トラハタ時事新報(2001年1月)


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1月1日(月)


新春初夢中継
 阪神ナインはここ、ウィーンで2002年の新年を迎えた。野村監督の発案で、総勢七十名、オペラ座から昇る初日を拝み、V2への決意を新たにした。
 十二月二十日、全員契約更改を終えて出発したV旅行。地元新聞も、「日本のプロ野球球団でヨーロッパに出せる球団はハンシンだけだ。紳士球団と言いながら半裸の女性をハントしたり、スナックの女性をレイプしたり、女性アナウンサーと寝ることしか考えていない某球団とは大違い」と、そのリアル紳士ぶりを称えていた。
 初日の出のあとは各自自由行動。ホテル・ブリストルのレストランでくつろぐ藪に、今年への不安は微塵もない。勝ち負けが逆ならエースと嘲られた昨年までに反撥するかのように、十五勝三敗の最高勝率で沢村賞を獲得。「去年は去年。今年はマークがきつくなるが負けない。去年覚えたドライビングシュートは、まだ誰にも打たれてないしね」と不敵な笑みを浮かべる。隣では福原が笑う。二十二勝七敗と最多勝に輝いた若きエースは、「一昨年までは起用法に戸惑ったが、去年は中四日で投げられたので楽だったよ。今年も先発で十五勝以上」と名物のウィンナーシュニッツェルにかぶりつく。
 十三勝で新人王に輝いた藤田、三割四分五厘で首位打者を獲得した坪井らと、ライン川のほとりにピクニックに出かけた川尻。なんと意外にも、連続二桁勝利ははじめてだけに、「隔年投手と呼ばれなくなることがいちばん嬉しいよ」と楽しそう。未更改の年俸闘争についても、「去年は我ながらムチャな要求をしたけど、今年は正当に要求するよ。二億はいきたいね」とニヤリ。
 プラーター公園の大観覧車に乗ってご機嫌なのはクルーズ、ペレス、カーライル、ハンセルの外国人勢。「ボルジア家の圧制はルネサンスの芸術を産みだしたが、巨人の金権政治はなにを作った? ……徳光さ」と、「第三の男」の台詞をもじってジョークを飛ばすクルーズは、同僚ペレスとの本塁打王争いについて、「最後の最後までもつれたね。オレが四十四本で勝ったのはラッキーだった。でもペレスとワンツーフィニッシュできて、本当にハッピー。でも、マツイのファンには怒られるだろうな」と語る。ともに二桁勝利で優勝に貢献したハンセルとカーライルもニコニコ。「ハンシンで外国人選手がぜんぶ残留したのは、十四年ぶりなんだって?」と記者に逆取材する場面も。
 伊藤、遠山、葛西の救援投手勢は揃ってオペラ座でウィーンフィルオーケストラを堪能。「ヨハン・シュトラウスが好きなんだ。やっぱり本場の迫力だね」と語る遠山は、二十打数一安打0打点と抑えた巨人の松井について、「一昨年はちょっと打たれたからね。配球を変えたんだ。なにしろぼくは、松井を抑えてナンボの投手だからね」と笑う。
 野村監督は夫人と宮殿へ。「これほどのものを創ったハプスブルグ家も、ついには滅びた。どんな長期間勢威をふるうものでも、必ず滅びはある。権力を持ちつづけることよりも、その権力で何をするか、それが重要なんや。トップには責任がある。球界のリーダーとして、見本にならにゃいかん。阪神にはその責任が生じた」と、球界の明日について熱く語る。「巨人もナベツネさんが死んで、なんだかごたごたしてきたようだね。長嶋監督も辞めちゃったし」と最下位に転落した他球団を気遣いながらも、「強いだけで他球団の見本になるようなものを作らなかったこと、将来の野球についてビジョンがなかったこと、これが巨人の失敗」と厳しい。
 「巨人は他山の石。ああしちゃアカンという、反面教師や。阪神に驕りはない」と言い切る智将、野村監督。阪神は今年も、やってくれそうだ。

 ……え、去年も同じような話を読んだ? ……いやだなあ、気のせいですよ。


1月6日(土)


