開き直り

 こんにちわ。皆様、お元気でしょうか。エロサイト運営者の下条でございます。
 私の「鉄血くだらな帝國」が、各社のサーバーからエロサイトの認定を受け、社内からのアクセスが続々と拒否されているとのお便りが、各地から寄せられています。なんという因果な話でございましょう。青天の霹靂でございます。ああ、私が運営するこのサイトが、エロだったなんて。作者も知らぬ秘事でございます。そんな馬鹿な。

 こうなったら釈明しなければなりません。エロサイトでないことを力説しなければ、おちおち会社から見ることもできなくなってしまうではありませんか。このままではアクセスがた落ちでございます。
 そうです。エロではありません。私はエロ漢ではございませぬ。美の探求者でございます。美しきものを愛で、称えるのが天職なのです。たとえば、ダイビングを称えたりするのです。ええ称えましょう。 よし称えてやる。くそ。

 ダイビングは美しい。海の底、そこは沈黙の世界。自分の呼吸する微かな音以外、耳に伝わってくるものはない。すべてがうす青く染まっている、大いなる海のなか、生物たちの沈黙の営みは続く。目の前には臆病者のオトヒメエビが、穴の中に隠れ、桃色の細い触角だけを出してこっそりと食事に耽る。遠くではギンガメアジの大群がたゆたう。ツムブリにでも脅かされたか、いっせいに向きを変えるごとに、銀の鱗がきらめく。そして赤、紫、桃色、黄色、色とりどりのサンゴは、呼吸し、静かに成長する。彼らの築く石灰造りの迷宮は、小さな魚たちの安息の地となる。そして海にもぐる女性の長い髪は、潮の流れに従ってたなびく。はるか遠くに棲むという伝説の人魚のように美しい。ウエットスーツはまた美しい。身体にぴったりと張り付いた、薄い布きれ。それはボディラインを強調し、豊満な胸を誇示する。ああ、そのスーツをナイフで裂いてやりたい。首根っこから下まで、いっきに。水着もろとも。原色のスーツの裂け目から覗くたわわな乳房。生白い太腿の奥は、わずかにほの黒い。そのままスーツを剥いて、全裸にしてやるのだ。全裸にタンクとマスクとフィンだけ。海の色にうす青く染まった女の姿体は、激しい羞恥にうす紅く染まる。そしてタンクを掴み、うしろから襲いかかるのだ。泣き声も喘ぎ声も、ごぼごぼと気泡に翻訳されてしまう。そして誰もいない海の底、俺は女を心ゆくまで責めて、そして

 

 …………、失礼しました。ちょっと脱線してしまったようでございます。そういうことを書くつもりはなかったのでございます。本意ではないのです。違います。違うったら。そうだ、話題を変えましょう。エロじゃないんです。私は硬派なんです。社会派なのですよ。そう、社会問題についてもいろいろ書いているのです。考察しているのです。なんと有益なサイトなのでしょうか。それがエロサイトだなんて、そんな。ははは。

 例えば近隣諸国との友好について書いてみます。いけませんね、夜郎自大な態度は。過去の過ちを謙虚に認め、謝罪することからすべては始まるのではないでしょうか。過去の隠蔽は、もっとも宜しくないことであります。たとえば、「南京大虐殺はなかった」などと。ドイツでもありましたね、「ホロコーストはなかった」と。そんなわけはありません。数多くの証言や証拠品が残されているのです。たとえば、強制収容所に放り込まれた、ユダヤ人医師の証言など。これは戦慄の告白です。ナチの兵士たちによる理不尽な暴力。収容所内で行われた人体実験。劣悪な環境に、ある人は栄養失調で、ある人は疫病で、ある人は射殺され、ばたばたと死んでいきます。人間の尊厳が認められないこの地。例えばユダヤ人婦人の証言があります。その女性はSS将校の詰所に連行されました。そこで、二十人あまりの、大半が酩酊している兵士たちの前で、全裸に剥かれたのです。軍服に身を包んだ異性の集団の前で、たったひとり裸にされる屈辱はいかばかりでしょうか。あまつさえ、健康診断という名目で、乳房や尻の穴まで覗かれるのです。みだらな笑みを浮かべる、酒臭い男たちに。下品な哄笑の中、全裸で、陰部を隠すこともかなわず、立ちつくすのです。ああ俺もSSになりたい。混ぜてくれ。ほらこのオッパイ、ぷよぷよと。ユダヤの女はエロっぽいぜ。この腰つき、たまんねえよなあ。ヤッてくれとおねだりしてるぜ。げへへへ。姐ちゃん、いままで何人の男とやったんだい。嘘ついても無駄だぜ。これからじっくりと、検査してやるからな。げへへへへ。

 

 

 ………………、申し訳ござらぬ。いささか錯乱してしまったようでござる。武士としてまことにお恥ずかしい次第で。この上は腹かっさばいて。いやそういうことが書きたいのではないのですよ。エロじゃない。違いますっ。ちょっと書き間違えただけなのですよ。私の本性は、エロじゃなく、ええと、ほら、何だっけ、あー、えー、詩、そうそう、詩なんですよ。私は愛を謳う詩人なのですよ。決してエロな人ではありませぬ。なんだいエロなんて。ほら、例えば、こんな新体詩だって書いちゃうんですよ。ね。ほら。

 

おほひなる山のふもとに
われ独り立ちつくし
わが身の憂鬱を思ひぬ。

されど
樹々はおほひなる花粉を放ちて
わがおほひなるくさめを誘ひぬ。

なぜか
草むらの蔭にかくれて
おほひなる交合せし男女ありぬ。

やがて
ふたりの破落戸が襲ふところとなり
をとこは後ろ手に縛られ

そして
をんなのおほひなる乳房をもみしだき
ほら姐ちゃんいいオッパイしてやがるなふへへへへたまんねえなこの吸い付くような肌どうだい恋人の前でこんなことされる気分は泣き顔もそそるぜえっ旦那もよく見ろよどうだい女ってのはこういう具合に責めるもんだぜへっへっへおい兄貴このアマもう気分出してますぜいやとんだ好き者だぜこいつよっしゃ俺が先だぜほら姐ちゃん欲しがって下の口が涎垂らしてるな今やるからよお前は上の口で

 

 

 

 …………………………現代詩になってしまいました。
 称えよエロ。


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