12.脳天気な擁護

「今回はパインさんに来ていただきました」
「……迷惑だな」
「ま、ま、そうおっしゃらずに。ちょっとこのところ、ゲームが進んでいないものですから」
「進めればいいだろ」
「だって、アクティブリンクのところばかり行っていたせいで、もう最終章だというのに、行きそびれたところがごろごろ。ルカなんてまだ足を踏み入れたことがないんですよ」
「……お前の物語、ぼろぼろだな」
「そんなわけで今回は息抜きということで。さて、このFFX−2、一部では悪評が高いわけですが」
「そうか?」
「ええ、まず多いのはギャルゲーだという批判」
「主人公が女性だからな、当然だろ」
「まあ着替えシーンがキューティハニーだし、ユウナがいきなりパンツを見せまくりますからね」
「ユウナはアレだから仕方がない」
「しかしパインさんはシーフや歌姫の衣装が似合いませんね。筋肉質なずん胴で」
「……大きなお世話だ」

「それから、前作の続編のくせに脳天気すぎるという批判もあります」
「ユウナがアレだからな」
「でもこれは仕方ないと思います。そもそもFFクラバカの法則というのがありまして」
「あったか、そんなの?」
「ファイナルファンタジーシリーズの主人公は、陰気な暗い奴と馬鹿が交互に登場するという鉄則です。FF7のクラウドは、ディスク2まで自分が誰だかわからなかったほどのバカ」
「あれはしょうがないと思うぞ」
「8のスコールは、無口で陰気で非協力的で、いつもベッドで寝ているような青年です。それが9のジタンになると、いきなり王女をナンパするようなバカヤロウ」
「9は天野イラストとゲームの絵とのギャップもひどかったな」
「ええ、天野のイラストなんて、人物が全員、花輪和一のマンガに登場するキチガイのような顔ですからね。あれをそのままゲーム化したら、子供が泣き出しますよ」
「でも10は、あのブリッツバカが主人公だぞ」
「なに言ってるんですか。主人公はもちろんユウナ様ですよ。死の運命を抱えた陰気なヒロイン。悲惨な未来を目前に、無理に明るくふるまうというけなげな少女」
「それがああなるんだものな……悩みがなくなったら、なんにもなくなっちゃったんだよな」
「それにしてもひとつだけ不満があります。あんな明るい話なのに、ゲーム画面だけ暗いというのはいかがなものか。前作はまあ、内容に合わせてということで納得もできますが。なにしろ画面が暗すぎるので、宝箱も道もわけがわからない」

「ゲームが簡単すぎるという批判もあるようです」
「お前は苦労しているようだがな」
「大きなお世話です。まあ私にとっては、ちょうどいい難易度だと思います。というか、前作が難しすぎた」
「そうだったか?」
「裏技を使わないと無理なチョコボレースとか雷よけとか、どう考えても勝てそうにないオリジナル養成獣とか、陰険なところに隠してあるアルベド語辞書とか」
「FFシリーズは本筋が簡単で、脇道のやらなくてもいいゲームが難しいんだ。ドラクエにとってのおまけダンジョンみたいなものだからな」
「今回はそういう難しいのはないようですね。ときどき登場する装甲獣みたいなのが他の魔物に比べとびぬけて強いくらいで」
「きっと、お前がやりそびれたところに強い奴がいるんだ」
「とほほ」

「あと、ミニゲームばっかりでつまんないという批判もあります」
「ミッションのことか?」
「たぶんそうでしょうね。ただ、これだけは言っておきたい。ゲームを進行するのに必要なミッションは、基本的に戦闘でけりがつきます。その点では中ボスとの戦闘みたいなものです。それ以外の、チョコボレースやスフィアブレイク、発掘やガンシューティングなどのミニゲームの数はたしかに多いですが、あれをやりたくなければやらなくてもいい」
「お前なんか、最終章まで発掘しかやってなかったくらいだからな」
「そうなんです……なにしろナギ平原にもルカにも行ってなかったもので、そんなものがあることすら知らず……ビサイドでは思わせぶりに立っている男を無視していたせいで、ガンシューティングもできず」
「お前の物語、スカだ」
「とほほ」


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