称高校の後輩・倉木に、自分を追い詰めてたい内心を読まれて、身体だけのつきあいをしようと持ちかけられる。「通りすがりの旅行者」だから「俺のことを好きになっちゃだめですよ」とか平然と口にする男の勢いにのまれ、アパートに転がり込まれて短期限定同棲状態になる。
仕掛けたほうも仕掛けられたほうも、本気の恋が始まるとは思っていなかったのに、倉木の素性と真宮の過去との意外な接点があきらかになるにつれて、ぬきさしならない恋が展開する。
倉木のキャラクターが、特に口調が、この話を引き締まったものにしている。
ひらがなもカタカナもさくさく読むうちの息子が、この本の帯の「いっぱい、いじめてあげますよ。」を音読したのち「…だって、いやだねー」とのたまう。ボーイズ本のタイトルなんかは読みながら聞かれても意味を説明せずに「そういうタイトルなのよ」の一点張りでごまかしてきたのに、なまじ文章なだけに、ごまかすのがつらい。帯まで読まんでも…。いや、そもそもいまや表紙や口絵だって充分やばいんだけど。しっかし、今後、隠さなきゃなんないのかなあ、この量の本を。

05/29(水)

□Charade 7月号
谷崎泉の「君が好きなのさ」が22話目でついに完結。べりべりはっぴーえんど大団円。この話はこれでいい。これまで文庫時についていた書き下ろしの視点違いの短編がどれもすっごく良かったので、本編終了後もサイドストーリーが読みたいぞー。いっぱい出してほしい。
魔鬼砂夜花の「俳優&家政夫シリーズ・結婚狂騒曲#02」も好調。お金の為に家政夫をしている稔(みのり)くんに手切れ金を5千万まで口にする江坂の母。もちろんひっかけなんだけど、その申し出を断ったことで「愛情のかたち」について、自覚とか覚悟とか、根性とか気合とか(笑)、一層必要になってくることでしょう。がんばれ、稔。
私は実は性格破綻者の江坂が、けっこう気に入っている。愛情の示し方が、はずしまくっていて、いっそ哀れを感じるほどだ。
神楽坂はん子の「妄想博覧会」は「仮面ライダー龍騎」をとりあげていて、抜群の出来。つっこみの入れ方も素晴らしい。
青池周の「真夏の被害者番外編・俺に吼えさせろ!」はリュウ視点で楽しい仕上がり。
芹生はるかの「プライム・タイム14」は再度の浮気ネタ。梶さん、だらしなさすぎ。慎くんがあっさり許し過ぎなので、説得力に欠ける。
依田沙江美の「勇気x昇シリーズ・千の花(全編)」はシリアスな展開。勇気の父親のお葬式が、知らないままにすんでいて、気にするなと言われしまうと、立つ瀬がないではないか。   

05/27(月)

可愛いひと。5/高岡イズミ ★★★★★
姉の元夫と両思いとなり、養子縁組のゲイ婚入籍もすませたラブラブな高根千尋・絢一のふたりだが、絢一の姉(つまり千尋の元妻)の出産もあり、両親が健在な千尋がカミングアウトするエピソードありで波乱の一幕。
今回はなんだか、ストーリーの大筋の流れと、セックス描写シーンのつなぎかたに無理があったように思う。絢一くんが乱れて、千尋さんがのめりこむという描写大サービスがこのシリーズの大きなポイントでもあるし、えっちシーンそのものの問題ではない。流れ的に唐突なかんじがぬぐえなかった。

05/22(水)

□小説Chara vol.6
菅野彰の「毎日晴天!シリーズ」は、今回のメインがSF作家の阿蘇芳秀なので、いつもより、まどろっこしさ倍増の上、わかりにくさ三倍増しというすごいエピソード。
過去をふりかえりこれからに繋ぐ、大事なところではあるんだけど、この雑誌で初めて読む人にはつらいよなー。そういう読者は何割くらい? …いないか、読み飛ばすのかもね。
篁釉以子の「真夏の合格ライン」は純情一途な男の子が、俺様な相手に、バージンなのにセックスフレンドになりたいと持ちかける話。恋人にしてほしいと願わないあたりが、自信のなさの現れなんだけど、その不器用なちぐはぐさが恋を勝利に導くのだった。
池戸裕子の「KISSのシナリオ」は、脚本家と若手俳優の仕事を通した軋轢から恋が芽生える話で、撮影関係の描写はいいんだけど、ラブラブな空気が希薄で物足りない。
神奈木智の「甘い夜に呼ばれて」はイタリア映画の宣伝のためによばれたイタリア語の通訳が主人公。映画の日本での宣伝を担当しているのは、かつて行きずりで一度だけセックスした相手だった、という展開。幼少時の事件のトラウマのため車に乗れないなど、通訳としては大きなハンデを背負っている。イタリア人子役女優・その母親との交流もふくめて、あたたかいストーリーが読後感を良くしている。続編足して早く文庫にしてほしい作品。

05/28


05/17


05/15(水)

愛がなければやってられない/菅野彰 ★★★★★
古い小説を今頃紹介して申し訳ない。初版は1999年。買う本のほうが読む本より多いものだから、そうこともあるってことで。
漫画雑誌編集者x看板漫画家。当人同士は、はとこでおさななじみ。本人同士は告白もできないままだが、子供の頃からの相思相愛。大人になってやっとうちあけあってなんとかなるんだけど、この本の見所は、その編集者と漫画家の激しい締め切りとの戦いにある。愛の言葉もあるにはある、すごい人情味もある、んだけど、インパクトでは「もう絶対無理だ! どう考えたって上がりっこないよっ」という極悪漫画家に対して敏腕女性マネージャーが「大丈夫です、先生」「手を動かしてれば、必ず終わりますよ」と言うくだりのほうが、ココロにしみる。
この作者の徳間書店Chara文庫の「毎日晴天!シリーズ」にも、小説誌編集者x看板小説家、というのは出てくるが、そちらのほうは、ここまで執筆活動の修羅場に重点をおいていないので、テイストの違いを堪能できる。

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