グッドマン・インタビュー

その33回

鎌田雄一


沢田守秀(perc,voice)
1963年3月8日
静岡県沼津生まれ
高校までそこで育ち上京。東洋大学中退後音楽雑誌「マーキー」に参加。ライター、編集、企画、等を担当。1992年退社。以後フリーターをしながら音楽活動を続ける。様々なバンドにドラムで参加した後、1995年12月、五十嵐まゆみ(写真)と共同展示「Sky is Water:Water is Sky」(国分寺ギャラリーいんふらま)。会場にて自信のヴォイスを素材とした4チャンネルテープ音楽作品を発表叉期間中は連日ライブ演奏も、グッドマンには'95年6月より毎月出演。他にも、複数のバンドにドラムスでゲスト参加中。
参加CD
ゆらゆら帝国     Touch Label TMC-101 '94
群      Pataphysique Records DD-003 '95
ゆらぎ「約束の地」 Creativeman Disc-00020 '96


●昔のことは、あまりしゃべりたくない、とのことなのでポーンととばして、ソロをやるようになったキッカケなどありましたら。
○ずっと即興に興味があったのですが、なかなかやり始める機会がなかった。サックスの猪俣さんのグッドマンでのソロライブに、ゲストで呼ばれるようになったのがキッカケでした。
●猪俣さんとはどこで出会ったの
○今澤カゲロウ(eb)くんが企画したセッション出、始めて会いました。
●今澤さんとは?ってこの調子で行くとどんどん過去にもどってしまうので止めといて……即興をやろうと思った時に、ソロというカタチを選んだ理由は?
○それまでに、色々なバンドでいろいろな人とやっていたのですが、(そろをやるまえに、バンドで即興をやったこともあります。)いつのころからか「自分一人だけでもやれなければ何をやっても同じだ」という考え方が、頭の中に生まれはじめていた。だからだと思います。
●やれるやれないということは自分で決めるんでしょうがどういうところに、その基準はあるのでしょうか?
○えーと…つまり、自分が自分のやっていることに対して納得するかどうかです。
●納得出来ないのはどういう時?
○むずかしいですね……。ほとんど納得出来ない場合の方が多いような気もするし。ただ人と一緒にやっている時は人に頼ったり逃げたりしている自分を発見することがあったりして……それはやっぱり納得できなかった。
●沢田さんのソロは、普通パーカッションソロというイメージする。一人でいろいろなリズムをジューオームジンにたたくというのたは違って、ひとつひとつの出す音の音色の変化とか、「間」を沢山使ってミニマルな音響空間の中のビミョーな味を大事にしているように思うのですが、そういう発送の源になっているものはなんでしょう?
○ある時期からですけれど、たった一つの音を出しただけでもその人の考え方やせいかくが伝わってしまう。ということが解かるようになってきました。別の言い方をしますと一つ一つの音の中に多くの「色」があるとか……そんな感じです。
●子供の頃からそういう事に敏感だったのですか?
○ちょっと変わった子供だったかもしれませんが自覚はあまりありませんでした。というか、誰でも皆ちょっと変わったところがあると思っていました。ただ、音楽や芸術に対して敏感になったのは、わりと最近です。多分、ソロをやり始めたあとだと思います。
●アートはどんなのが好きですか?この部屋にマークロスコのポスターが貼ってあるけど、抽象画に惹かれるんですか?自分も一時具象と抽象については随分考えたことがあるんです。……でも、一人のアーティストが創ったものより、ここにある古いチャブ台のような、長い年月と何人かの関わりで出来た色合いやキズの具合の方が素敵にみえちゃうんだよね。
○それは素晴らしい考え方だと思います。だから、マスターはわざわざこんなところまで来て僕と話をして繰れるんでしょうね……。マークロスコについては、頭で考えたことはありません。……展覧会を見にいって、気がついたら泣いていました。こういうことは始めてで、自分でもいビックリしました。実は僕は音楽より先に絵を「分かる」ようになったんです。……やっぱりソロをやり始めた後のことですが……それまで絵なんて全く興味がなかったんです。僕にとってはこのチャブ台とロスコの絵が同じに見える……ことはないけど多分同じように好きだとは思います。
●そんなに感動しても沢田さんが絵を描かずに、あえて音楽を選んでいる理油は?
○いや……うーん、と……絵に感動したのは、一つのキッカケで、……そのあと、音楽でも、チャブ台でも自然の風景でも、いいものに対して反応出来るようになったんです。つまり、大げさにいうと「自分は感動することが出来るんだ」と理解したわけで……。それまでんも自分は音楽でもなんでも分かったふりをしていたような気がします。……だからあえて音楽を選んでいるわけではなくて、たまたま音楽をやっていたというか……。
●なるほど……。では、その音楽活動の中で参加したCDを一枚づつ簡単に紹介していただけませんか?
○「ゆらゆら帝国」というのは、坂本君という人のヴォーカルを中心としたバンドで、今でもやっています。CDは多分他にも3〜4枚は出ていると思います。僕が参加したのはその内の一枚だけです。その時は3人編成で、僕はドラムをやっていました。「群」は5人編成でプログレとノイズの中間のようなカンジです。アコーステック楽器やヴォイスに、エフェクトをかけたりして、変わったかんじの音をだしています。ゆっくりと、おだやかに展開するのが好きで、昔のライブは3時間ぐらい連続して演奏したりしていました。「揺らぎ」は金田さんという人を中心としたユニットで、編成はそのつどかわります。CDではドラムとパーカッションで参加している
●じゃあ、最後に三浦さんからの質問で「打楽器の人にとて、自分の中の歌を表現0するというのは、どういうことなのでしょうか?」
○僕は……自分の中の「うた」を確認する前に、音をだしているような気がします。表現しようとする前に、音が勝手に出ていたりします。調子のいい時ほど、そんな状態になります。打楽器はある意味では、とても肉体的というか……考えなくてもすむ楽器だなと思います。考えながらやることも出来なくはないのですが。……クールに構えてないとダメかな?


編集後記

沢田さんちは、下井草だというので、日置さんちへ言った時と同じ道順で自転車に乗って、むかいむかいました。途中に、新築の下井草図書館があってなんとその日がOPEN。つい寄り道をしてどんな本があるか物色。甲子雄の写真集1冊借りてしまいました。下井草の駅から5〜6分の都内にまだある農家の畑の隣に沢田さんちがありました。インタビューの間、レコードをかけてくれましたんですが、民族音楽とか流れていると質問を考えてる間にいつの間にか、ついつい聽いちゃって、先にすすめない。もっとシュワーとかビャーとかサウンドだけのレコードの方がいいなといったら、だしてくれたのがハリーベルトイヤーという音響彫刻家のレコード。これもすごく面白くて結局聽いちゃったなあ。10枚出てるレコードは全部もってるんだって。あと、去年ギャラリーに見にいけなかったので五十嵐さんに無理いってその時の写真も見せてもらいました。モノクロームの草や土や石がブローアップするときほんのすこしズームしながら焼いてある。5月の風のように気持の良い作品でした。次回はサックス、ギターebの福島さんの予定です。


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