1.遅すぎた旅立ち

 そんなわけで今回はかなり出遅れてファイナルファンタジー12。秋葉原で四千円を割っていたのでつい買ってしまいました。

 さて物語はテンツーに登場したシューインとレンの結婚式で始まる。この物語ではラスラとアーシェを名乗っているらしい。なにしろファイナルファンタジーのシリーズは、画面が精緻になるのに反比例してキャラクターの引き出しが少なくなっている。もともとキャラクターデザインの天野が、まともな人間キャラは男が五種類、女が三種類くらいのバリエーションしかない。これを、美男美女を描くしか能のないゲームデザイナーが見分けのつきにくい平板な顔と化してしまい、CG担当がその平板さを増幅して、のっぺり、と表現するしかないものにしてしまっているので、まあやむを得ないところでしょう。
 しかしテンツーのごとく、二人の仲はあっけなく裂かれる。ラスラが出陣してあっさり戦死してしまうからである。アーシェ、いきなり未亡人。未亡人が主人公というゲームなんて、「同級生2」以来かな。

 さてながながとご退屈なムービーを見せられたあげく、レックスとかいう未熟兵士とバッシュ将軍が登場し、ようやく戦闘ができる。しかしチュートリアル画面みたいなもんで、まだ自由には動けない。そんなこんなのうちバッシュ将軍がなぜか国王を暗殺。どうやら無条件降伏を決意した国王を、徹底抗戦派のバッシュは許せなかったらしい。国王が昭和天皇、バッシュは阿南陸相という役どころか。つーことはこのゲーム、小松左京「地には平和を」が原作か?

 ここまで我慢して進むこと三時間、ようやくわれらがヴァン君の登場です。どうやらレックスの弟という設定らしいが、そんなことはどうでもよろしい。さっそく最初からセリフが炸裂してみせてくれます。
「ゴエン」(ごめんと言ったらしい)
「ぱんにょろ」(パンネロらしい)
「風俗になって自由に生きるんら」(空賊と言いたかったらしい)
「ここの鍵、ムナムロミオイテ」(字幕を読みそこねたので何を言っているかわからない)
 ヴァン君、チンピラのスリという設定でらしく、それらしい小物感あふれる演技を見せてくれます。カツゼツは悪いが。昔ならなべおさみか本田博太郎あたりの役どころであろうか。
 町の中をうろうろしながらも、ヴァンは絶好調。
「オレがタコ部屋を流せば」(運び屋を捜せば、と言いたかったらしい)
「東の砂漠にひつぶつ」(出没と言いたかったらしい)

 このゲーム、掲示板に貼り出された中ボスモンスターを倒すと、依頼者から賞金が出るという、いわゆる「賞金首」システムを導入しています。メタルサーガかおのれは。最初のトマトは倒せたんだが、次の犬はけっこう強い。狼も一緒に登場するので勝てません。三回全滅しました。いや、ヴァンが「ふにゃ」(ぎゃあと叫びたかったらしい)と言って死ぬのが楽しくて、わざと負けに行ったところもあるのですが。
 うろうろと東の砂漠やら西の砂漠やら遊牧民の村やらを徘徊するうちに、ぱんにょろ、いやパンネロを仲間にして、ようやく犬を撃破。ついでに砂漠で頼まれた花サボテンも撃破。
「なんにょもないって」(なんでもないって、と言いたかったらしい)
「オレだってにょだよ」(嫌だよ、と言いたかったらしい)

 ダウンタウンに戻ってパンネロが離脱したのち、ヴァンはひとりで王宮に潜入。
「幼女も死んだし、ちょっと鬱な野郎と思ってさ」(用事も済んだし、ちょっと盗んでやろうと言いたかったらしい)
 ところが宝物庫で風俗、いや空賊とはちあわせ。おまけに王宮で反乱軍と政府軍の大乱闘。いきがかりで、空賊と称する(主人公とも称していたが無視)キザヤロウと、相棒の兎女が仲間に。
 さらに反乱軍のリーダーらしい娘とも地下水路ではちあわせ。ここで伝説の名シーンです。
「オイヨイヨ! アヤク!」(飛び降りろ! 早く! と言いたかったらしい)
 本当にそうとしか聞き取れないところが凄い。
 「トリオリオいいだろ」(一人よりは、と言いたかったらしい)ということで、なぜか偽名を使うこの反乱軍のリーダー、未亡人娘も仲間にして(未亡人はゲストだと言い張っている)、地下水路を脱出にかかるのですが、最後にあいにくとつかまってしまい、全員逮捕。涙にくれるパンネロにヴァンは「悪い、オドリは焜炉な」(オゴリは今度な、と言いたかったらしい)と言い捨て、地下牢にぶちこまれます。


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