海紅豆(カイコウズ)ー 帰って来た南国の艶花たち

酒井 均   

 

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写真1:江戸川区球場の中央分離帯の海紅豆
2006年6月26日(歩道橋完成後)
江戸川区球場前の歩道橋に立って東を眺めると放射16号線が環7を越えてまっすぐ伸びています。埋め立て地に開発された道路らしく気持ちがよい眺めです。視線を眼下に移すと中央分離帯に植えられた6本の木に気づくでしょう。6月には写真1のように一面に赤い花を咲かせました。アメリカデイコ、別名海紅豆です。更に球場側の歩道にも1本あり計7本のアメリカデイコが植えられています。これを書いている9月初め現在、2度目の開花を迎えています。

私がこの花を初めて見たのは歩道橋の建設が始まる数年前の平成13年(2001年)でした。初めて見る花で名前も知らなかったのに、情熱的な赤い花にすっかり心を奪われてしまいました。数日後再び来てみると熱心に眺めているご婦人を見つけました。思い切って花の名前をお聞きしたところ、カイコウズですという答えが返って来ました。どんな字を書くんですかと聞くと、手のひらに海の赤い豆と書いて海紅豆ですと教えてくれました。調べて見るとアメリカデイコの別名で豆科の植物です。アメリカを外した「デイコ」は同じ科の別種の植物で良く似た花を咲かせます。両者とも南国育ちで、アメリカデイコ(海紅豆)は鹿児島県の県木、デイコは沖縄県の県花になっています。まさに南の國の艶花です。

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写真2:歩道橋建設前の中央分離帯の海紅豆
2001年6月16日

当時買ったばかりのデジカメで早速写真をとりました。写真2は全景で全部で6本の木が中央分離帯に植えられています。花の写真も接写で撮りました(写真3)。これは自分でも驚くほど魅力的な出来映えで、いまでも私のパソコンの壁紙に収まっています。当時は球場側の歩道に更に2本植えられていましたから全部で8人の美女が艶を競い合っていた訳です。海紅豆は初夏に花を咲かせた後、9月頃に2回目の花を咲かせます。だから初夏から初秋にかけて随分長い間目を楽しませてくれます。

その翌年もまた海紅豆は赤い花を夏過ぎまで咲かせていました。しかし突然異変が起こりました。10月に入ったころ、すべての海紅豆がショベルカーで掘り出され何処かに運び去られてしまったのです。工事の方に聞いて見ると放射16号線と歩道橋を造るため一時何処かの河川敷に避難させるということでした。

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写真3:写真2の海紅豆の花
歩道橋と放射16号線が開通し、待ち望んだ海紅豆が戻って来たのは平成16年の1月頃でした。2年振りのご帰還です。まだ藁や縄のようなもので幹をぐるぐる巻きにされた痛々しい姿でした。このときの写真は残っていませんが、花は咲かなかったと記憶しています。 それから2年目の本年7月、赤い花が咲きました(写真1)。まだ往年のつやつやしい赤には及びません。しかし復調の兆しは十分です。来年が楽しみです。

しかし残念なことに、移植された8本の海紅豆の内帰って来たのは7本でした。移植の時期などを確認するために放射16号線を管理する都の第5建設事務所に電話して知ったのですが、残りの一本は、スペースの関係で地下鉄木場駅入り口付近(永代通りと三つ目通り交差点)の歩道に移植されていました。

7人の仲間から離れて独りぼっちになった海紅豆を早速(7月7日)尋ねてみましたが、一回目の花は既に散っていました。しかし9月にいくと2回目の開花が始まったばかりでした。場所と海紅豆の写真を右のGoogleマップで見て下さい。マップ下のボタン「木場駅」をクリックすると地下鉄東西線木場駅入り口付近の衛星写真が現れます。縦に走るのが3つ目通り,横が永代通り、赤いマークが海紅豆です。位置がハッキリしない方はマップ右上のボタン「地図」をクリックして普通の地図にしてみて下さい。

マップの縮尺率は左のスケールで大幅に変動できます。またマップの位置はマウスでドラッグ,或は右上の矢印をクリックすることにより東西南北に移動させることが出来ます。もし動かしすぎて迷子になったら「木場駅」のボタンをクリックすれば元に戻れます。