野村監督・今日のイヤミ
(今期の展望について)「今年の阪神は秀吉の時代。大阪の陣でいいんじゃない?」(それじゃ、負けちゃうじゃないですか……)
(さらに)「今年の阪神は新庄も大豊も抜けて、何かを暗示しているように思える。まさに新しい船出」(沈む船から鼠が逃げ出すという暗示?)
(新外人クルーズに)「素人が撮影したビデオだけど、見ることは見たよ」(ビデオじゃ分からないって、あんなに言ってたじゃないですか……)
(新外人ペレスに)「ハッスルプレイヤーなのはいいが、その分怪我も多い。でも病院で検査してもらって診断書を取って来てるから、大丈夫でしょう」(怪我した選手はダメだって、あんなに言ってたじゃないですか……)
(オリックス仰木、近鉄梨田監督を交えた関西三球団互礼会で)「オリックスとトレードしちゃいかんわ。騙される。ヤクルト時代も山内と鈴木平、阪神では松永、山沖、そして星野…… オリックスは詐欺師やで」(八つ当たりのような気も。ほら、平塚とか古溝とか本西なんてのもいたでしょ)

ローズの処遇はどうなる?
 横浜とローズの話し合いは平行線のまま。横浜から各球団へトレードの話を持ちかけたが、受ける球団はなく、ついに9日には自由契約にして各球団の奪い合いに任せるか、保留選手として手当金を払うか、どちらかの選択を強いられることになった。
 そのため各球団も準備作業に。保有選手が七十人枠いっぱいの中日は、ついに元エースの今中を自由契約にする方針。哀れ今中、ついにローズの当て馬か。


1月9日(火)


伊達、フォーム改造で150キロ!(日刊スポーツ)
 ドラフト2位の伊達が鳥取市内のジムで自主トレを開始。同ジム代表の「初動負荷理論」のもと、筋力アップ、フォーム改造に取り組んでいる。「アマ時代の最高は149キロだったが、これなら150キロ超すし、変化球もキレる」と豪語する伊達投手。
 しかしながら、1)阪神では入団後フォーム改造で急速がダウンしたやつは山ほどいるが逆は皆無、2)球団の投手コーチでなくジム代表の理論を聞く(気持ちはわかる)、というのがうさんくさ過ぎる、3)そもそもこの時期にフォーム改造しているようでは開幕に間に合いっこない、などの理由から、素直に喜ぶのは時期尚早と思われる。

大豊が古巣批判(日刊スポーツ)
 中日の室内練習場で自主トレを開始した大豊は、古巣の阪神について、
「春先はよくても、みんなインフルエンザのようにバタバタ倒れる。初めは小さい穴が、段々大きくなり、そのうち負けグセとなる。野球にミスはつきものだが、みんなが『明日は明日の風が吹く』では、ダメになるのが当然」
 と語った。しかしこれは球団批判ではなく、
「オープン戦ではホームランが出るが、公式戦ではまともなストライクを投げてこないので、くそボールを空振りしてしまう。初めはボール一個外れたのを振る程度だが、そのうちワンバウンドを空振りするようになる。やがて『大豊さんのところにチャンスを回しても無駄だ』とみんな諦めてしまい、負けが込む。空振りを恐れるのもいけないが、中心打者が『そのうち真ん中に投げるだろう』と空振りばかりでは、そりゃ最下位も当然」
 という、自己批判ではないかとも推測される。

横浜、ローズを自由契約
 横浜球団は9日、ローズを自由契約にしたと発表。現在読売、中日、阪神の三球団が興味を示していると報道される。


1月11日(木)


ドラフト1位候補は慶大の喜多外野手か三菱重工長崎の杉内投手(日刊スポーツ)<サンスポでは日生の谷口投手になっていたぞ
 で、また今年もダメでした、っていうんだろ。わかってるよ。

スカウト会議で三大改革を発表(日刊スポーツ)
 1.これまで遠慮がちな部分もあったが、一流有望選手にブチ当たって行く。
 2.京阪神の地元有望選手を獲得する。
 3.首脳陣と積極的にコミュニケーションを取る。
 だそうですが。……へえ、今までやってなかったんですか。「山田は地元出身だし、とにかく当たって砕けろという気持ちで」と、さんざん聞かされたような気がするのですが。あれは夢だったのかな。


1月16日(火)


川尻、メジャーも視野(日刊スポーツ)
 テメエ側の弁護士のトンデモ要求のため契約更改が遅れまくっている川尻投手は、またも弁護士の入れ知恵で「メジャー入りも視野に入れている」と発言。もっともFAは三年後になるため、イチローと同じく、球団の承諾を得てのポスティングシステム(入札)を考えているとか。うーむ、確かに川尻はメジャーに相性がよいが、それでも一億五千万出す球団はないと思うぞ。元中日の佐野といっしょにテストから始めるならともかく。

