<H1>菊池鈴々の「RinRin日記」</H1>

2002年2月分

それぞれタイトルのあたまにジャンルの目印をつけています
主な内容は、■本 ●漫画 ▼映像 □雑誌 ○同人誌 など

■本と●漫画は独断評価つき(5点満点:★1点・☆1/2点)
文中敬称略

INDEX



02/21(木)

アニパロとヤオイ/西村マリ ★★★★★
太田出版の「オタク学叢書」第7弾。
なにより、読みやすく整理した情報の量と質はすばらしい。アニパロの定義と歴史的な流れと、時代的な関連を、シンプルに読みやすくまとめた力技はおみごと。
観念だけでつづられるものと違い、安価なコピーやビデオの普及、ワープロ/パソコンの発達などをからめた社会的状況分析はわかりやすいし、アニパロ内部のイメージの共有のありかたも簡潔に提示した上で"この業界"そのものを肯定しようとする、心意気がたのもしい。
ジャンルの隆盛の流れとは別に、ひとつのジャンルの内部での発展の仕方、ものの見方の共有、などにも細かくふれていて、例としてあげられているのは「トルーパー」だけれども、汎用性のある論になっていると思う。
アニパロへの愛情がメインということで、ここでのヤオイは主にパロ同人誌のことで、商業誌、オリジナルやおい(耽美系小説/コミック)は、それらの作者のスピンオフ的に紹介されているにとどまる。また1975年コミケ元年を起点としているので、黎明期ネタはあまりないが、ないものねだりをするのは野暮というものだろう。この本が出たことによって、あの頃はああだったとか議論が活性化するためのきっかけになるのもまた、本望なのではないか。
少しだけ個別にみていくと、(P130)「フリフリの可愛い服が大好きな男性も結構多かったようだ。女性の肉体にではなく服に反応する。」はセーラームン時代の解説だが、これは、昨今の"服の延長で猫耳とか触覚とかに反応する人々"の流れにつながっているように思う。(P222)「箱庭のような世界」や(P236)「連歌のような座の文芸」としてのアニパロという主張にも説得力がある。ただ、著作権などについては、もう少し別な視点の論議も必要だろう。経済の論理はもう少し複雑なからみかたをしていると思うから。
そもそも、この『アニパロとヤオイ』を手にする読者はオタクに決まっている(笑)。オタク的なものをネガティブなイメージで捉えている人々の手に届くまでは、時間がかかるかもしれない。でも、自分のしていることを肯定的に力強く訴えている文章を読んで「腑に落ちる」オタク読者が"内的な後ろめたさ"と闘うための一助となりうる。力作。

02/15(金)

●ちょびっツ(4)/CLAMP ★★★
迷子の人間型パソコンをゴミ捨て場でひろって、素性が謎のまま同居している男子大学生の話。
私もおたくと呼ばれる身(自称しているわけではないが)だけど、おたくもいろいろなのだ。この「キャラ萌え大肯定」マンガがそれほど楽しめないのは、私が女性だからなのか。それとも、美少女型パソコンではなく、美少年/青年パソコンだったらいいのか(笑)、というとそうともいいきれないのだが。作者(達)の目線が、読者より上にあるような気配がつらいのかも。
「アンドロイド」または「ロボット」と呼ばずに「パソコン」といってしまう言語センスや、ネットワーク関連ネタやモバイルパソコンのデザインなどには好感がもてる。絵本で含蓄を表現するスタイルもCLAMPっぽい。「キャラ萌え」自体は別にいいと思っているので、要するに自分は「萌え体質」じゃないってだけのことなのかなあ。

02/08(金)

有罪/和泉桂 ★★★★
売れっ子ミステリー作家x担当編集者モノ。編集者視点
人生の方向を左右されるほどいれこんでいた作家の担当になった青年編集者と、性格が破綻しているという噂のお金持ち作家の物語は、みどころ満載で楽しめる。
編集者くんに婚約者がいることもあり、なかなか恋愛だと自覚できない。原稿依頼とセックス強要とがからんでいることと、男に抱かれて歓ぶ自分を認めたくない、などなどがからんで、婚約者をそっちのけにしてる時点で気がつかないいのが不思議なくらい。それが恋でなくてなんなのよ、と、つっこみながら読めます。

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