新日本ジョーク

 新日本プロレスの社長、サイモン猪木は豪語した。
「見よ、わが新日本は偉大だ! われわれはついにプロレスリング・ノアに追いつき、追い越した!」
 社員は反論した。
「社長、それはまるっきり逆だと思うのですが。ついに観客動員でも、所属レスラー数でも、うちはノアに抜かれてしまったんですよ」
「もっとよく事態を把握したまえ!」サイモンは怒鳴りつけた。「11人のレスラーが退団して、うちはレスラーひとり当たりの生産性では、ノアを抜いたんだ!」


 新日本プロレスの役員会で、社長は壮大なビジョンを語る。
「いよいよバングラディシュ興行だ。北朝鮮興行は大成功だった! ジャングルファイトも大成功だった! イタリア遠征も絶賛の嵐だった! むろん、バングラディシュも大成功にちがいない!」
 それを聞かされていた社員が、隣の社員にささやく。
「どうして、外国の興行ばっかり成功するのかね?」
「決まってるだろ。だれも取材に行かないからさ」


 アントニオ猪木は北朝鮮へ旅行し、金正日がさしむけた喜び組の美女に迎えられた。
 美女は言う。「トンム、ひとつお願いがあります。また、この平壌の広い会場で、新日本プロレスの大会を開催してくださいな」
「あっは、可愛いことをおっしゃる! あなたは私とふたりっきりになりたいのですな」


 新日本プロレスでは所属レスラーが減り続け、さらに現場監督の長州の体調に合わせて、試合時間がどんどん短くなっている。
 ふたりの男が水道橋で会話している。
「これから、どうしようか」
「あそこでタダ券を配っているから、新日の試合でも見に行こうぜ。六時半試合開始だそうだ」
「まあ、行ってみるか。それで、七時からはなにをする?」


 サイモン社長の家に深夜、古い友人から電話がかかってきた。
「おい、きみんところの新日本プロレス、マルチ商法の団体にチケットを売りさばいているとか、社員の給料が遅配してるとか、ヤバい話を聞いたぞ」
「そんなことでいちいちこの真夜中、わざわざ電話したのか」サイモンはうるさそうに答えた。「おれはいま、それどころじゃないんだ。新日本について根も葉もない噂が山ほどあるんだ。それをいちいち否定するのがせいいっぱいで、それ以外のことになんか、とても取り合っちゃいられないよ」


 親戚の家を訪問したが、甥がひとり留守番していた。
「おばさんはどうした?」
「ママはさっき、新日本プロレスを見に行くってでかけたから、あと三十分くらいで帰ってくるよ」
「おじさんは?」
「パパはきょうは帰れないかもしんない。新日本の事務所に、未払の売掛金を回収に行くって言ってたから」


 新日本に入団した練習生が、期待に胸ふくらませて新日道場にでかけた。誰もいない。きょうは休みなのかと思い、翌日に行った。やはりだれもいない。その翌日も行った。奧の食堂でたったひとり、安沢選手が料理を作っていた。
「先輩、そんなところにいたんですか。チャンコは僕があとで作りますから、さあ、練習しましょうよ」
「練習してるんだよ」安沢は鍋から目も離さずに答えた。
「してないじゃないですか」
「料理人の練習」


 新日本を退団した吉江が、ゼロワンのマットに上がり、佐藤耕平と対戦した。試合後、佐藤は言った。
「さすが吉江さん、新日本で鍛えられたレスラーだ。こんないい試合ができたのは生まれて初めてだ」
 吉江は答えた。
「俺もだよ」


 サイモン社長は社員に語った。
「われわれも経営の合理化をはからねばならぬ。まず第一歩として、チケットの印刷方法を変更したい」
「どうするんですか」
「いままでは売れようが売れまいが全部印刷していた。これからはオンデマンド印刷に切り替えよう。ヤフーオークションでチケットが落札されたら印刷するんだ」


 なぜ新日本プロレスのチケットには「円」でなく「円天」と印刷してあるのか?
 新日本は世界標準だから、通貨単位も日本を超越しているのである。


 プロレスラーにとっての天国とは。
 WWEの給料。
 ノアの観客。
 新日本の試合内容。


 プロレスファンにとっての地獄とは。
 WWEのチケット代。
 ノアの会場へのアクセス。
 新日本の試合内容。


 天山の考え。
 1)蝶野はつねに正しい。
 2)嘘だと思ったら1)を読め。


 井上亘の考え。
 1)金本はつねに正しい。
 2)嘘だと思う奴は公式サイトの荒らし。


 永田の考え。
 1)上層部はクソッタレだ。
 2)上層部はつねに正しい。


 世界でもっとも難しい迷路はどこか?
 新日本プロレス。永田さんは毎年「出る、出る」とわめいているが、いっこうに出られない。


 新日本プロレスの道場で、長州現場監督がレスラーたちに聞いてまわった。
「お前たち、これから何を練習したい?」
 中邑は答えた。「キックの練習をします。総合格闘技に出たいので」
 稔は答えた。「飛び技の練習をします。ゼロワンに出たいので」
 永田は答えた。「ダンボール集めの練習をします。ずっと新日本にいたいので」


