クレイジー大筋肉

 いつの間にかレイチェルに衣装が贈れなくなってしまった。それが命の恩人にする仕打ちか?

 船で西大陸に入ったころから、町中をあやしげな人物が徘徊するようになりました。
 裸体でムキムキの筋肉を誇示する人々が、とってつけたような笑顔で妙になれなれしく話しかけてくるのです。
「そこのあなた! ともに身体を鍛えませんか? 筋肉聖教バンザーイ!」
 うっかりこれに「はい」とでも答えようものなら、屈強な男どもに取り囲まれ、強制的にマッチョポーズをとらされるのです。なんなんだこいつら。

 どうやら、南の森にある「マッスルカテドラル」を本拠とし、「セント・マッスル」なる人物を教祖とした「筋肉聖教」という新興宗教が西大陸で猛威をふるっているようなのです。そういえば聖マッスルって漫画があったな。
「この世は荒野だ。荒野を生き抜くためには、人は等しく身体を鍛えるのがよろしい。健全に鍛えられた身体には健全な精神が宿る。よって、世界人類の皆が等しく身体を鍛えれば、この世は荒野ではなく平和で明るい世界になる」
 という教祖様の教えによって、日夜肉体を鍛えているそうなのですが、拉致監禁や洗脳などの噂がたえず、教祖様は賞金首になってしまっているとか。ま、仕置料みたいなもんですかね。

 賞金首と聞けば行かないわけにはいきません。さっそくマッスルカテドラルへ参上です。
 ムキムキの巨大黄金大胸筋を飾ったすごく悪趣味な建物ですが、気にしてはいけません。中にはいるともっと悪趣味です。つーか成金趣味。キンキラのゴシック調建築の随所に、ムキムキ男女の写真や全裸筋肉像が飾られています。メタルマックスだったら、このひとつひとつに面白いコメントがついていたんだろうなあ。
 入り口近くで女性がなんだかもめていました。なんでも、ちょっと見学に行ってくると言ったきり夫が帰ってこないそうです。妻に無断で夫は出家信者となり、このカテドラルで修行してるそうです。会わせてくれと懇願する妻をムキムキマッチョが引きずり出していきました。やれやれ。
 カテドラル見学を申し込んだら、村の男女やソルジャーが一緒でした。トレーニングルームや礼拝室などをちょっと見せてくれました。教義についてもちょっと教えてくれました。
 それだけなのに、
 男「よさそうな教えだな。……僕は入信します!」
 女「わたしも入信します!」
 ソルジャー「人と人との繋がりか……よし、俺も入信するぞ!」
 あんたら、洗脳うんぬん以前に騙されやすすぎです。
 ……いや、としぞうたちも入信したんですけどね。そうしないと入れてくれないし。

 部屋では使徒マルコーとやらが同室でした。この人、さっき会わせてくれと叫んでいた女性の夫のようです。が、まったく記憶を失ってしまい。「結婚か……いいな。私はそういう出逢いがなかったので、憧れる」などとたわけたことを呟いています。やっぱり洗脳か?
 カテドラル内では武器防具いっさい禁止ということで、すべてはぎとられてしまいました。そういえばこの館、セント・マッスルを除き、男はハイレグパンツ、女はハイレグビキニを身につけているのみです。どうせならとしぞうはともかく、ミカとシャーリィは身ぐるみはがれたグラフィックにしてほしかったなあ。
 やがて礼拝の時間となり、聖マッスル様がありがたい教えをくださりました。適当にわかりますとうなづいていたら、なぜか気にいられて幹部試験を受ける羽目になりました。なんか変な機械の前に連れていかれました。さっき入信した男女も一足先に機械に入ったと思ったら、たちまちムキムキマッチョに変身です。妖しい。妖しすぎます。
 それでも主人公は最後の最後で助かるもんさと、適当に「はい」「はい」と答えていたら、機械の中に放り込まれました。
「この後、としぞうたちは筋肉聖教の敬虔な使徒として心と身体を鍛え続ける日々を送ったという……」
 というナレーションとともにハイレグパンツでムキムキマッチョな三人の衝撃映像が流れ、そしてエンディング。ああ、久しぶりにトラップにひっかかったぞ。それにしても童顔丸顔眼鏡のミカのムキムキマッチョ姿は、すごく違和感がある。

 気を取り直してマッスルカテドラル潜入からやり直しです。今度は最後の最後で逃げようとしたら、筋肉魔人どもが襲ってきました。こいつら、ポージングでこっちのプロテクターを破壊するのはまだいいとして、三人で騎馬戦みたいに襲ってくるやつとか、五人が前の人の足をつかんで輪になってゴロゴロ転がってくるやつとか、無意味な攻撃が多すぎます。
 そして最上階で聖マッスル、もとい、セント・マッスルとの決戦。こいつもダメージ受けるとポージングする妙なやつです。なんとか倒すと、
「志なかばで倒れる、か……。神よ、なんで私を見捨て給う……」
 と呟きながら死んでいきました。ひょっとしてこいつ、いい奴だったんじゃなかろうか。

 教祖を倒して賞金をもらっても、街をうろつく信者たちは相変わらず「セント・マッスル様バンザーイ!」などと叫んでいますし、あの旦那も妻のこと思い出して家に帰ったりはしていないようです。どうやら筋肉聖教はオウム真理教のような教祖一代限りではなく、キリスト教のように根づいていく宗教のようです。やっぱあの教祖って、いい奴だったんじゃなかろうか。

 きょうの称号。としぞう:買い物上手→戦車マニア→エリートハンター。ミカ:鉄の魔術師→神業修理屋。シャーリィ:不死身の女→最終兵器。ベルナール:謎の犬。


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