再び「航空写真」に戻してから赤いマークをクリックすると説明文が現れます。更に下線部分をクリックすると目的の写真にリンクします。写真の左手が永代通りです。

写真で見るようにここの海紅豆は歩道橋下の7本と較べ一回り大きく立派です。恐らく写真2の左端の一番大きな木が木場駅付近に移植されたのでしょう。清新町の住人としてはすこし残念です。しかし忙しい交差点に立って、信号待ちの通行人に涼しい木陰を提供している海紅豆を見ると苦情も言えません。なお写真からもとに戻るには写真のページの右上または左上のXボタンをクリックして写真のページを閉じて下さい。

同様に「江戸川球場前」をクリックすると冒頭の中央分離帯の衛星写真が現れます。よく見ると中央分離帯は土をむき出しにしたままです。現在はツツジなどの低木で覆われていますから、写真は歩道橋が完成して間もなくとられたものでしょう。海紅豆もまだ3本しか植えられていません。球場前の歩道にもまだ植えられていないようです。中央分離帯の5本目と球場側歩道上のマークは現場と比較して私が入れたものです。これらのマークをクリックすると現在の様子を見ることが出来ます。

北ハイツの近くの海紅豆といえば葛西臨海公園に植えられた約17本をあげねばなりません。インターネットでこれを知った翌日、お天気もよかったこともあって早速公園に出かけました。公園入り口に近い管理事務所で場所を確認し,地図を片手に歩きました。ここではGoogleマップを見ながら歩きましょう。

マップ下のボタン「葛西臨海公園」をクリックすると公園の東半分をしめる野鳥保護区が現れます。左端の赤いマークは公園入り口に一本だけ植えられた海紅豆です。しかし右端の2つのマークの間の「海紅豆の並木」がさしあたっての目的です。私たちは炎天下うっかり水も持たず歩き出したので、道のりの三分の一も歩かないうちにへたばってしまいました。しかし今更戻るのもばかばかしく、マイペースで、適当に日陰で休みながらやっとの思いで海紅豆にたどりつきました。久しぶりの達成感を味わいました。

海紅豆は遊歩道が海沿いにゆっくり曲がり始める辺りから見え出し、全部で17-8本ありました。花はまだ7分咲きくらいでしたが、球場前の中央分離帯に較べ背も高く数も多く見事な眺めでした。衛星マップの2つのマークをクリックして海紅豆の並木を見て下さい。

私たちは長い散歩で疲れた体をシーサイドホテル江戸川の喫茶室で癒した後、都バスで帰りましたが、出口で振り返ると窓越しに「公園入り口の海紅豆」が最後の別れを惜しんでいました。

後日談ー沖縄のデイコ

この章を書いてから暫くして8日間のパックツアーでギリシャを旅しました。パックツアーの楽しみは観光だけでなく思いがけない出会いにもあります。この旅でも大きな写真機をもたれた松本達子さんと親しくなりました。沖縄からとお聞きして思わずデイゴについて伺ってしまいました。ご存知どころかかってご自身で花を撮影しておられるとのこと。さっそく私のホームページに掲載したいとお願いしたところ帰国後この花の写真を送って頂きました。またタイワンデイゴ(海紅豆の沖縄方言)はじめ、マルバデイゴ、ヒシバデイゴ、フィリデイゴ、サイハイデイゴなどが沖縄で見られることを教えて頂きました。

更に樹の全景写真も欲しいとお願いしたところ、写真仲間でかって「沖縄の道路」のコンテストで賞を受けられたことのある友利孝子さんを紹介して頂きました。友利さんから送られて来た写真はデイゴの花盛りの並木を写したもので、松本さんの花のアップとあわせて、その妖婉さに見とれてしまいます。さすが本場のディーグ(デイゴの沖縄方言)です。一度実物を見たいものです。ちなみに花の写真は沖縄県大宜味村宮城島の国道58号線沿いで、また並木の写真は平成18年に佐敷町、知念村、玉城村、大里村の合併で出来た南城市で撮られたものです。沖縄ディーグの花は4月から5月が見頃だそうです。

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