火星航路SOS

「ここんとこ、宇宙関係の計画の失敗が相次いでますね」
「そうそう。アメリカの火星探査機が軌道への突入に失敗したかと思ったら、日本でロケット打ち上げ失敗。それで今度はまた、アメリカの火星探索機が行方不明」
「宇宙人が妨害工作してるのかもしれませんね」
「そういう、小学生が休み時間に言うようなギャグで誤魔化すなよ」
「それが定説ですから」
「もう、そっち方面のギャグはいいよ!」
「ライフスペース。訳して宇宙生命体」
「適当に訳すんじゃないよ!」
「最高ですか?」
「やめろよ!」
「しかし突入失敗の原因が面白いですね。係員がヤードで言った距離をもうひとりがメートルと間違えたとか」
「またそれを日本の係員が間違えちゃって、『身長五尺八寸』なんて言って」
「言ってないよ!」
「そしたら探査機が、『身体いたって健康』とか言いながら突入したらしいよ」
「特攻かよ!」
「お次が日本で、H2ロケットの打ち上げ失敗」
「自爆しちゃったんですね」
「あれも自爆したんじゃないらしいよ」
「え、何なの?」
「なんでも、H2とテポドンを間違えて発射しちゃったとか」
「嘘つけ!」
「村山さんが北朝鮮に行ってH2を返してもらったらしいよ」
「村山訪朝団は、そんな理由で行ったのかよ!」
「『想い出が〜いっぱい〜』って歌いながらね」
「それはH2Oだよ!」
「だからH2ロケットの後ろに、ダイエーの王監督が沈痛な表情で、『工藤にはできれば残ってもらいたい……』と」
「そんなところにいるわけないだろ!」
「で、こないだは火星探査機、『マーズ・ポーラー・ランダー』が着陸に失敗」
「小型観測器『アムンゼン』と『スコット』を切り離す十二分間に何かがあったらしいね」
「名前をつけてもらえなかった、バード大尉が悔しくて蹴飛ばしたという説もあるらしいぞ」
「ねえよ! そんな説!」
「うまく着陸できなかったんで、傾いちゃったらしくて、いくら信号を送っても応答しなくなっちゃったとか」
「行方不明らしいね」
「大騒ぎして探してみたら、福岡の病院に入院してたりして」
「また工藤かよ!」
「『車椅子で両手両足に包帯してるの、確かに見ました!』なんて証言があったりして」
「誰だよ!そんなの見た奴は」
「そのうちひょこっと出てきたりして。『いやー、着陸のショックで足をすりむいちゃって』とか言って」
「そんなこと言うかよ!」
「でも関係者は『諦めずに信号を送り続ける』と言っています」
「そうだね」
「『まだ巨人と決まったわけじゃない。とにかく最後まで連絡を待つ。でも巨人に入ったらひどいぞ』と」
「やっぱり工藤かよ!」
「でも、この失敗続きで、アメリカも日本も、大量に予算を削られるらしいですね」
「そう、NASAは計画を全面見直しらしいし、日本もH2の計画を打ち切りで、役員は退任、人員も大量削減だってね」
「それで浮いた金で工藤を取りに行くらしいですよ」
「もういいよ!」


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