森の中に立つ清新北ハイツ

酒井 均   

1 北ハイツの森の樹木たちー種類と本数

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写真1森の中に立つ北ハイツ8号棟
7号棟上階より見下ろす。
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図1北ハイツ内樹木の種類と本数(15本以上)
緑:常緑樹;黄色:落葉樹 平成18年7月
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図2北ハイツ内樹木の種類と本数(15本以下)
緑:常緑樹;黄色:落葉樹 
図1とは横軸のスケールが違う。平成18年7月
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図3北ハイツ生垣の植物
樹木量を生垣の長さで表す。1m当たり2―3本が植えられている。サザンカは814m 平成18年7月
「清新北ハイツは高層や超高層棟の上階から下を見ると、まるで森の中に立っている住宅のようです」
これは清新北だより134号によせられた理事長さんの新任挨拶の一節です。森の中とは大げさなと思われる方もおられるでしょうが、私は理事長さんの感想に全く同感です(写真1)。

しかし、「森の中」を感じるためにわざわざ上階に登る必要はありません。私は7号棟に住んでいるので外から帰る時は7号棟側の入り口、写真1の右手から入ります。歩道から一歩踏み込むと正面にクスノキやケヤキを中心に緑が広がり一瞬林の中に踏み込んだ思いがします。

夏は蝉の鳴き声が、秋はマツアオムシの鈴音が、その思いをいっそう強くします。北ハイツは25年ほど前には無毛の埋め立て地でした。理事長さんも書いておられるように、いまの緑濃い環境からは想像もつかないことです。

 それでは北ハイツの森にはどんな木が何本,どんな配置で植えられているのでしょうか?
この問いに答えられる人は意外と少ないのではないでしょうか?私自身もつい最近まで答えられませんでした。

そこで理事会の環境・緑化担当の副理事長にお願いして、本年(平成18年)7月植栽管理業者によって確認された樹木表をいただきました。また理事会顧問のSさんが平成8年の調査による樹木表と植栽配置平面図を探して下さいました。

本年の資料によると、北ハイツの森には生垣を除くと常緑樹が25種、約1080本;落葉樹が26種、約410本、総計約1490本の樹木が植えられています。これに加えて、6種の常緑樹からなる生垣約1400mがあります。生垣1mごとに2―3本の木が植えられているそうですから、生垣の木の本数は3千本近くになる勘定です。

この他にも各種ツツジ、シャリンバイ、アベリアなどなどの低木が生垣として植えられています。これらは面積で数えるようですが、ここでは取り上げません。

これらの樹木の内訳を分かり易く示したのが図1、2、3です。図1と2は横軸(本数)のスケールが違うこと、また図3の横軸は本数ではなく長さ(メートル)であることにご注意。

常緑樹と落葉樹は種類ではほぼ拮抗していますが、本数では前者が後者の2.5倍もある上、中高木のマテバシイ、クスノキ、シイノキなどが優勢です。これら常緑広葉樹の分布からも北ハイツが四季を通じて緑に恵まれている理由がよく分かります。

それでは、どこにどんな木が植えられているのでしょうか?
この疑問に応えるべく、上記の平成8年の植栽平面図を片手に、北ハイツの森を歩いて見ました。

この平面図はいわば森の植物マップと言うべきもので、北ハイツを5つのブロックに分け、樹木の配置を詳細に示したものです。私のような素人でも比較的容易に木の名前を知ることが出来ます。色々と発見がありました。その幾つかを書き留めてみました。

なおこれらの資料は、住宅所有者であれば、管理組合事務所でどなたでもご覧になれます。

2 “森”を演出するクスノキとケヤキ

北ハイツの森の主役は、数の上では、常緑樹ではマテバシイ、落葉樹ではユリノキです。しかし森の雰囲気を醸し出す役目はどうやらクスノキとケヤキが担っているようです。

マテバシイはブナ科のマテバシイ属の植物です。耳慣れたシイノキはブナ科でもシイ属のイタジイとツブラジイの総称で、マテバシイとは別属です。しかし、いずれの実も生で食べられます。191本のマテバシイは北ハイツの至る所で建物の廻りや道路沿いに植えられています。試しにわが7号棟の廻りを数えてみるとおおよそ26本もありました。写真2に同棟南側のマテバシイを示しました。
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写真2:7号棟南のマテバシイ
左3本がマテバシイ。右の高木(葉だけ)はトチノキ。刈り込まれた低木はツバキ(約が20本ほど)、その手前はオオムラツツジ。 平成18年8月

マテバシイの多くはこのように各棟の植え込みの中や通路にそって4―5本ずつ並んで植えられています。しかし幹周り(地上1.2mの)の小さな中木が殆どで意外と目立ちません。

