野村監督就任に対する当局の見解

 1998年秋、阪神第28代、20人目の監督として、元ヤクルトスワローズ監督の野村克也氏が就任しました。(代と人数が違うのは複数回数就任した監督がいるため)

 彼の就任には賛否両論がありました。
 賛成派の意見としては、
 「野村氏なら弱体チームを強化できる」
 「フロント主導の現状を打破するためには、野村氏のような大物監督が必要」
 また、反対派の意見は、
 「野村ID野球は阪神にはなじまない」
 「華のある選手がみんな眼鏡を掛けた2割7分のバッターに改造される」
 「とにかくサチヨが嫌い」
 など。

 ここで、トラハタ中央委員会の共通見解を纏めました。

 結論としては、「野村監督はよい監督である」。

 100点満点のよい監督などという理想は存在しません。人間である以上、長所と欠点を併せ持っております。野村監督の長所と欠点をすべて秤に乗せて計量してみた結果は、100点満点の70点であると測定しました。
 これは現役監督では、65点の星野、仰木、権藤、50点の吉田、東尾、上田、三村、45点の近藤、30点の長嶋、王、佐々木のなかでは最優秀です。
 歴代監督の中でも、80点の三原、75点の西本、水原、藤本、65点の鶴岡、広岡、森、川上らと比べても遜色のない数字です。

 まず、野村監督の長所を列挙してみましょう。
 第一に、「臨機応変の戦術がとれる」
 野球というスポーツは、さまざまな戦術が行われる可能性があります。
 たとえばノーアウトランナー1塁。ここでバントさせる場合もあるでしょうし、単独スチール、またはヒットエンドラン。何もせずバッターに自由に打たせる戦術もあります。
 このとき、もし必ずバントさせる監督がいたらどうでしょうか。
 相手チームは徹底したバントシフトをひき、バント成功の可能性は低くなってしまうでしょう。
 前監督の吉田氏は、このような場合、単独スチールはまず皆無でした。
 そのため相手投手はランナーを気にせず、バッターを抑えることだけに集中できました。
 野村監督は、「何をやってくるか分からない」と相手に思われています。実際、思い切った作戦をとることもありました。
 そのため相手チームは対策がとれず、こちらの作戦が成功する確率は高くなるのです。

 第二に、「戦力に応じた戦いができる」
 野村監督は、「弱者の戦法」を取ることのできる監督です。
 現在の阪神は、弱者です。
 しかし、吉田、中村等の監督は、あくまで正攻法で戦いました。
 強者と弱者が正攻法で戦えば、弱者が負けるのは論理的必然です。
 3連戦で3連勝を狙うのは、強者の取る正攻法です。
 弱者がその戦法をとると、3連敗の憂き目を見ることになります。
 このようなとき、野村監督なら、1試合は棄てゲームにして、残り2試合に戦力を集中することができます。 
 戦力集中こそ勝つための秘訣なのです。

 第三に、「腐っていた選手の再生が巧い」
 これは苦労人ならではの特質でしょう。
 ヤクルトでは田畑、吉井、小早川、辻、馬場などを活躍させました。
 阪神にも平塚、伊藤、清原、樋口、寺前、佐々木などの移籍組や、安達、遠山、新庄、桧山、平尾、田中、星野など活性化を待っている選手が大勢います。
 野村監督の手腕が問われるところです。

 第四に、「主義が確定している」
 すべての戦術戦法は主義から出ています。
 主義は本人の姿勢を一定に保つとともに、意見を明確化して、他人に伝えやすくするものです。
 野村監督の主義はただ一言、「頭を使え」。
 こうした明確な主義主張は、本人のみならず、チームの選手、コーチにも浸透しやすいのです。
 そのためチームは一本化しやすいのです。
 監督が何を考えているのか分からないチームがありますが、そこではコーチがめいめい勝手な相反する指示を下し、そのため選手は混乱する一方でした。
 このような惨事を防ぐためにも、野村イズムが明確なのは重要なことです。

 野村監督の欠点についてあげてみましょう。
 第一に、「党派感情が強い」
 野村氏はどこにいても必ず、「野村派」というものを作り上げました。
 松井コーチ、柏原コーチ、古田選手、江夏氏、そして一族のダン野村、サッチー、カツノリ選手などが球団運営を牛耳った感がありました。
 これは野村氏の人間的魅力もありますが、野村氏の党派心が強いことによります。
 党派で固まり、それ以外のコーチ、選手を排除する。
 これは民主的球団運営の上から許されないことです。
 これに関しては、われわれも含め、厳重に監視していく必要があります。

 第二に、「スター選手の使い方が下手」
 下手というより、嫌っている感さえあります。
 ヤクルトでは広沢、池山というスラッガーに冷や飯を食わせ、岡林、西村、川崎、伊藤、山部などの好投手を潰してしまいました。
 これに関しては、当委員会は楽観視しております。
 なぜなら、阪神にはスター選手がいないからです。

 第三に、「外国人選手の使い方が下手」
 ヤクルトの外国人は、優秀な選手が多かった。
 ハウエル、オマリー、ブロス、ホージー。
 首位打者、ホームラン王、最多勝に輝いた選手達です。
 しかし、彼らの活躍期間は短い。
 ハウエルを除き、最大3年でチームを去っています。
 これは、外国人選手を巧くおだてて使う手腕が乏しいこと、欠点ばかり目について別の選手を欲しがる、野村監督の癖が影響しているでしょう。
 阪神でも早速、リベラ以外の全外国人解雇を宣言していました。
 しかし、これについては、まずスカウトが優秀な選手を獲得してくることが必要です。
 悩むのはそれからにしましょう。

 第四に、「イヤゴトを言う」
 これは早速直してほしい悪癖です。
 オリックスとの日本シリーズでは、シリーズ前にイチローの悪口を散々言っていました。
 イチローはそれで集中心を削がれ、活躍できませんでした。
 「ささやき戦術」の監督版とでも申しましょうか。
 しかし、これは野球じゃない。
 野球はあくまで、グラウンドの上で行うもの。
 戦術で正々堂々と戦おうではありませんか。


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