 契約更改。まず後藤達俊がやってきた。新日本プロレスの幹部は言う。
「すまんが、業績が悪化してね。君に払う給料がもうないんだ」
 後藤は怒って退団。つぎにヒロ斎藤。幹部は同じことを言う。ヒロも怒って退団。
 三番目に永田裕志。幹部は同じことを言うが、永田は意外にも怒らず、にこやかに言う。
「わかりました。無給でもいいから、新日本に置いてください」
 幹部はびっくりした。
「なんだって、本当にタダ働きするつもりなのか?」
「はい。その代わり、西村と吉江とウルフと長尾と竹村と安沢と長井と柳沢と成瀬にも同じことを言ってください。そいつらの給料をオレが貰いますから」


 中西と天山と永田が神様のもとを訪れた。
 中西が神様に尋ねる。「いつになったらワイは賢くなれますか」
「十年はかかる」と神様は答えたので、中西は泣きながら帰っていった。
 つぎに天山。「いつになったらボクは、蝶野さんの子分から自立できますか?」
「二十年はかかる」と神様は答えたので、天山は泣きながら帰っていった。
 さいごに永田。「俺はいつになったらチャンピオンに返り咲けますか?」
 神様は泣きながら帰っていった。


 永田の妻が離婚相談所を訪れた。
「夫と離婚したいのです。もう我慢できません」
「旦那さんにどういう欠点があるのですか」
「夫には三つの大きな欠点があります。あの人は格闘技ができません。あの人はスピーチができません。あの人は会社を辞められません」
「プロレスラーなんだから、別にいいじゃないですか。何がいけないっていうのですか」
「あの人は格闘技ができないくせに、総合格闘技の試合に出るんです。だからみっともなく負けて、いつも笑われています。あの人は喋れないくせにマイクパフォーマンスするんです。だからいつもトンチンカンなことばかり口走って、みんなから笑われるんです。あの人は会社を辞める気もないのに、毎年契約更改の前に辞める辞めると叫ぶもんだから、あざ笑われているんです……」


「先輩、猪木が言っていたように、新日本がプロレス界を統一することは可能なのでしょうか?」
「できる。だが、そのときは、われわれはボクシングを見なければならなくなるだろうな」


 新日本プロレスのドーム大会に、男性記者と美人の女性カメラマンのふたりで取材に行った。試合後、カメラマンは記者に言った。
「さあ、これであなたは自慢してもいいわよ。あたしと一緒に寝たって」


 新日本プロレスのグッズ取扱店、闘魂ショップは、店員二人でやっていける。一人が入口に立ち、もうひとりが出口に立つ。
 品物はどこにあるかという客の質問に、入口の店員が答える。「ありません」
 出口ではもうひとりの店員が、「これからもずっと、何もありません」


 田中リングアナはあるとき豪語した。
「これからは、団体が客を選ぶ時代だ!」
 田中リングアナ退団。
「なるほど、アナウンサーも選ばれたか」


 田舎の観客動員が悪く、首都圏の観客動員が良好だとしたら?
 ノア的偏向である。
 首都圏の観客動員が悪く、田舎での観客動員が良好だとしたら?
 みちのく的偏向である。
 首都圏でも田舎でもガラガラだとしたら?
 新日イズムの正しい基本路線である。


 新日イズムはゼロワンや新日本、ノアにも根づくだろうか。
 とんでもない! そんなことをしたら、わが新日本は、どこからレスラーを借りてくればいいんだ?


 新日本プロレスのブラック・キャットが自殺したという噂は本当なのか?
 大嘘である。ひどい捏造だ。たしかに大量離脱、左遷、給料カット通告があった直後だが、あくまで心不全による急死であり、夫人への遺言も残っているので、ここに引用する。
「みんなを恨まないでね」


 棚橋が学生プロレス出身だというのは本当だろうか?
 まるっきりのデマである。本当は「学生プロレス出身」ではなく、「学生プロレス崩れ」である。彼は学生時代、いまよりもプロフェッショナルなプロレスをしていた。