阪神若手に外食禁止令(デイリースポーツ)
 最近の選手はちょっと目を離すとコンビニ弁当やカップヌードルで食事を済ますので、ちっとも体格がよくならない。いつまでも秀太や球児のような蚊トンボばっかり。これに業を煮やした梅本寮長は、外食禁止令を発令。「寮の食事は栄養士もついて、おかずも六品から七品出る。これまでは休日は外食OKだったが、休みの日もちゃんと食べて、体を作ってほしい」とのこと。妙なファンとの接触を絶つ意味でも、「ごっつぁんです」接待外食も禁止。
 しかし、今更ながら情けないね。金田投手はキャンプ中、合宿所の飯は食わず、いつも自室で自炊していたが、それは、「合宿のメシは経済的制約があるので貧弱。野球選手たるもの、給料の三分の一を食費につぎ込むくらいでなければ」と、ニンニクやら魚やら肉やらがたっぷりの特製チャンコを食っていたからなのだよ。嗚呼。


1月19日(金)


器だけは一流にしました(夕刊フジ)
 今年から遠征先のホテルをグレードアップ。横浜のホテルをベイシェラトン&タワーズに変更するなど、各地の超一流ホテルへ宿泊することになる。
 さらに本拠地の設備も改善。ロッカールーム、トレーニングルームの面積を二倍にし、マシンも十台増やした。
 あとは使ってもらうだけ。それが問題なんだよなあ。近鉄から移籍の平下外野手などは、「近鉄では経費削減で交通費もケチってるのに、この恵まれ方は只事じゃない。しかしどうして、マシンがこんなに空いてるんだ」と呆れるばかり。
 逆に阪神から近鉄に移籍した湯舟投手などは、「阪神じゃベンチに清涼飲料水が置いていて飲み放題なのに、近鉄じゃいちいち小銭を握って自販機に買いに行かなきゃならない」と今更ながら世間の風を感じている。幸あれ。

人を呪わば穴二つ(サンケイスポーツ)
 大豊が「阪神選手はインフルエンザみたいなもの」と古巣を馬鹿にしてまもなく、中日では本物のウィルスが蔓延した。コトダマって怖いね。
 まず正津投手がおたふく風邪でリタイア。なにしろこの年になってのおたふくは、睾丸を蝕み、子種を失う可能性があるからタダゴトではない。未感染の福留内野手などは、「一緒に鍋を食ったんだけど、まずいかなあ」とすっかり戦々恐々。しかしドメよ。お前、エイズと間違えてないか?
 井上外野手も、おたふく未経験とわかって「アイツの部屋にはよく出入りしてたから、シャレにならん」とびくびく。さらに井端までが「一緒に組体操したけど、大丈夫かなあ。いや、四歳のときやってはいるんだけど」と。星野監督、この連中に、正しい感染症の知識を与えてやってもらえませんかね? 


1月29日(月)


キャンプは長髪、茶髪、ヒゲ、ゴルフ禁止(日刊スポーツ)
 長髪、茶髪、ヒゲ禁止は野村監督就任時からだが、今年からゴルフも禁止となった。禁止令なんか出すより、休日に外に出る気にもなれないくらい、平日にシゴいてやればいいんですけどね。
 この日来日した新外国人三人のうち、ヒゲを生やしていたクルーズはヒゲ禁止令を聞いて「聞いてないよ―!」とダチョウ倶楽部ばりのギャグをかましたあと、「監督の命令なら剃る」とあっさり降参。
 でも、ただでさえ迫力のない阪神打線、ヒゲくらい生やしてせめて投手を威圧したほうがいいと思うんですけどねえ。いっそ「ヒゲ令」を出してヒゲを義務化するとか。チャップリンヒゲ、コールマンヒゲ、カイゼルヒゲ、トロツキーヒゲ、変なオジさんヒゲ、泥棒コントヒゲ、なんて並べたら、敵も笑ってエラーのひとつもしてくれるってもんよ。

脳膜監督「王道宣言」(デイリースポーツ)
 横浜新監督の森氏の「とにかく勝ちに行く。戦術の限りを尽くして勝つ」という覇道宣言を受けて、読売の長島監督が乏しい脳みそを絞って反論。題して、「王道宣言」。
「勝つだけじゃいけない。美しく勝ちたい。勝つために権力や強制はしない。あくまで徳や思いやりで治める。戦術でなく、補強やチーム編成などの戦略が重要」
 つまりこう言いたいのですね。カネを使って圧倒的な戦力を集め、他球団の補強を妨害し、メディアを使って愚昧な大衆を洗脳し、要するに野球以外の部分で勝つ、と。それは王道宣言ではなく、横道宣言ではないのですか?


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