トラハタ時事新報(2002年末)


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11月21日(木)

架空ヒーローインタビュー
「今日のヒーローは、プロ入り初勝利の久保田投手です!」
「だぁだぁ」
「巨人打線を七回まで完封、すばらしいピッチングでしたね!」
「ぷきーん」
「……ええと……よくやったね」
「ばぶぅ」
「ごほうびにアメあげるよ」
「うまうま」

 二回無失点でこれもプロ入り初セーブを挙げたルーキー・中村選手の談話「ボクなんかが出てくる必要はなかったんです……意味なんてないんです……出てきてすみません」
 三打数ノーヒットの高橋由選手の談話「とにかくタマが重かった。ズシーンときた。外野まで飛ばすのがやっとだった」
 原監督の談話「ボールをしゃぶりながら投げるのは明らかな反則投球だ。連盟に提訴する」

 ……ええと、久保田投手の名誉のために付言しておきますが、これはかなり誇張しています。実際のインタビューは、おそらく次のような感じだと思います。

「久保田選手、ナイスピッチングでした」
「なんですか……」
「今日は江藤選手に打たれたソロホームランの一点だけに抑えました」
「ほぉむらん?……あれ……そんなん、あったかな?」
「ほら、五回にライトスタンドに放り込まれた」
「ああ……」
「あれは失投でしたか?」
「んーと……忘れた……」
「しかし七回、清原選手をストレート勝負で三球三振に切ってとったのは圧巻でしたね」
「きよはら?……ああ、あの、怖いおっちゃん……すとれぇと?」
「ええとね、ほら、こういう、こうやって投げる、真っ直ぐの」
「あ、うん、まっすぐ……ぼくの、得意、だから。ぼく、まっすぐ、はやい、はやい。とても、はやい」
「うんうん、とても速かったね。それに、ときおり混ぜる落ちる球が効果的でしたが、フォークですか?」
「……ふぉおく?……」
「えっと。ほら、こういう風に握って、すっぽ抜くように投げる」
「ああ、ぼく……すっぽ、ぬくの、ない。すっぽ、ぬく、めんどくさい」
「ということは、こうやって握って、引っかける、スライダーかな?」
「うん。ぼく、まっすぐ、投げる。あと、ひっかけ、投げる。まっすぐ、ひっかけ、どっちも、すごい」

 ……しかし久保田投手、これほど監督の「もって生まれたものだけで野球をやっている」という言葉が似合う選手はいない。

11月26日(火)

中村ノリとナベツネの果てしなき抗争
 FA宣言し、国内では阪神、読売と交渉した近鉄の中村選手。ところが読売のナベツネオーナーが「黒髪を金髪にしたら来ていただきたい」と発言。これに怒った中村選手、わざわざ金髪をオレンジ色に染め直してしまった。
 向かうところ敵なし(じつは誰も基地外にかまわないだけ)と思っていたら、とつぜん一介の選手に逆らわれてしまった裸の王様。ペタジーニを獲得した喜びのあまりもあって、FA交渉の直後、「土下座してまで来ていただく選手ではない。金で動くペタが取れたから下品なノリはいらん。アイツはジャイアンツのカラーに合わん。喜んで阪神にくれてやる」とやらかした。
 これで怒ったのは中村選手。読売球団に「あんたのところは来て欲しいと言ったり来ていらんと言ったり、いったいどうなっているのか」と詰め寄る。板挟みになって苦慮する土井代表は「とりあえず二回目の会談で釈明します」と馬鹿オーナーの尻拭いにおおわらわ。
 結局ノリ読売の二回目の会談は土井代表が謝罪し、中村選手が読売入団拒否を伝え、中村選手も「オーナーはそういう気持ちで言ったんじゃないと聞いた。ほっとした」と納得してなんとか納めることができた。が、ところが、その後でまたこの糞ジジイ、巨弾を放つ。
「モヒカンや金髪は現場が欲しいと言うから交渉してやったんだ。アイツは前からいらん。巨人のサードにモヒカンがおってどうする? 子供が真似したらどうする? ああいう髪型には知性と教養が表れる。あんなヤツ、いなくても勝てる!」
 モヒカンと金髪を絶望的なまでに混同していますねとか、髪型に知性が表れるならあなたの知性はゼロ寸前ですかとか、テメェのとこのファンはそんなことで真似するくらいの馬鹿ぞろいなのかとか、いろいろ言いたいこともあるのだが、とりあえず中村選手は今後さらにナベツネの逆鱗に触れる発言を繰り返し、ナベツネの脳溢血死亡を一日でも早くするよう期待したい。

12月21日(土)

中村ノリ急転直下近鉄残留
 FA宣言した近鉄の中村選手、まずは巨人と喧嘩別れして本命は阪神かと言われていたが、大リーグのメッツがオファーを出して一転メッツ有利となった。もはやメッツ入団は確実とまで言われたが、メッツ側が先走って入団を発表したことに中村側が不快感を表明。メッツとの交渉を破棄して近鉄残留を表明した。中村曰く、「星野監督にもお誘いいただいたが、中村ブランドにエリートは似合わない。やはり近鉄の中村でいたい」とのこと。
 と、いう経緯を書いていて自分でもわけがわからん。なんで近鉄残留なの? なんで阪神はエリートで近鉄はダメ球団なの? メジャーが夢なら、なんでフライング報道くらいで夢をみずから捨てるの? 中村ブランドって何なの? 上等の革ジャンを下品に着こなすことなの? 「近鉄しかない」のだったら、なんでFA宣言したの?
 謎が謎を呼ぶ中村の思考回路。ううむ、新庄はその常人に理解しがたい言動で「宇宙人」と呼ばれたが、中村はそれ以上かも。なにか不可解な本能で奇妙な動きをみせる、どこか遠くの星の原住生物とコンタクトを取っているような気分だ。
 大山鳴動して近鉄残留。けっきょくは、中村選手が莫大なお金とものすごいダーティイメージを獲得しただけで終わったわけだが……けっきょくは賃金吊り上げのお芝居だったのかな。だとすれば人間並みの思考回路を認めてもいいのだが。

久慈選手はひっそりと阪神復帰
 中村ノリ騒動の影に隠れるようにひっそりと、元中日の久慈選手が阪神に入団。阪神復帰は六年ぶり。その守備とバントの技術さえ錆びついてなければ、秀太や藤本とショートのレギュラーを争う力は充分にある。


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