グッドマン・インタビュー

その42回

鎌田雄一


水野あきら(as,cl)
hあnあ 1949年12月22日愛知県に馬れる。
  東海大学工学部電子工学科率。
グッドマンには′93年夏から
プレイズパターンズに参加。
現在は即興ユニットネットワークに移行。
3月からは「草々」のバンド名で1ケ月おきに出演する予定。


■電子工学を学んで、イラストレーター&ミュージシャンになるにいたるにはいかなる仮定があったのか。

●なりゆきです。学園紛争があって、学校がアホらしいところに見えて、就職もせず、ふらふらと20才を過して、30才前後にデザイン業界に入っていって、ほぼ同時に学期も購入して、音を出しはじめました。

■クラリネット、アルトサックスを選んだ基準は?

●エリックドルフィーという人を知って、自分でも音を出してみたいと思ったので、当然のように、それらに決まりました。″選ぶ″とか″迷う″とかは、全なかった。

■ドルフィーは恵まれないjyズメンの中でも際のうのわりにひときは恵まれなかった人ですが、どんなところにひかれたのですか?

●彼の燥るサックスは金属で出来ているにもかかわらず何かやわらかいヌメヌメとした有機物でできていて、それが音を発っしているように感じられます。そうゆう水気たっぷりな感じが好きなのでしょう。なにせ人間70%が水なのですから。

■ヘー、オレは全く逆の印象だったなぁ。ドルフィーの音には鉱物的なキラメキを感じて魅惑される。有機的な音はアーチーシェップとかアルバートアイラーの方に、より強く感じる。もちろん、こっちにもひかれるけど。

●シェップやアイーラーは奏者本人が動物的でそれが金属を通して出てくるように感じられます。(もちろんそれも好きですが−)ドルフィーの場合は、奏者のオリジナリティーというより、楽器そのものが、やわらかくなってしまっているという気がするのです。

■水野さんにとっては、サックスという楽器自体が有機的な存在でなかでもドルギーは一番だということなのかな?じゃあ先に、古池さんからの質問「ずばり管楽器の魅力。悩みとは?」

●今はサックスに限定して話てしまいましたが管楽器全般が勇気的な道具だと思っています。…で間がきの魅力に監視てですが、管楽器の音というのは、人間の息使いそのものです。音を出すと、骨が、臓物が筋肉が血管が、共鳴する。、身体全体が鳴る。そのことに圧倒的にひかれます。ピアノトリオでも絃楽四重奏でも、それがどんなに美しく優れた演奏でも、管楽器が入っていないと30分も聴いていると、ソワソワし始め「…そろそろ管を出してくれ、何でもいいから管楽器を…ぐ、ぐるしい!」という風になってしまうのです。悩みですが、吹いていて思うように身体が鳴ってくれないことです。

■具体的に、楽器を始めた頃の話からどんな仲間とどんなことをやりはじめたか、聞かせて下さい。

●ガキの頃、まわりはビートルズで騒いでいましたが、全く音楽に興味がありませんでした。20才前後にはじめて友達とジャズ研でピアノトリオを君でいた奴の練習を見にいって、はあ1曲やるのに30分もかかって、しかも決まっている通にやるんじゃない音楽の形式もあるのか、とおどろいたのでした。それから10年たって、学期を手に入れ、そのジャズ研の友達に混ぜてもらって音を出し肇ました。ブルースや「彼は」「オールオブミ」といった曲が、彼等のレパートリーだったけれど、全くついていなかったし(技術的に)。そういうことがやりたいんじゃない。もっと自分の生理にできないか、などと思っていました。その時そのグループでベースを弾いていたのが今「即興ユニットネットワーク」にいる竹嶋氏で、その後彼と即興演奏を始めました。

■確かニュージャズシンジケートにも参加しましたよね。

●竹嶋氏の友人が銀座の画廊(今はなきケルビーム)で即興演奏のワークショップに参加しいて、竹嶋氏も参加するようになり、イモズルで僕も参加するようになりました。そのワークショップのリーダーがシンジケートの庄田次郎氏(tp)でした。…で、彼にさそわれてニュージャズシンジケートのコンサートに参加したのです。20余人のオーケストラで演奏するなどもちろん初めての経験でアンサンブルの楽しさを満喫させてもらいました。自動車もそうだけど、洗練された道具というのは、それを燥る人間の個性を、うんとデフォルメして表出させてしまいます。運転席に座ると,人が変ると、よく言うでしょ、あれは変るんじゃなくて、普段おさえていたものが出てきてしまうのだと思います。それと同じことが楽器にも言える。ましてや音楽というのは脳の奥深くストレートに突きささっていく表現手段だし、…。そういうわけで、それぞれ考えていることが違う人間達が集まって大人数で演奏するということはかなりむずかしことだとも思ました。

■3月から始める「草々」は山本圭一さんのエレキベース、内田典文さんの三味線、三浦陽子さんのピアノと4人ですが、その原点は、どうですか?

●複数で演奏するということは、人数の多少にかかわらず、エゴと調和の相克そのものなわけで同じことでしょうが、話合いが可能な人数であれば少しはいいかと…。「草々」での僕の課題は明確なのです。20年前、音を出しはじめた頃、放棄してしまったルールのある音楽の演奏に再度挑むこと。

■水野さんは沖縄音階へのこだわりとか、イラスト入りベトナム旅行記の出版とか南方志向があるんですか?

●方角には関係ないのですが、日本(特に東京)に、こだわりがあるのです。外へ行くと住んでいるところがはっきり見えてくる。その外がたまたま沖縄やベトナムだった。音楽に関しても同じでそれらの場所で聴くペンタトニックの音楽が、自分の生理のありようを解きあかしてくれそうな気がするのです。

■最後にドルフィーに戻るけど彼はすごく不思議なんだ。`60年頃までは全然目立たない演奏していたのに急にパーカーをアブストラクトにしたような個性的な演奏を始めて死ぬまでの4 年間どこを切ってもドルフィーあめ、みたいな独自の演奏をしたでしょう。評論家からもその当時はボロクソ言われて、自分のバンドも続けられないほど、客の動員力もなく、何が彼をあんな独自な演奏に駆り立てたのかね?

●ドルフィーのこたぁ、僕にはわかりません。人間の意識を決定するのは、その下に隠れて見えない潜在意識で、論理は圧倒的な生理の海に浮かぶイカダのようなもんなわけです。その海は個的な部分に加えて社会や歴史の記憶も内包している。音楽するときいろいろ計算したり、訓練したりしても、そのおおもとの生理からづれていたら面白くなりようがない。その見えない海のほんの一部でも捕らまえられれば面白くなるはずだし、音楽、とりわけフリーフォームの即興演奏は海の正体を捕らまえるのに有効な手段の一つでもあると思ます。絵でも同じことが言えると思ますが、僕の場合、絵は現実にあるこれこれはこんな形をしていた、という報告のような形で描きたいと思っているので、海を見るためには音楽が必要なのです。


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