石川県白峰村教育委員会は30日、「手取層群」と呼ばれる地層の一部で同村桑島に広がる中生代白亜紀前期(約1億4000万年前)の「桑島化石壁」から、歯のないくちばしを持つなど、鳥類に極めて近い特徴を持つ小型肉食恐竜「オビラプトサウルス」類の指先の骨の化石が国内で初めて見つかった、と発表した。
石川県白峰村で見つかったオビラプトロサウルス類の | |
指先の化石 | 復元図 |
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同類の化石はモンゴルなどでも見つかっているが、これまで最古とされていた米モンタナ州で見つかった約1億1000万年を約3000万年さかのぼる世界最古の化石となる。同教委は「鳥類が肉食恐竜から進化したとする学説を補強する貴重な発見」と話している。
同教委によると、見つかった化石は、同類の指先部分の抹節骨と見られる一点で、長さ約2.3センチ、付け根に近い最も太い部分の厚さが約0.3センチ。緩やかにカーブし、先端が鋭くとがっている。骨の大きさから、推定体長は70−90センチとみられ、これまでの化石より薄くて細長いことから「新種のオビラプトサウルス類の新種の可能性が非常に高い」(同教委)という。
指先が活発に動くよう、筋肉を接続する突起と膨らみが同類にしかない特徴で、特定の決め手になった。指先を力強く上下させ、起用に物をつかむこともできたという。
今回の発見で同類の起源が約1億4000万年前となり、鳥類の始まりとされる始祖鳥の起源の約1億4500万年前に近づいた。また、近年モンゴルなどで見つかっている同類の化石から、鳥類の特徴である羽毛をもっていたと推定できる説も強くなり、鳥類が肉食恐竜から進化したとする学説をさらに補強する発見ともなった。
化石は、桑島化石壁を貫くトンネル工事で掘り出された岩石を調査するため、同教委が1997年に組織した調査団(団長・松尾秀邦金沢大名誉教授)が昨年8月に発見、その後の調査で同類と特定した。
調査団はこれまで、国内初の発見となったほ乳類型は虫類「トリティロドン類」の歯の化石や、草食恐竜ヒプシロフォドン類のほぼ完全な頭部化石など、貴重な化石を桑島化石壁から相次いで発見している。
アジアは貴重な場所 国立科学博物館真鍋真研究官の話
オビラプトロサウルス類は、アジアと北米大陸以外では見つかっていない。モンゴルや手取層群での発見、さらに中国で羽毛の生えた恐竜の化石が発見されていることからも分かるように、ジュラ紀から白亜紀にかけての肉食恐竜や鳥類の進化にとって、アジア大陸はf重要な場所だったのではないか。
オビラプトロサウルス類
白亜紀の終わりに恐竜とともに絶滅。鳥類に似て羽毛で覆われていたという説もある。「オビラプトル」はラテン語で「卵泥棒」の意味。硬いくちばしからほかの恐竜の卵を食べていたとの説もあったが、1990年代にモンゴルで発見された化石は自らの卵を抱いた形で見つかり、鳥類と同じ性質があることが分かった。このため肉食恐竜から鳥類への進化を探る研究の対象となっている。