三年やってたらすれっからしにもなるよね。ひねくれ者のための雑文祭入門

1.とにかく主催者の主旨をできるだけ裏切ること、縛りの原意をできるだけねじまげることに注力する。

2.題名の「三年」だが、これにthree yearsという意味を持たせないよう努力する。
 まずは「三」と「年」を分割する。CD-ROM広辞苑で「三」を語尾に含む単語を後方一致検索し、「南無三」「再三」などの語をみつける。「年」を同じように前方一致検索し、「年貢」「年賀」「年俸」などをみつける。「三」は人名だと倉田百三とか土方歳三とかいろいろあるし、「歳三、年貢の納め時」などというタイトルも使えるな、とにやつく。
 なにしろ雑文祭規則に「漢字をひらいたり、語尾を変えたりするのは不可」とあるが、句読点や符号をはさんではいけないという規則はない。

3.「口から飛び出す」も同様に分割を心がける。
 「口から飛び」「出す」という分け方でどうだろうかと考える。「口から飛び」は「八艘飛び」や「トカチェフ飛び」と同じようなものだ、と強弁することを思いつく。
「さあ日本代表の仲間選手、穴井コーチと二人三脚で編み出した新技をいま出した! 鮮やかにして華麗な新技、口から飛び!」
「出す技が連続していますからねえ。これは金も狙えますよ」
 話をもっともらしくするため、どんな飛び方かも考えてみるが、それだけはどうしても思いつかなかった。

4.同様に「内心そうだと思い込んでいた」も分割を試みるが、「内」「心そうだと思い込んでいた」も「内心そ」「うだと思い込んでいた」も「内心そうだと思い込」「んでいた」も、まともな文章にすることは不可能だと判断する。いや待て、
「ここは市井病院の内。心そうだと思い込んでいた病患が実は腎臓だったことに気づき、米光医師は焦っていた」
 というのはどうかと考えるが、医師が心臓を「心そう」と言うのには無理がありすぎると諦める。
「内心そ」「うだ」「と思い」「込んでい」「た」や、「内」「心」「そ」「う」「だ」「と」「思」「い」「込」「ん」「で」「い」「た」と多分割方式も試みてみるが、知らぬ間に「重いコンダらシレーンの未知を」と胴間声で歌いながら手首をカッターで切っていたので慌てて諦める。
 そこで、「そうだ」の意味を変質することに注力する。
「宗田さんは怒っていた。
 『私の名前は、むねだと言います!』
 内心そうだと思い込んでいたので、これには驚いた」
「このかつおは美味いのだが、まながつおであったか。内心そうだと思い込んでいた」
 などなど。ここ、イバラキのお客さんにはわかりにくいけど、ソーダガツオのことね、とミスター梅介の物真似をしてみる。いや小柳トムだったっけか。

5.「大会」は簡単だからいろいろできる。
 「御大、会談で激怒」「膨大会議録」「丸大会長が辞任」「北野大会長のもとわれわれは躍進する」「天網大会粗にして漏らさず」などなど。

6.これらの思いついた文章を適当に繋げる。繋がらない場合は無理矢理繋げる。困ったら発想が飛躍しがちな登場人物を出してごまかす。それもだめなら私の思考が飛躍しまくりなのだと正直に告白する。いよいよ困りきったらデムパ文だということにしてごまかす。

7.完成してから登録しようと雑文祭ページに達し、「題名は『三年』で始まること」という規則に気がつき、頭を抱える。
 いっそのこと「三 年俸は多すぎぬよう少なすぎぬよう」などと、三を単なる章番号と化してしまおうか、しかしそのためには一と二を書かねばならない、明日までに雑文を三本書くのは不可能だ、などと煩悶する。

8.縛りの消化方法について論議がまきおこり、違反雑文は処分されるかもしれないという話を聞いて、ますます頭を抱える。

9.いっそのことこの文章をそのまま雑文祭に参加させたらどうかと思いつき、「三年」で始まるふさわしい題名を考える。が思いつかないので無理矢理でっち上げる。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


第六回雑文祭


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