これに対して、クスノキとケヤキは幹周りが50cmから1m近くの高木が多く、一本一本が存在感を持っています。彼らは建物からすこし離れて植えられることが多く,時に通路を2分したり,或は中庭の真ん中に立っています。しかし枝葉を空に向かって大きく広げ、辺りに涼しい木陰を作ります。写真1で見られる“森の一角”にはクスノキ3本、ケヤキ5本が植えられています。この下に入ると夏の太陽の下でもなお森の雰囲気を感じることができます。

北ハイツの森を演出する主役はクスノキとケヤキで、マテバシイは脇役だというのが私の実感です。

3 北ハイツを守る“ねずみの糞”

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写真3 6号棟沿いのカイズカイブキの生垣。
クスノキその他は江戸川区所有。右手は道路をへだててマルエツ。平成18年8月
家の廻りを生垣でかこむのは日本古来の習慣です。北ハイツも四方を生垣で囲まれています。マルエツに面した東側、6号棟沿いはカイヅカイブキで囲まれています(写真3)。カイズカイブキは北ハイツの中では唯一の針葉樹ということになっています。しかしその葉をよく見ると先端が丸く針とは言えません。

カイズカイブキは日本原産の針葉樹、イブキ(ビャクシン)の変種で葉の先きが丸くなるものを選別したものだそうです。

北ハイツの西縁はサンゴジュの長い生垣で区切られています(写真4)。この樹の名前の元となった赤サンゴのような実を探しましたが、僅かに一房見つけただけでした。代わりにミンミンセミの抜け殻がいくつかありました。

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写真4 北ハイツ西側のサンゴジュの生垣
左は管理棟、右はシティーコープ。インサートはサンゴジュの赤い実。8月16日
セミの抜け殻はこの時期、サンゴジュに限らず、至る所で見られます。セミにとっても北ハイツは緑豊かな森なのです。

生垣の中でも私の興味を一番そそったのは北縁と南縁のトウネズミモチの生垣です。私は勿論そうでしたが、皆さんの中でもネズミモチは知っていてもトウネズミモチは初めて聞くという方が多いのではないでしょうか?

手元の植物図鑑によると、ネズミモチの名はその実がねずみの糞に似ていることから来ています。漢字では「鼠黐」と書きます。ネズミノフンともネズミノコマクラとも呼ばれるそうです。しかし「黐」はモチノキなどからとる「もち」のことで「フン」のことではありません。フンでは上品ではないのでモチにしたのでしょうか?

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写真5 2号棟北の駐車場の境界に植えられた
トウネズミモチの生垣 平成18年8月
ネズミモチが在来種であるのに対し、トウネズミモチは中国から来た外来種です。頭のトウは唐です。

トウネズミモチの生垣は北ハイツの南側(7号棟,8号棟側)と北側(2号棟)の駐車場の外縁に沿って伸びています。トウネズミモチ4―5本毎にシイノキも植えられています。南側は剪定されたばかりと見えて、あまり見栄えがよくありませんが、北側は葉が密生して頼りになりそうな生垣です(写真5)。ねずみの糞などとは言わせないぞという勢いです。

トウネズミモチは6月から7月にかけて房状に密に並んだ白い小さな花を咲かせます。今年も7号棟側では花が咲きました。しかし写真を取り損ねたので前橋市の青木繁伸氏の写真をお借りしました(写真6)。2号棟側ではどうでしょうか?これだけ長い生垣です。一斉に花を咲かせれば見事でしょう。2号棟付近の住民の皆さんの中でトウネズミモチの生垣で白い花をご覧になったことがおありの方は是非ご一報下さい。
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写真6トウネズミモチの花
前橋市にて2005年7月9日 青木繁伸氏(群馬県前橋市)撮影提供

トウネズミモチは排気ガスに強いと言われています(根拠については不勉強で知りませんが)。駐車場に植えられたのはそもそもそのためではないでしょうか? 高速道路出口と清砂大橋の出現以来、2号棟の北を走る船堀街道は車の通行量が増加しています。トウネズミモチが排ガスに耐え可憐な花を咲かせてくれることを期待しましょう。

4 最後の一言

北ハイツの森の樹木は言うまでもなく私たちの共有財産です。今回管理組合の資料のお陰でその内容を初めて知ることが出来ました。その概要のご紹介をかねて私の感想を書き始めたのですが、私の悪い癖でまた長くなりそうです。この辺で終わります。ただ、北ハイツの落葉樹ではもっとも本数が多く、またこの時期緑豊かなユリノキについて触れないのも片手落ちです。ユリノキ写真だけでもご覧下さい。H18年8月19日

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