神の摂理

ずん胴小説祭に参加しちゃったりしています。前回は「神話」は書いたが「ファンタジー」ではなかったので、今回はファンタジーにしようと思ったのですが、ただのショートショートですねこれは。

「なんて馬鹿なことを!」
 ぼくは彼女を叱りつけた。彼女は首をすくめながらも、不満そうに僕を睨んでいた。
「なぜいけないの? 格好いい身体になることが、なぜいけないの?」
 彼女の手にはエステクラブの会員証があった。前に会ったときに比べ、バストはたっぷり十センチは膨らんでいた。お腹はひきしまり、へこんでいた。
「いいかい、そういう身体を格好いいと思いこんでいるのは、みんな神の陰謀なんだ!」
「陰謀、陰謀っていうけど、あなたこそ頭がおかしくなったんじゃない? どこに神様がいるのよ? だいたい、なんで神様がくびれ体型を求めるわけ? くびれることが神様にとって便利だとでも言うの?」
 彼女は怒って反論してきた。彼女もまだ、気づいていないのだ。
「掴みやすいようにさ」
「掴む? なにをよ」
「君はまだ、この連続失踪事件の真相を知らないのか」
「確かに、女の人がどんどん行方不明になっているわね。まるで天にでも召されたように。でも……」
「彼女たちは掴みやすいように、くびれていたからさ」
「それって……」
 ぼくは観念した。彼女にも「お召し」のときが来たようだ。彼女の頭上から、巨大な、クレーンにも見えるような「もの」が、ゆっくりと降りてきた。神の手によって操作されているかのように。


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