やめてやるっっ
 

 もうやめます。やめてやります。旦那さま。あのチームは、酷い。酷い。はい。駄目な球団です。悪い球団です。ああ、我慢ならない。生かして置けねえ。

 はい。はい。落ち着いて申し上げます。もう、あんなチームにのぼせる必要はないのだもの、冷静です。氷のように。あのチームは、為になりません。セの仇です。はい、なにもかも申し上げます。私は、あのチームのこと、何でも知っています。10歳からのファンですから。それからの25年間、あのチームが私になにをしてくれたか。なんにも。そう、1回の優勝以外、なんにも。いままであのチームのために私が、そんなに振り回されてきたか。どんなに嘲弄されてきたことか。あの球団のために、私が何回のやけ酒を呷ったか。ああ、もう、いやだ。堪えられるところまでは、堪えてきたのだ。それももう限界です。

 この間の巨人戦。見てました。おお、無様なこと!
 川尻がまあまあ好投し、ちょっといけるかな、と思っていました。そこへ、吉田監督。
 耳を疑いました。代打の八木です。
 そりゃ、八木は代打の切り札です。神様です。仏様です。でもね、切り札には出し時ってものがあるじゃありませんか。まだ中盤じゃないですか。それを、八木。それも、好投の川尻の代打。私は、呆れました。今日の今日まで、投手がいないと嘆いていた監督のする事でしょうか。変ですよね。
 おまけに、代打失敗すると、八木をそのまま1塁へ。せっかく当たってきた感じの大豊を引っ込めるのです。馬鹿。そう思いました、正直に。
 リードして出した投手が郭李です。私は、笑うしかなかった。あはははははは。ああ、おかしい。郭李です。郭李。そこまで好投した川尻に代えて、郭李。昔の郭李じゃありません。145キロの重い球を投げ、打者を三振に討ち取ってきた、92年の郭李じゃありません。あれから5年が過ぎた郭李。体重は10キロ増え、球速は10キロ落ちました。へろへろ球で、ノーコンは相変わらず。フォークでしか勝負ができない、でもそのフォークも2球に1球は高めに浮いて絶好球になるという、郭李。
 打たれました。当たり前ですね。当然の帰結。あなたもきっと、そう思うでしょう。どうにもならなくなって井上に代え、そこで松井の2ラン。画竜点睛。お見事!声をかけたくなりました。舞台の幕切れのよう。
 
 私、面白がってますか?面白いですよね、実際。はははははは。一番面白いのは、そんなチームを応援する、私ですよね。ああおかしい。涙が出るほど。毎年毎年、同じ手で騙される。笑っちゃうほど。まずは年末の、新戦力の獲得です。「この男の加入でチームは変わった!」「新戦力の台頭で競争激化!」なんてお決まりのタイトルですよね。そしてオープン戦。勝ちます。当たり前ですよ。だって他のチームは若手のテストしてるのに、こっちはベストメンバーですもの。オープン戦第1戦から和田が出るなんて、そんなチーム他にありません。もちろん、オープン戦も後半になって、他チームもベストでくると、負けます。最終的に5割くらいでオープン戦も終え、「このくらいのほうがいい。オープン戦で勝ちすぎると本番で弱いジンクスがある」などと自己満足。笑っちゃうよね、それはちゃんとしたオープン戦をやっているチームの話だっちゅーの。開幕するとぼろぼろ。オープン戦でベテランを酷使したので疲れ切っています。早くも故障したり。しかたなく、オープン戦で試してもいない若手を本番で使う。ものになるはずがない。あとはひたすら、閉幕を待つ長い5ヶ月。

 しかし、そのお決まりの手も、そろそろ通用しないと思います。あの人も、ヤキがまわった。だらしが無え。かつての阪神は、騙されても騙されても、魅力があった。ああこの一瞬を見るために生きてきたという、魅力があった。江夏の剛腕。。田淵のアーチ。小林の汗。掛布の一振り。バースの微笑。今の阪神には、それがない。桧山?駄目。新庄?つまらない。大豊?とんでもない。パウエル?おお、いやだ!悪女は、魅力があって悪女。容色衰えた悪女など、ただの意地悪ばばあ。あっちへいけ!おまえなど。

 走狗。そう思いました。広島に連勝し、巨人に負け越し。そんな阪神を見て。私の怒りが、醜く、黒くふくれあがり、私の五臓六腑を駆けめぐって、憤怒の炎となってむらむらと噴出したのです。これで巨人が優勝したら、阪神のせいです。去年もそうですよね。横浜に勝ち越したくせに、ヤクルトにはてんで勝てない。阪神さえいなければ、去年は横浜が優勝していたのです。阪神は、いらない球団なのです。いるとセリーグを盛り下げる球団なのです。駄目な球団なのです。巨人とヤクルトの走狗です。イヌです。ああ、けがらわしい!

 そんな阪神の魅力の衰えが、私のページ「虎本営発表」にも表れているのかもしれません。もともとあのページは、題名通り、負けても負けても、「大本営発表」のように、嘘でも景気のいい言葉を並べようと思って始めたのです。「嘘でもいいから、騙してほしい」と歌った歌手、誰でしたっけ。そんな気持ち。つまらない現実のヤクルトより、面白い妄想の阪神を!そんな気持ちで、始めました。ところが景気のいい言葉が、どうしても浮かばない。妄想が、できない。今の阪神じゃ。そして、ついにあのざま。愚痴と文句と嘆き節の狂歌が並ぶだけ。死者を弔うページです。

 私も疲れました。もう30代半ばのオヤジだというのに、いまさら阪神が負けたのなんのって、物投げて、喚いて、酒飲んで、知らない人にまで嫌なメール送って、挙げ句に宿酔で会社にも行けないなんて、そんな馬鹿がいますか。今更死ぬの生きるの、自殺志願の女学生のように。女学生ならまだかわいげもあるが、オヤジの半狂乱なぞ、誰も見たくない。ここらで立ち直りましょう。野球なんぞ捨てるのです。阪神なんぞ忘れるのです!生まれ変わった気持ちで、人生をやり直すのです!おや、巨人?私に応援しろというのですか?あの、私に?はははははは、いや、お断り申しましょう。殴られぬうちに、その汚れし紋章引っ込めてください。痩せても枯れてもこの私、そこまで落ちぶれたくはない。いいえ、ごめんなさい、いただきましょう。毒くらわば皿まで、巨人の応援をしてあのチームに復讐してやるのだ。そこまでしないとあの馬鹿チームは応えないだろう。これが私の復讐の手段だ。ざまあみろ!え、とんでもない。私は、ちっとも泣いていない。私は、阪神なんか愛していない。はじめから、みじんも愛していない。世の中、・・・え、藪が好投?1点差?よしなんとかなるぞそこだいけー新庄藪を見捨てるなハンセンそこだなんとかしろ打てー

(太宰の「駆け込み訴え」みたくしようとしたら宇能先生になってしまった 昔新井素子の真似して宇野先生になったこともある)


 

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