’98年9月16日「日本最古のゾウ足跡」

福井県丹生郡こしの村の海岸沿いの約1650万年前の地層から、長鼻類(ゾウ類)の足跡化石十数個が発見されていたことが、15日までに分かった。同時代のこの種の足跡化石発見例はこれまでなく、日本最古。地層の近くからは4年前に国内で初めて確認された同類の「ゴンフォテリウム」のひざ化石が見つかっており、同時代の地層であることなどから、足跡はその仲間と見られる。四足動物特有の前足と後ろ足の跡が重なり合っており、歩行状態も確認でき、陸性ほ乳類の生活の様子を研究する上で貴重な発見として注目される。

足跡化石を見つけたのは、同県立高志高校の地学担当、安野敏勝教諭(51)。現地一帯の地質研究を続け、この地層から先のひざ化石をはじめ、国内二例目のひずめが偶数ある遇蹄(てい)類の足跡化石などを発見している。長鼻類の足跡は、昨年9月に見つけ、滋賀県足跡化石研究会長の岡村善明氏らの協力を得て研究を進めていた。

地層は新生代第3紀中新世。同鮮新世(300万年から400万年前)の地層での長鼻類の足跡発見例は全国でも数多いが、これより1000万年以上もさかのぼる。

 

ゾウ類は5本指で、足跡は前足の跡の上に後ろ足が重なった4足動物の特徴を示し、ひとつの足跡から6、7本の指跡が確認できる。この指跡と足跡の形状などから長鼻類と判定された。重なった足跡は大きなもので長さ役30cm、幅約15−23cm。

福井県越廼村の海岸の地層から見つかった長鼻類の足跡化石

指跡の方向から歩行の方角もわかり、歩幅が分かるのは3歩分ある。一歩の歩幅は平均90cmで、これから胴幅1.7−1.8m、肩高約2.5mと推定できる。当時としては標準的な大きさと推定できる。近くには別個体の同様の歩行跡もあり、長鼻類の群れでの生活習性を考えれば、体長の似た二頭が同じ方向に並んで歩いていた可能性もあるという。足跡の形状は、少し速めに歩いていたことをうかがわせる。

周辺には偶蹄類の足跡も数多くあり、足跡群が同一方向を見せていることから近くの水飲み場への通路だったのではないかとも推測できる。研究成果は、25日に信州大で開かれる日本地質学会で発表される。

 


三角州で発見に意義

安野教諭の話

これまで見つかっているのは内陸の堆積層からだったが、三角州の堆積層からも発見できたことは、今後各地の同様な発見にもつながるのではないか。

 


保存の状態は一級

岡村善明・滋賀県足跡化石研究会長の話

風化の強い海岸の地層でありながら、保存状態は一級。足跡は偶蹄類と長鼻類が現地に生息していた証拠だ。

 


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