 カール・ゴッチが訪日した。新日本プロレスは、さっそく新日本の大会に招待した。
「このナカムラって選手のファイトスタイルは、バリー・ボンズに似てるね」
「バリー・ボンズ? でも、ボンズはプロレスラーなんかじゃありませんよ」
「このナカムラもね……」


 ハイスパートプロレスとは?
 闘う労働者の正当な権利である。


 なぜ新日本のレスラーは、総合格闘技では弱いのか?
 プロレスが弱いのをごまかすためである。


 総合格闘技と異種格闘技の違いは?
 歴史小説と時代小説の違いである。


 東京スポーツはなんのためにあるのか?
 藤波取締役が、自社のニュースを知るためである。


 藤波取締役はある時わめいた。
「新日本プロレスの首脳陣は、みんな大バカヤロウだ!」


 新日本プロレスの社員がふたり、公園のベンチに座っている。ふたりとも一言も口をきかない。
 突然、ひとりが深い溜息をつく。もうひとりは飛び上がってわめく。
「おい、こんなとこで仕事の話をするなら、俺は帰るぞ」


 プライドやK−1の人気が高いので、新日本プロレスでも総合格闘技をとりいれることにした。東京ドームのメイン。アルティメット・ロワイヤルと題し、ウォーターマン、中西、永田、成瀬、ウルフ、スミヤバザル、長井、矢野というレスラーが特殊な試合形式で闘う。草間社長は最前列で観戦していたが、やがて首を振ってこう言った。
「総合格闘技、総合格闘技って言うから、楽しみにしていたんだが、つまらないな。なんでプライドやK−1の観客は、こんなものが面白いんだろう」


 新日本プロレスのオフィスの前で、長い行列がすれ違った。オフィスから出ていくシラミの列、そしてオフィスに向かうシミの列。
「どちらへ?」とシミが呼びかける。
「レスラーといっしょに引っ越しだ」とシラミは答える。「で、君たちは?」
「督促状といっしょに引っ越しだ」


「アントニオ猪木と新日本プロレスの関係はどうなっているのですか?」
「教えてあげよう。私に財布をよこしなさい。それから、ここの勘定はきみが払っておいてくれ」


 記者がサイモン社長に尋ねた。
「新日本と猪木事務所との契約はどうなりました?」
「おたがい満足できる内容で締結された」とサイモン。「われわれは猪木事務所に売上の一部を支払う。見返りに猪木事務所は、こちらから金を持っていく」


 ラスベガスと新日本プロレスとの違いは?
 ラスベガスではみんなが自分の金を浪費するが、新日本プロレスでは猪木がみんなの金を浪費する。


 新日本プロレスの崩壊はジャイアント馬場の責任である。
 どうして?
 馬場は日本プロレス時代、アントニオ猪木をちゃんと教育しなかったからである。


 新日本のサイモン社長とノアの三沢社長が、自分の見た夢を話し合った。
「私はきょう、すばらしい夢を見た」とサイモン。「ノアの聖地、ディファ有明でわが新日本がG1クライマックスを開催していた。連日の超満員。すばらしい歓声。メインは永田と天山の名勝負!」
「ぼくも夢を見たよ」と三沢。「あなたの夢にそっくりだ。東京ドームでの新日本プロレスの大会」
「ははは、そりゃ、いつものことだ」
「メインの試合に上がったレスラーは……」
「誰だった?」
「わからん。ハッキリ言って、AV男優には詳しくないんだ」


全日本とノアと新日本が、仕事の迅速さを自慢しあった。
 全日本の武藤社長が言う。
「会議でレスラーの招聘を決定したら、翌日にはもうオファーを出している」
 ノアの三沢社長が言う。
「その日の夜の試合を編集して、深夜のノア中継で流すことができる」
 新日本の長州現場監督が言う。
「われわれは試合をはじめて十分もしたら、もう控え室に戻って発泡酒を飲んでいる」


 あるとき、週刊プロレスの安田拡了と元ゴングの金沢克彦、そして夕刊フジの江尻良文がホラ吹き合戦をした。
 江尻は言った。「長嶋終身名誉監督にはメジャーリーガーもオーナーも土下座する! 長嶋終身名誉監督、もしくは世界の本塁打王が出馬すれば、松井だってボンズだってWBCに参加する! 長嶋終身名誉監督は世界一、世界の本塁打王は世界で二番目に有名で偉大な野球人だ!」
 金沢は言った。「長州さんは謙虚で人の話をよく聞く。本当にできた人物だ。人をおしのけようとか自分だけうまい汁を吸おうとか、これっぽっちも考えちゃいない。新日本を愛しているから、退団とか新団体とか、ありえない話だ!」
 安田は言った。「来年、新日本プロレスは……」
 江尻、金沢、目を丸くして「きみの勝ちだ」


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