死語概説

本講座では、死語について半ば冗談風に、半ば大真面目に考察します。「死語の世界を例解する」面白さが伝わるとよいのですが。


では死語を研究する学問にはどのようなものがあるのでしょうか?早速みていきましょう。なお、専門用語をどしどし用いますが、別に気にする必要はありません。例をみて「こういうものか」と分かれば十分だからです。もしこれらを詳しく知りたい方は、英語学・言語学の事典や解説書をお読みください。

1.音韻論・音声学

死語の音声的特色を検討する学問です。音声面での「死語らしさ」は、独特のアクセントやイントネーション、そしていまとなっては少し間抜けな(?)語感にあります。例えば、「チッキ」、「チョッキ」、「コールテン」、「チャック」、「ジッパー」など)、カタカナ語の場合は日本語的な発音になっていることも特色です。

2.形態論

「死語」の作り方を研究します。次のような方法があります。

(1)合成:例えば、「新人類」(新+人類)、「ドロンする」(ドロン+する)

(2)派生:例えば、「アムラー」(アムロ+er)

(3)短縮:例えば、「BG」(OLの旧称)、「モボ・モガ」(モダンボーイ・モダンガール)

(4)混成:例えば、「ビフテキ」(ビーフ+ステーキ)、「飲みニケーション」(飲む+コミュニケーション、日本語と英語を混ぜてしまうのも特色)

(5)品詞の転換:例えば、「モダる」(モダンという形容詞を動詞に変える)

(6)数多いその他:「チョメチョメ」、「A/B/C/D」、「ロハ」、「ハッスル」、「ボイン・ナイン」、「アベック」、「いかす」など

3.意味論

死語の意味や意味の変化などを研究する学問です。

4.死語史(歴史死語学)

死語の歴史をたどることで文化史も考えようとする学問です。例えば、「モボ・モガ」−「カリプソ娘」−「アプレゲール」−「レナウン娘」−「新人類」−「コギャル」といった若い世代を表すことばを歴史的に検討すると、日本文化史を考えることも可能です。

5.語用論

死語がどのような場面で使われているのか、死語と流行語の境はどこにあるのか、ということを研究します。

6.社会死語学

社会と死語の関係を扱う学問です。全国共通の死語、方言、個人的あるいは特定集団内のみで通用する死語、書き言葉の死語と話し言葉の死語、といったトピックがあります。ここではその研究例の一環として、死語の「方言」(名古屋編)を紹介します。

「ジェイアーラー」、「チェリ−」(桜通線)、「おこま」(尾張小牧ナンバー車)

7.心理死語学

人間の心理と死語を発する行為の関連を研究する学問です。死語を好んで用いる人の心理、死語を受け止める側の心理、あることばを死語とみなす心理的要因、などを検討します。

8.死語生活論

死語が日常生活でどのような役割を果たしているのかを考えます。

9.死語教育学

死語を用いてコミュニケーションできる死語力を身につけるための教授法や教材を検討する学問です。


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