世界はひとつ、オリンピック

 ここまで時期外れになってからオリンピックの話題を蒸し返すのも、これはかえって潔く爽快ではないか、と私は思うのだが、読者諸兄はいかがでしょうか。

 今回の長野オリンピックは事前の評判の割には盛り上がったという噂だが、どうだったのだろうか。私はほとんど見ていないのだ。
 日本中で評判になった「ふなきー」という気の抜ける応援も、「りえー、すげーよー」という馬鹿丸出しの解説も、原田の涙も欽ちゃんジャンプも見ていない。スケートだかモーグルだかの愛ちゃんとか舞ちゃんだとかが可愛いという噂だがそれも見ていない。原田と船木はジャンプを見たが(アホネン目当てに)、そもそもゴーグルやらマスクやらで顔を隠しているので、どんな顔だか分からない。この間のスーパージョッキーでたけし軍団のダンカンが船木に、井手らっきょが原田に扮していたので、原田はらっきょみたいな顔で笑い皺の多い奴、船木はダンカンみたいな顔で眉毛をかっちり剃ってる奴、と覚えたのだが、違っているかもしれない。

 オリンピックの直後にパラリンピックをやっていたらしいので、ますます記憶がごっちゃになってしまった。アイスホッケーをしゃがんでやっているのがパラリンで立ってやっているのがオリンだったと思ったが、正解だろうか。それにしても、パラリンとオリンってのは何だか妙な兄弟みたいだな。誰かこういうマスコットを作らないだろうか。もちろんパラリンのほうが(以下20字削除)
 パラリンピックというのもよくルールが分からない。片足の人ばかり滑降に参加していたようだが、やはり「片足欠損の部」とか「両足欠損の部」があるのだろうか。それとも両足欠損はタイムから5秒引く特典があるとか。腕の欠損はさらにマイナスとか。これ以上書くとやばい話題に突入するので止めるが。

 そういえば過去のオリンピックも良く覚えていない。
 札幌の頃はまだ小学生だった。友達と笠谷の人形を作って遊んだのを覚えている。セルロイドの下敷きをスキーの形に切り抜き、それに人型を貼り付けるのだ。これを学校の階段の手すりから滑り落とし、飛距離と飛形点を競ったのだ。あのころは人並みに日本選手を応援していた。
 そのあとはよく覚えていない。ええと、モスクワに不参加で誰かが怒っていたのをおぼろに覚えている。柔道の山下だったか。マラソンの瀬古だったか。確か馳浩もこのとき幻の代表にされたので腹を立ててプロレスと政界に入ったと思うのだが。
 モスクワの次がロサンゼルスだったっけ?メキシコは、もっと前か?ええと、バルセロナはいつだったっけ。リレハンメルってのは冬だったか?サラエボは戦争の前に済ませたんだったっけ?済ませた、というのも変だが。
 世間の評判になるので、選手も名前だけは出てくるのだが、それがどの大会だったか、まともに覚えていない。鈴木大地のバサロも、ジョイナーの爪も、ジョンソンのドーピングも見ていない。そもそも短距離とか水泳というのは、あまり見ても面白いものではない。
 マラソンや格闘技はまあまあ見ているので、北朝鮮の無名の選手に柔ちゃんが負けたところとか、その前の試合に出ていたグンダレンコというロシアの選手(彼女はオリンピックの前にL1という女子格闘技大会に出、プロレスの神取に勝って優勝している)などは覚えている。あと、マラソンで誰か日本の選手が靴を脱いでコケてたな、谷口だったっけ?
 野球も好きなのでロサンゼルスのときは見ていた。やっぱりキューバのリナレスやキンデランは凄いなあ、などと月並みな嘆声を放ちながら。あのときは日本もアメリカもアマのみ参加だったので、あの2人が最高峰だったのだ。
 次回のシドニーでは阪神の吉田監督が野茂、古田、新庄、イチロー等のドリームチームを率いて出場する、という噂もあるし楽しみだ。(いま、ドリームチームにこっそりと新庄を紛れ込ませた吾輩の苦心を察してくれたまへ)
 しかし、またも巨人の横車でドリームチーム案が流れるという噂もある。そうなれば、アメリカのドリームチームに日本アマチームが惨敗するというみっともない光景が見られるし、巨人の醜さが全世界の人に理解してもらえるいい機会でもあり、それはそれで楽しみだ。

 過去のオリンピックで、唯一見逃したのを後悔したのは、ソウルの開会式である。
 聖火に炙られて火だるまになる鳩。
 蜂谷真由美さんに落とされた大韓航空機を象徴するかの如く、火の鳥と化して断末魔のうちに天を目指す平和の象徴。
 見たかったなあ。


戻る       次へ